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去り者の日々  作者: Shkmn
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04-ここ、ぼくんち

「石造り!」

「堅牢!」

「いやこれちょっとした要塞じゃないか!?」

「喜んでくれてなによりヨ」


 子供達は普通にはしゃいでいるが、生憎とそれなりに一般人の俺はそうもいかない。

 確かに、これは家だ。だが、細部細部の作りが明らかに民家仕様では無いし、そもそも豪邸みたいなサイズと部屋の大きさがかみ合ってない。厚みのある石壁のせいだ。

 野砲は厳しいだろうが、密集市街で使うような軽砲程度ならやすやすと弾くだろう。何だこれは、旧世代の野城でも移築したのか。だが、パッと見は外装内装ともに民家。建てた奴は何のつもりだったんだろうか。


「この二人、狙われでもしてるのか?」

「――そうじゃない。我々ラウンズ全員が、だよ」


 頼むからいきなり男口調で喋らないでほしい。武器秘匿よりよほどびっくりする。あと、さっきから真面目な視線をこちらにも向けてるのは何故に。


「待った。俺はラウンズじゃない」


 俺がそう言うと、ラモラックが苦笑いを浮かべた。いや、俺は胸にアロンダイト剣章を提げてないでしょ? なんで「何言ってんだよこのバカ」みたいな優しいおカオをしてるので?


「冗談。選抜途中で辞退した前代未聞のラウンズ候補。アナタの為だけにカレドヴルフが作られた。アナタは、我らラウンズが王を除いて唯一対等に扱い、王に次ぐ敬意を向ける相手よ?」


 まただ。またこれだ。

 俺は謙譲の美徳で選抜を降りたわけではないし、ラウンズ達のような高潔さは持ち合わせていない。単純な武芸も、正直勝てるとは思えない。ソレを選抜段階で感じて抜けた。抜けた時点で残っていた全員が今もラウンズをやっているあたり、間違っていたとも思わない。だというのに、コレだ。過大評価が過ぎる。


「俺には慈悲が足りないんだ。尊敬するならそこらの坊主にしなよ」

「まぁ、慈悲の美徳があると困る人種よネ」

「わかってるなら、尊敬しないでいいじゃないか」

「でも、子ども二人が懐いてる。それも、極めつきに聡い子供が」


 そこを突かれると、痛い。俺の同族は、子供どころか動物もほとんど懐かないのがザラに居る。


「はっはっは。そんな事より、このあたりの商店街を案内してくれ。カイウス、フローレンス。留守番頼む。家を探検するのは良いが、勢い余って不審者を潰さないようにな」

「格闘技を習いたてのバカやルーカンじゃないんだから、そんなことしないよ」

「そうよね、ルーカンじゃないんだから」

「くぅ……っ。ラモラック、早く行こう。俺のプライドが耐えられるうちに……っ!」

「そこ、プライドをかけるところじゃないと思うワヨ?」


 列車強盗相手の殺人金的は、当分の間ネタにされそうだ。


 ――・――


「それで、アタシと二人っきりになったってことは――」


 玄関をくぐるなり、ラモラックの顔つきが変わる。口調こそ女言葉だが、完全にラウンズの顔をしている。化粧さえなければ、渋みのある凛々しい顔立ちが中々に羨ましい。化粧さえなければ。


「ああ。ラウンズが――」

「ついに愛の告白ね!? やっだ勝負下着も――」


 トチ狂ったことを言い出したので、即座に他人のフリをして歩きだした。アレに付き合っていると気が狂う。

 すぐに追い付いてきた。


「もゥ、相変わらず冷たいんだかラ。――で、何を考えてる?」

「顔の化粧さえ無けりゃ、その口調滅茶苦茶カッコイイのにな、と」

「はン。冗談はよせ。こちとら、心は乙女よ」

「録音したの、聞かせてやろうか」

「ヤッダぁん。乙女の秘密を録音するなんてっ! メッ!!」


 信じられないだろうが、コイツはいついかなる時もこのテンションで生きている。二重人格みたいなスイッチ切り替え込みで。


「俺と同期で、思い切り戦った間柄なら、知ってるだろ」

「知ってるから、止めようとしてる」


 いけない。藪蛇というか、藪毒蛇した。ラモラック超怒ってる。カマ口調どっか行ってる。


「ルーカン。アナタが自分の技術をラウンズに持ち込みたくないと言って選抜を辞したのは、伝説ヨ。だけど、今のルーカンは一般人。大人しくラウンズに守られてナさい」


 ウィンクされた。それもキメ顔で。逃げたい。道行く人に泣きついたら、ラモラックを知っている人で諦めろと言われた。もう駄目だ、この世は悪夢の向こう側に堕ちたんだ。


「ともかく、アナタの仕事は、自衛と育児。状況を改善するのはアタシ達ラウンズの仕事。それが嫌なら、カレドヴルフをアロンダイトに変えなさいナ」


 喋るついでに流し目をくれながら、ラモラックは帰って行った。商店街の場所、教わってないよ?

 あと、自衛しろとかいいながら周辺の家の幾つかに護衛を住ませてるの、俺達にバレてるからね?

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