プロローグ
「神は死んだ」……そんな事を哲学者ニーチェが言ってたっけ……。同時期のキルケゴールは神を賛美した。
あの頃は神は人間の心の中心にいつもいた。十九世紀は神中心の世界であったといっても過言ではない。
だが、科学技術が進歩するにつれ、人間は自らが神とも取れる行動を繰り返すようになった。不可侵的領域へと足を踏み入れるようになった。
それが……「神」。
人間が作り出した最高の発明にして、絶対に触れてはならない物。
だが、人間は「神」を創造する事で、神を超えた。自らが神を越えし「神」となったのだ。そして今、人は人という殻を破り、「創造主」となった。
だが、「神」は創造主を越えてしまうと誰が想像しただろうか? 「神」は進歩してしまった。自らを創造主とし、「創造主」を越え、自身が「創造主」となったのだ。
人間は結局、太陽に近づきすぎたイカロスが海に落ちたように、人間は「創造主」から人間になってしまったのだ。
そして、人間の時代は終わった。
人間は、人間自身が作り出してきた長い歴史を、自身の作り上げてきた文明の産物によって、失わせてしまった……。
『私はあなたがたに超人を教える。人間とは乗り越えられるべきものである。あなたがたは、人間を乗り越えるために、何をしたか。およそ生あるものはこれまで、おのれを乗り越えて、より高い何者かを創ってきた。ところがあなたがたは、この大きい潮の引き潮になろうとするのか。人間を乗り越えるより、むしろ獣類に帰ろうとするのか。』
〜ニーチェ著「ツァラトゥストラはかく語りき」(第一部)より引用〜