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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
新章
102/141

迷宮への道

 無事に朝を迎えたことに安堵する“豪腕の獅子王”一行は、未完成の地図と現在位置を照らし合わせた。が、目印になるようなものが見当たらず肩を落とした。

 最初の野営地は広場らしき場所、そこへ戻れば少なくとも元来た道は分かる。しかし、廃墟群で時間を消費しすぎれば、入口が見つかったにしても攻略に支障がでる恐れがあった。

「進む以外にはないか。覚悟を決めるぞ!」

 お互いに頷き合い迷宮の入口を探すことにした一行。

「この路地から真っ直ぐに進めば……何かがある」

 ヒアの《魔力感知》が、彼等以外の存在--魔力を放つ“何か”を捉える。他にも幾つか捉えられるが、最も強いのがそれだった。

「……確かに何かあるようだ」

 フラウの《気配探知》も、ヒアと同じ“何か”を捉えている。地図をしまい“何か”がある場所を目指すが、ファハ・フローロの方へ引き返すことになる……焼き払ったとはいえ油断は禁物。警戒しつつ路地を抜けカターク達は唖然となった。

 彼等を摂り込もうと極彩色の花が濃密な芳香を放ち、大量の蜜を滴らせていた妖樹は影も形もない。夢であったかのように消えており、ミイラ化したレヴェオ・ジュールが倒れているだけだった……。

                          ◆

 大きめの通りを横切り真っ直ぐ進んでいくカターク達。臨戦態勢を取りつつ出た場所は円形の大きな、中央に日時計がある広場だった。

 慌てて地図を取り出し照らし合わせると東側の広場らしかった。

「消えた!魔力が全く感じられない!?」

「--上だ!!」

 ヒアが驚きの声を上げ、フラウが叫ぶ。ゴオォゥ!突風に一行が後じさるのとほぼ同時に、広場の中央に蹲るように佇む存在(モノ)が現れた。

『我がテリトリーにようこそ、侵入者よ』

 音ではない“声”が脳裏に響きゆっくりと立ち上がったのは、彼等が殺害し埋葬した筈の占札師アヴ・グリスタだった。

『吾はシャリ・アハ--壊恨の魔人、アトラールの主。資格なき者よ、立ち去るならば--』

「《葬斬刃(レギヴール)》!」

 トラウルの剣戟によりシャリ・アハの“声”が途切れた。

 それを合図としたようにフラウとヒアが攻撃魔法を放ち、リードが防御魔法でパーティーを守る。カタークは素養をハードノッカーに纏わせ一撃必殺(カウンター)を狙った。

『この程度で吾に勝とうとはつまらぬな--玩具らしくもないのは、生きるに値せぬ』

 “声”は彼等の背後から聞こえた。

 リードは咳き込んで大量の血を吐き跪く、防御魔法が破られその反動が彼を襲ったのだ。

「《火雷球》!!」

「砕け--《爆壊拳(フェレス・エグロゥ)》!!!」

 トラウルはリードにポーションを、フラウが新たな防御魔法を張りヒアが攻撃魔法を放つ。カタークの瞬速の拳は魔人を捕らえる--。

「--ッ!」

 地面に伏したのは“豪腕の獅子王”、嘲笑を湛えて彼等を睥睨する魔人--アヴ・グリスタの足が、カタークの背中を踏みつけ、一行は凄まじい重力に見舞われた。

『退屈凌ぎにもならぬ……退場願おう』

 掲げられた右手に渦巻くように揺らめく紅炎球が現れその輝きが強くなる--が、フイっと消えた。

『気の毒だが、魔王直々の招待--吾の手に掛からなかったことを後悔するがいい』

 その科白と共に重力が消失し“豪腕の獅子王”は、アヴ・グリスタの仮面を捨てたシャリ・アハの前から消える。フスーフィリ・カルクルの管理者、魔王ファウダ・ウルティオ自らが彼等を招いたのだった・・・。

 


 



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