四月馬鹿・後日談
●某日、ボウリング場にて●
三「見たか。美しいフォームからのシンメトリー・スプリット!
って最悪や!あんなもん倒せるかい!」
千「はぁ。三ちゃんはいつまでも三ちゃんよね」
三「妙に既視感のある台詞な気がするけど、まあええわ。なんや急に」
千「全部ユウから聞いたの。この指輪貰った後に」
三「おお、似合てる似合てる。
サプライズの後にはネタ晴らし、これ基本やな」
千「三ちゃんの嘘つき。
ユウと指輪買いに行ってないなんて嘘だったんじゃない」
三「何をおっしゃいますやら。よぉ思い出してみ?
昨日"は"行ってないって言うたはずや」
千「そういうの、詐欺師の常套句だと思うんだけど」
三「また人聞きの悪い。
大体、ちょっと考えたら分かると思うんやけどなぁ」
千「そうね。指輪にご丁寧にアタシの名前が入ってたから。
ねえ、いつから?」
三「何がや?」
千「いつから仕込んでたの?この指輪一つに」
三「正月過ぎくらいに思いついたんやったかなぁ」
千「はあ、呆れた。
思いっきりビンタしちゃったから謝ろうと思ってたけど、やめにする」
三「やー、俺もちょっとやりすぎたと思う。だが、私は謝らない」
千「また何かのセリフね。まぁ、嬉しかったからいいけどさ」
三「仮面ライダー剣からの引用や。
ふむ、喜んで貰えたんやったらそれでええわ。
しかし、7・10のスプリットは厳しいもんがあるのう」
千「ねぇ、いくつか聞きたいんだけど、いい?」
三「ん?ええよ」
千「ホントはいつ買いにいったの?」
三「三月の頭。銘入れには時間がかかるかと思てなあ」
千「指輪のサイズはどうやって?」
三「お母さんに聞いた。他の指のサイズも教えてくれたわ」
千「母さんもグルだったの!?」
三「こっそり部屋に俺が忍び込むよりええやろ」
千「そうだけど。それはそうだけど……。
三ちゃんが一体どこへ行こうとしてるのかが分からない」
三「実際のところ俺にもよく分かりません」
千「はぁ。じゃ、最後の質問。この指輪、三ちゃんが選んだの?」
三「阿呆なことを言う。
確かに男二人でやいやい悩んでたけど、決めたのはユウ君や。
そこまで出しゃばった真似はせんよ」
千「……ほんと嘘つきねぇ。三ちゃん」
三「俺は真実しか言わんけどなぁ」
千「はいはい。さっさとあのピン倒してきてよ。
倒せたら三ちゃんの真実とやらを不本意ながら信じてあげる」
三「ハードル高っ。ま、ええやろ。
スプリットハンター・三衣とは俺のことや」
千「初めて聞いた呼び名だけどね」
○ ○ ○
三「どや。完璧」
千「どこが!?ど真ん中直球勝負だったじゃない!
かすりもしてないわよ!?」
三「でも、倒れたやろ?」
千「……はぁ?」
三「機械のバーがきっちりと倒してくれたやないか」
千「えぇぇぇ~……」
三「俺の投げるボールで倒せとは言われてなかったからな。
倒してきてと言われて、事実、倒れた。
“スペアをとれ”と言うべきやったな」
千「……それは屁理屈じゃないの?」
三「屁理屈も理屈のうち、空元気も元気のうち。
その方が人生幸せっちゅうもんや」
千「あたしはこの遣り切れない気持ちをどうすればいいのかしらね」
三「あの整然と並んだ十本のピンにぶつけるとええ」
千「それがせめてもの解消策ね」
三「あ、でもほどほどにピンは残しといて。
ストライク取られたらスコア的に俺が負けそうやから」
千「俄然やる気が沸いたわ。エールありがとう。三ちゃん」
三「ふむ。敵に塩を贈るのは俺の特技やからな。
まぁ、負けへんよ」
千「その自信はどこからくるのか不思議だわ。
スコア、大接戦だと思うんだけど」
三「ストライクハンター・三衣にかかれば奇跡の逃げが……」
千「さっきと変わってるじゃない!!」
ボウリング、ビリヤード、ダーツ。コミュニケーションをとるための室内遊戯として定番ですね。屋外遊戯ならテニス、ゴルフといった所でしょうか?
どこから競技として、スポーツとして区分けされるのか。思うに、どれだけの熱をそこに向けるかではないでしょうか。
同じだけの情熱、想いがあれば。
そこにプロとアマの違いはあるはずがありません。
文士も同じく。三衣はいつでも、その時に出来うる全てを文に叩きつけます。
それが文としてどのような評価を受けるかは後で考えます。読んだ人が決めることですからね。




