ヘルパークにようこそ
行き当たりばったり、不定期更新。 とりあえずよろしく願います。
――何故だろう?
私には、彼等を慰めることが出来ない。
慰める術がない……伸ばせる腕もなければ、声を掛けることさえ出来ない。私には声がない!
なのに……誰もが救いを求め、縋り付き懇願する。
何故だろう?
何故、なのか……聞いてみようか?
訪なう者に、彼等に――。
†††††
「た、助け――!!」
魂ぎる悲鳴を無視して、従者は走り続けた。
何度も転び泥だらけになっても、走り続けなければならなかった。
そうしなければ追いかけてくる、人ならざる存在から逃げられない。闇色の影のようなそれは、付かず離れずの距離を取り鼠をいたぶる猫のようだった。
と……何かに足を取られ転倒した。
ケラケラと耳障りな笑い声と共に伸び上がるのは、彼自身の影であり、彼の主人達が餌食になったのと同じ闇色に染まった存在だった。
悪意に満ちて覆い被さってくるそれは、死に物狂いで腕を振り回していると驚いたかのように、動きを止めた。
その隙を突いて石畳の大通りを駆け抜け、正面ゲート――視界に入った出口に向かう。ゲートはゆっくりと確実に閉まっていき、無我夢中で飛びついた。
ガシャーン! 背後で鈍い音が空気を振るわせる、と同時に従者は湿った冷たい土の感触に助かったのだと安堵し、限界を超えていた意識は、ぷっつりと途切れた・・・。