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侵入する女・千月

●某日、三衣宅にて●



三「寒なってったのう」ガチャ

 「そろそろ今年もコタツ出さなあかんか」バタン

 「昔、うがい薬のCMにあったなあ」



千「ただいまをいう相手もいない、ってヤツでしょ?」



三「」ビクッ



千「おかえり」



三「なっ、なっ……!?」



千「おかーえり」



三「……た、ただいま。電気も点けんと何しとるんや」



千「はい、よろしい。ご飯食べるでしょー?」



三「食うけど、一個だけ質問。犯人はうちの父さんか?」



千「そ。鍵借りてきた。三ちゃん驚かそうと思ってさー」



三「ご期待に応えられたようで何よりやわ。めっちゃ驚いた」



千「ビクッてなってたもんね。ナイスリアクション♪」



三「ええ大人が連絡もせんとほんまにもう。

  飯の下ごしらえ、一人分しかしとらんぞ」



千「うん、美味しかった」



三「……へ?」



千「だから、美味しかったってば。あ、でもポテトサラダは

  もうちょっと塩胡椒が効いてた方が好みかな」



三「親しき仲にも礼儀ありっちゅう言葉を知っとるか?」



千「代わりに三ちゃんの晩御飯は作ってあげたから気にしなーい」



三「材料費は?」



千「あたし持ち!」



三「よっしゃ。全てを水に流そう。俺ほど心の広い紳士はそうそうおらんからな」



千「ゲンキンなんだから。並べるから座って座って」



三「へいほー」




   ○   ○   ○




三「やー、ごっそさん。美味かったわ。冬瓜なんか久々に食うたよ」



千「母さんがいっぱいもらってきたからお裾分け。

  どう?久々の家庭の味は。涙するくらい美味しかったでしょ?」



三「当たり前やけど、俺の味付けとは全然ちがうんやな。

  家庭の味、家族の味、かあ」



千「いつになったら三ちゃんは家庭を持つのかしらねえ」



三「神のみぞ知る。いや、神ですら分からんかもなあ」



千「ま、いいけどさ。母さんがすごく心配してた」



三「すまんのう。心配かけて。しかしまあ、こればっかりはな。

  とるに足らん小さい意地やけど、決めたからには通すもんや」



千「男の矜持ってヤツ?頑固なんだから。ほんとに」



三「で、今日はほんまは何しに来たんや?」



千「小説を書きに来た!」



三「おお、『夏休み』か。急がなもうすぐ冬休みやで?」



千「うう、面目ない」



三「うちの天狗もアレがナニしとるから人のこと言われへんけどな」



千「んじゃ、パソコン借りるわよー。

  あ、洗い物は自分でやってね」



三「へいほー」



千「その返事、お気に入りなの?」



三「影響を受けやすい男・三衣やからな。

  お気に入りのキャラが使っとったんよ」



千「どうせ有頂天家族でしょ。あたしは矢一郎兄さんが好きよ」



三「うむ。矢三郎の台詞。俺が好きなんは赤玉先生やな。

  あのダメ天狗っぷりがたまらん」



千「意外ね。弁天だと思ってたのに」



三「弁天様は保留。まだよお分からん部分があるからな。

  続編を読んで決めるとするわい」



千「買ったら三ちゃんが読む前に貸してね」



三「自分で買うのが正しい礼儀やと思うけどな」



千「二人揃って『三衣千月』でしょ?

  三ちゃんのものはあたしのもの」



三「逆も然り。千づっちゃんのモンは俺のモンや]



千「……まさか三ちゃん、あたしの彼氏、寝取るつもり!?」



三「阿呆抜かせ。ってか、いい加減に結婚せんの?

  父さん、心配しとったで」



千「なかなか踏ん切りが……。貯金もあんまり無いし……。

  心配かけて申し訳ない気持ちはあるのよ?」



三「ま、二の足を踏む気持ちも分からんでもないけどのう」



千「三ちゃんにあたしの複雑な乙女心が分かってたまるもんですかっ」



三「乙女心は確かによぉ分からんが……。

  千づっちゃんの気持ちやったら、手に取るように分かるよ」



千「あながち冗談じゃないのが逆に腹立たしいわね」



三「二人揃って『三衣千月』やからなあ」



千「あたしが結婚出来ないのって、三ちゃんのせいじゃないかしら」



三「なんや、責任転嫁か?珍しいこともあるもんやな」



千「あたしと三ちゃんの距離が近すぎるのが原因の一つなんじゃないかしら」



三「それはつまり、俺がええ男過ぎるっちゅうことか?」



千「冗談は置いといて、真面目な話。

  あたしと三ちゃんに血の繋がりはないじゃない」



三「真面目に言うたのになあ。せやけど、赤の他人ゆう訳でもない。

  家族やとも言える。最も近い他人、ちゅうとこやな」



千「毎度思うんだけど、どうしてこうややこしいのかしらね?」



三「さあなあ。とにかく、千づっちゃんは変に怖がっとるだけやと思うで」



千「そうかなあ……」



三「そうそう。周りを取り巻く環境なんか、いくらでも変わりよる。

  もっとドーンと構えといたらええ。相手を信じるこっちゃな」



千「どーして彼から聞きたかった台詞を三ちゃんが言うかなあ……。

  ねえ、三ちゃんから見て、ユウはどう?」



三「特撮を語れんのは減点やけど、なかなか好物件やと思うよ。

  ま、千づっちゃんが相手を信頼せん限りはなぁ……。

  どんな好物件でも意味あらへんと思うけどな」



千「やめてよねー。核心を突くのは。耳に痛いから」



三「ひっひっひ。でもまあ、こっちからもさりげなく言うとくよ。

  今日の本題もそれやろ?」



千「あ、やっぱりバレてたか。

  でも、ちゃんと小説は書いていくから安心して」



三「ん、色んな意味で頑張れ」



千「三ちゃんも書きなさい」



三「へいほー」




  



 うろな町企画に参加して半年。執筆量は驚くほどあがりました。

 生産力の向上は嬉しい限りです。やはり、人間一人ではモチベーションの維持が難しい……。


 みなさまの存在に支えられながら、三衣は今日も頑張っております。

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