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花嫁修業・千月

 ●某日、スーパーマーケットにて●



三「むぅ。随分と手間がかかるなぁ」



千「いいじゃない。適当に入れていけば」



三「阿呆な。すでに数日分のメニューは決まっとる」



千「適当に買って、そこからメニュー考えちゃダメなの?」



三「1週間分のメニューをそんな風に決められるかいな」



千「予定は未定って三ちゃんよく言うじゃない。

  あ、ほらほら、キャベツ安いよ」



三「立てもしてない予定は不定って言うんや。

  お、確かに安いな。入れとこう」



千「三ちゃん、いつもメニュー決めてから買い物に来るの?」



三「せやな。ベースのメニュー決めといて、

  特価品とかがあったら、その場で予定組みなおす」



千「いいじゃない。どばっと買って気分で作れば」



三「家庭ではそれがええと思うわ。自分以外の不確定要素も多いし」



千「じゃなんでやらないの?」



三「一人やったら、そうそう計画は崩れへんからな。

  メニューの構成も楽しいもんや」



千「ちなみに今日の晩御飯は?」



三「豚肉のしょうが焼き」



千「カゴにはないわね。取ってこようか?豚肉」



三「いや、既に下ごしらえしてある。

  食材使い切ってから買い物やと効率悪いからな」



千「うーん。花嫁修業はなかなか厳しいわね。面倒が多そう」



三「慣れたら楽なもんや。小説の構想練るのに似てるよ」



千「呆れた。そんな共通点、わざわざ見つけなくても……」



三「日々是精進、心を磨くっちゅうやつやな。

  ゲキレンジャーからの引用や」



千「相変わらずねぇ。にしては買い物に時間かかってない?」



三「そうやねん。品物の位置替えしたみたいでなぁ。

  思てる場所に望みの商品があらへん」



千「それであっちこっちしてるのね」



三「うむ。店内のコース取りまで決めてきたのに」



千「無駄なことに力注ぐのね相変わらず」



三「いやいや、効率よくやろうとした結果やないか」



千「結果無駄になっちゃったけどね」



三「それはええねん。そこを気にしだしたら負けや。

  結果を求めて努力するもんやない」



千「納得いかないなぁ。それじゃ努力の甲斐がないじゃない」



三「そら大きな勘違いや。

  努力っちゅうのは普段から不断に行ってこそのもんや。

  努力は報われる?努力すれば成功する?冗談にしか聞こえんな」



千「でも、あたしは頑張ったら結果が欲しい」



三「ま、それもよぉ分かるけどな」



千「だから三ちゃんはもう少しあたしを評価するべきなのよ」



三「お、何や?なんか頑張ったことでもあるんかいな?」



千「うちに来たら分かるわ。今日の晩御飯はうちで食べていって」



三「へ?下ごしらえした俺のしょうが焼きは?」



千「明日の朝ごはんでいいじゃない」



三「あ。もしかして千づっちゃんが作るんか?今日の晩飯」



千「ご名答~。

  たまには三ちゃん連れていかないと母さんが怒るんだもん」



三「そういう事ならお邪魔しよかな。ちなみにメニューは?」



千「来てからのお楽しみ。あ、でもデザートは三ちゃんが作ってね」



三「そら面倒やから却下や。後でケーキでも買うて行こう」



千「なんだ、残念。まいっか」



三「残念ついでにもう一つ残念なお知らせがあるんやけどええか?」



千「ん?どしたの?やっぱ都合悪い?」



三「いや、財布忘れた。」



千「え?」



三「い、いやほら、品物を戻すことでより深く売場が覚えられると思えば」



千「もう、三ちゃんの間抜け」



三「面目次第もございません……」





 努力はして当然なのです。

 努力と成功は別のものです。そこに何の因果関係もありません。成功したいから努力する、という方がいるのであれば、努力の結果、成功を得られたことがある方でしょう。

 努力しても無駄だと思っている人は、無意識に努力と成功の因果関係を意識してしまっている人でしょう。


 努力とは何か。努める力、と書いて努力。努める、とは全力を出す、という事です。全力を出すことが、イコール結果には繋がらない事は容易に想像できます。三衣がいくら全力を出した所で車より速く走ることはできません。

 全力を出すことに意味があり、またその意味を考えなければ全力を出す甲斐がありません。力の出し方を間違えたのではないか、どこにもっと力を注ぐべきであったか。

 考えることを止める時が、努力をやめてしまう時です。三衣はたまにだらけます。だって、疲れますから。努力は。



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