ファンタジー嫌い・三衣
●某日・喫茶店にて●
三「ファンタジーって、書きたくないんよな」
千「なに?いきなり自分の否定から入っちゃうの?
三ちゃん、非現実しか書かないのに。」
三「いや、中世風の王道異世界ファンタジーな。
一般的にファンタジーってそれの事を指すやろ?」
千「まぎわらしいなぁ。ちゃんと言わないと伝わらないよ」
三「そっくりそのままお返しするわ。
正しい言葉を使いましょう」
千「伝わったからいいの。言葉はただのツールだって
こないだ言ってなかった?」
三「言った。確かに言うた。何度でも言おう。
言葉は言葉であり言葉でしかない。と!」
千「……で?ファンタジーがどうしたって?」
三「反応なしかい。いやなに、ファンタジーって
良くも悪くも自由やと思ってなあ」
千「ふんふん」
三「新世界の神になる!みたいな感じがせんか?あれ。
捉えとかなあかん事象が多すぎて疲れるんやわ」
千「それはあれじゃない?
三ちゃんがMr,ズボラなだけなんじゃないの?」
三「そこは認める。俺は確かにズボラさんや。
んでも、なんか書きたいことがあって物語を作るわけやろ?」
千「あたしは自分が萌え転がりたいから書く!」
三「……まぁ、それも一つか。
千づっちゃんから恋愛とったらと思うと……。
多分その眼鏡しか残らんやろ」
千「眼鏡も残らないと思いなさい?
これは眼鏡であって眼鏡でないもの。
眼鏡の形をした恋愛妄想フィルターよ!」
三「そんなに恋愛が大事かねぇ」
千「必須。これがないとあたしは死ぬ。マジで」
三「海老フライの尻尾ぐらい要らんッ」
千「三ちゃん、何てことを言うの……。
今『海老フライの尻尾愛好会』を敵に回したわよ」
三「……別に恐ろしげも何もないな。その団体。
とにかく。設定に没頭するのはいかんよ。
物語の主題が見えにくくなると思うし」
千「尻尾愛好会の主題は明確よ?」
三「頼むから会話のキャッチボールをしてくれ。
さっきから投げた球が返って来てないんやけど」
千「わざと。小難しい話はキライなの」
三「お前の血は何色や……。
完全に一人芝居やないか!」
千「おまけに三文芝居。三文文士の三文芝居。
語感だけはいいんじゃない?」
三「勝負もしてないのに負けた気分なんは何でや……」
千「あたしの勝ちね。はい、伝票」
書きたいものと書けるものの二つが世の中にはあると思います。
自分に書けるものは何か。これはもう、探すしかないのです。書きたくないものでも、実はそれがその人にとっての書けるものかも知れません。
俗にいう、合っている、というヤツですね。
「あの人は背が高いからジーンズが似合う」
「あの人は丸顔だからキャスケット帽が似合う」
「あの俳優は悲哀どころの役が似合う」
文にも、同じことが言えると三衣は思っています。
誰しもが、全てのジャンルの文章が書けるわけではないのです。
数書けば当たる精神で今日も三衣は文を書くのです。