荒神・千月
●某日、千月家にて●
千「三ちゃん、聞いてる?」
三「はい、聞いております」
千「そう。じゃあ顔をあげていいよ」
三「ふう。いつまで土下座させられるんかと思たわ」
千「反省の色がないじゃない!!」
三「しーたーよ。しました。十分に」
千「ココまでやっといてその態度はないと思うなー。あたし」
三「いやでもな?よく聞いてや千づっちゃん。
土下座っちゅうのはそもそも謝罪に対して使われるもんでは……」
千「屈服、服従、位の高い人物への謝辞、でしょ」
三「知ってて俺に土下座させたんか!?」
千「アタシの方が立場は上だもの」
三「いや、俺の方が身長高いんやけども……」
千「微々たる差よ」
三「しかしやな……」
千「うるさい」
三「ごめんなさい」
千「まったくもう。目を離すとすぐコレなんだから」
三「いやまぁ、確かに部屋に勝手に入ったんは悪かった」
千「そんなのいいわよ別に」
三「へ?」
千「三ちゃんに見られたところで何とも思わないしさ」
三「ほな、何を怒ってんの?」
千「ベッドの上をご覧下さい」
三「……何もないけど?」
千「そこよ」
三「どこよ」
千「何もないのが問題なのよ!
何であたしの漫画を勝手に片付けちゃうのよ!」
三「そこ!?気になったんやから仕方ないやろ!?」
千「うるさーい!お節介大魔王よ三ちゃんなんか!」
三「なんて理不尽なんや!
千づっちゃんがズボラさんなだけやないか!」
千「三ちゃんの家も散らかしてあげるわよ!」
三「ほな千づっちゃんの部屋をピッカピカにしたるわい!」
千「ありがとう!」
三「どういたしまして!」
千「……」
三「……」
千「……おかしくない?」
三「おかしいな。俺の部屋が散らかっていくだけや」
千「まぁ、三ちゃんはあたしに服従の意思をみせたし別にそれでも」
三「ちがーう!!」
土下座【名】
昔、貴人に対して地面にひざまづいてした礼。
三省堂 新明解国語辞典 第四版より。
言葉一つに色々な意味があって、時代ごとに移り変わっていくものも多いですね。原典、由来が全てだとは言いませんし、世に出て換わっていくものも多くある。
そりゃあ、言葉も生き物ですからね。
それでも、その言葉たちの持つ意味を、由来を、歴史をしっかりと掴むのが、言葉を扱う人の在り方、矜持ってやつではないでしょうか。
よく誤用の例として出される“的を射る”と“的を得る”も、由来や歴史を眺めた上で言います。
三衣は、“的を得る”賛成派です。
千月は反対派です。
これは議論せねばなりますまい。




