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第三部・2:"Who am I ?"

「亮は小さい頃から頭が切れる子だった。

 特に数学やコンピューター関連の飲み込みは大人をも驚かせる才能があった。あの子はある種の天才だった。

 そんな亮がある日『僕、新しいシステム作ってみたんだけど、どうかな? ヴィッツシステムに新しい機能加えてみたんだけど……』、と言ってディスクを持ってきた。

 どんなおもちゃを持ってきたのか取り合えず、私はチェックしてみた。


 うそだろ……。


 そこにはまったく今まで考えたこともない理論からはじき出されたシステムがあった。

 ヴィッツシステムを搭載しているマイクロチップを持つものだけ、任意で情報共有できるシステムであった。ただそれだけでなく、その情報共有の際に送信される周波数はヴィッツ搭載マイクロチップにのみ連動するという優れものだった。

『これをどうやって……?』

 私は驚いて彼に聞くと、造作も無く言ってのけた。

『なんとなく。通信機の設計図見てたら思いついたの。通信機単体ではうまくいかないのが分かったし、持ち歩くの面倒だし、だからマイクロチップの機能に追加しようと思ったの。ダメだった?』

 私は彼を末恐ろしく感じた。この子こそ神が愛した神童ではないのか?

 この子なら今に社会を変えられるんじゃないか?

 私は彼に聞いた。『亮……今の世界をどう思う?神が全てを統治するこの社会を……』。

 すると、

『僕は嫌いだ。自分で考えて動けないなんて。好きな遊び、好きな色好きな女の子。全部神様が決めてしまうのは僕は嫌いだ。それじゃ翼をもがれた鳥さんみたいじゃないか……。飛べなくなった鳥さんに何の喜びがある? 自由に好きなところに飛べなくなった鳥さんはどう思う? 苦しいと思う、きっと……だから、今もみんなほんとは苦しんだよ……。だから、僕が助けてあげるんだ。神から自由の世界に開放してあげるんだ! それが僕の夢。でも、僕だけじゃ出来ない。だから、おじさんも協力してよ。』

 私は嬉しかった。こんな小さな子供がこう思ってくれることが。

 私は間違えてはいなかった。彼の言う通り人間は自由でなければならない。

 私のやっている事は正しいのだ。この子達が本当に心から笑って暮らせる。

 自由に道を作っていける世界を作らなければならない。

 改めて彼に教えられた。子供は素晴らしい。真実を言ってくれる。

 だから、彼の思いは今も私の中に……いや。組織みんなの心の中に生き続けている。

 そして君の中にも……。

 私は、君がここに来たのは偶然じゃないと思ってる。

 彼が君をここに連れてきたんだよ。彼が君に全てを託したんだよ。

 君なら全て任せられるとね。だから彼は君に全てを教えたんだろうね。

 今不思議に思っているだろう? あれ。この話昔聞いたことがある、とね。

 当たり前だよ。君は亮にいつも聞かされつづけてたからね。

 毎日毎日、君のあの時の嬉しそうな顔を皆忘れていないよ。

 同じ話なのに君は嬉しそうに聞いていたからね。

 みんなこの二人がこの世界を変えてくれると信じていたからね。」

「でも、僕はその組織の事ほとんど覚えていないんです。確かに懐かしい感じはするけど、夢だったみたいな……そんな感覚なんです。僕は一体何者なんですか? 僕は今まで神を信じて生きてきました。神の言う事を聞いて生きてきたら何一つ失敗は無かった。教えてください! 一体僕は何者なんですか?」

 すると彼は、

「君は君だよ。自由に道を作っていける人間のあるべき姿だよ。そう。君は『藤堂 怜』という個人だよ。」

「僕が『藤堂 怜』? 僕は『綾瀬 怜』ですが……。」

 すると彼はきっぱり言い切った。

「それは君の偽名さ。君は今までこの社会の情報収集を任務とする、任務に就いてた立派なロンギヌスの職員さ。」

 このおじさんは何を言ってるんだ?僕は今まで立派な普通の普通の大学生で一応一流大学に入学した、ほんとの普通の男子なのだが・・・。

 僕は心の中で彼に訴えかけていた。

 すると彼は笑いながら、

「普通だから素晴らしい、それが君の特技さ。知っている事を完全に隠し切る事が出来る、君は尋常じゃない適応能力を持っているからね。」というではないか。

「君は立派に任務を実行してきた。亮は適応能力が低すぎてね……。よく君を困らしていたそうじゃないか。私自身ひやひやしていたよ。神に情報が漏れるんじゃないかとね。だが君がいつもうまくフォローしてくれたお陰で彼もずいぶんと助かっていたみたいだが……ね。」

 彼はそういうと僕の手を握った。

「ありがとう。そしてお疲れ様。」

 なにが何やら……やばい。またフリーズしそうだ。

「おっと、もうこんな時間だ。そろそろ戻ろうか。」

 気づけば周りはもう暗くなってきている。僕達は急いで喫茶店に戻った。

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