第二部・2:"the past, the future and the present, the world"
大量の流れ星だった。信じられないくらいの流れ星だった。
すると後ろに人の気配を感じた。後ろを向こうとしても体が動かない。
でも、不思議と怖くない。むしろ温かみを感じた。
「あれ……懐かしい感じがする」ふと思った。
すると後ろから、
「亮……」
「この声……エリカ!?」
「亮……死なないで……私の分まで生きて……」
「エリカ……でも俺はお前無しでは生きてはいけない……」
「大丈夫……ずっと側にいるよ……亮の側に……」
「エリカ……でも……俺……」
「大丈夫。いつでもあなたを支えてる。いつでも側にいるから。だから生きて!そしてあなたの道を見つけて……だから……」
背中の温もりが引いていく……。
「待って!! エリカ!! 俺はまだお前に言いたい事がある!!」
「頑張って。そして生きて。」
体が動く……急いで後ろを向く……。
見えたのか見えてないのか分からない。でも確信はある。
確かに後ろに笑ってくれているエリカがいた。確かにエリカだった。
俺には神に見えた。俺の冷え切った心に再び火が灯った。
あの時のエリカは優しい目をしていた。
神ってのが分かった気がする。神って言うのは、こういうものなんだと……。
本当にその人間が苦しんでいる時に少し背中を押してくれる。
それが神なんだって……。
神の姿は人それぞれ違うと思う。
神の姿って確立されたビジョンは無いと思う。
神がこの世界を幸福にしているって言われて何年もたつけど、誰も「神」の姿を見たものはいない。
ただ、モニターから答えるだけ、機械的なやりとり……。
人間は見えないものに恐れを抱く。
神が見えないから人間は神を恐れる。
昔暗闇が怖くていつも暗闇を避けてた。
でも、兄貴に言われた。
「人間自身がもっとも恐れるものは自分の心だ。心に映る恐怖心がその人の恐怖なんだ。怖いと思うから怖いんだ、その思いが恐怖なんだだから、自分が変われば怖さは無くなる。」
それを聞いた時思ったんだ。
自分自身が変われば全てが変わる……過去も未来も現在も……そして世界も。
だから、俺は神に自分を委ねない。
たとえ、自分を幸福にすると言われても、俺は信じない。
本当の神は必要な時にしか手を貸してくれない。
でもそれが神なんだ。
『今の神は「神」であって、「神」ではない……。』」
僕は何も言えなかった。
藤堂にこんな過去があったなんて……。
こいつがこんなにも苦しんでた時期があったなんて。
でも、こいつが神を信じない理由が分かった気がする。
それが藤堂 亮と会った最後だった。
次の日、亮は転落死した。警察は自殺と断定したが僕は信じられなかった。
でもこれが、僕の運命の歯車を大きく動かすきっかけになろうとは思っても見なかった。