第5章:嫉妬の檻と、不浄なる独占
その日、公爵邸の裏庭には春の陽光が降り注いでいた。エルナは、キリアンが留守の間、庭師の青年から薔薇の剪定について教わっていた。彼女に向けられた青年の、若々しく純粋な敬愛。エルナはほんの一瞬、死の影を忘れ、かつての没落令嬢でも暗殺者でもない、ただの二十三歳の娘として微笑んだ。
だが、その微笑みが、帰還したキリアンの瞳に裏切りとして焼き付いた。
キリアンは無言でエルナの腕を掴み、大理石の床に引きずるようにして最上階の寝室へと放り込んだ。鍵がかけられ、エルナは一転して檻の中に囚われた。
「旦那様、あの方はただ薔薇の話を……っ!」
「黙れ。私の許可なく、外気にその肌を晒し、あのような下賤な男に情欲を抱かせた罪を、どう贖うつもりだ」
キリアンの瞳はミッドナイトネイビーを通り越し、黒い虚無に染まっていた。彼は荒々しくエルナを押し倒すと、彼女の胸元を鷲掴みにした。
薄いドレスが引き裂かれ、豊満な乳房が露わになる。キリアンはそれを情け容赦なく揉みしだいた。陶器のような白い肉が彼の指の間から溢れ、残酷なほどに赤く変色していく。
「……っ! あ、ぁ……っ」
キリアンは尖りきった乳首を指先で執拗に転がし、時には鋭い歯を立てて噛み締めた。痛みと快楽が混濁し、エルナの意識は急速にリビドーの濁流に飲み込まれていく。
だが、今夜のキリアンの狂気はそれだけでは終わらなかった。
彼は懐から、庭師から奪い取ったという剪定用の鋸を取り出した。冷たく無機質な木の柄の質感が、エルナの剥き出しの太ももを撫でる。
「その男を思い出せ。お前を汚そうとした記憶ごと、私が塗り潰してやる」
エルナが拒絶の声を上げる間もなく、その異物が彼女の秘部へと無理やり押し込まれた。
「ん、あ、あぁぁぁ……っ!!」
柔らかな肉壁を、ざらついた木の質感が蹂躙する。キリアンの指や楔とは違う、無機質で圧倒的な侵入。エルナの膣内は、その異物を排泄しようと激しく波打つが、キリアンは容赦なくそれを奥深くまで突き入れた。内壁が引き絞られ、蜜が柄を伝って床に滴り落ちる。
エルナは、屈辱と激痛、そして信じがたいほどの背徳的な悦びに白目を剥いた。
キリアンは彼女が絶頂に震える様を冷徹に見つめ、異物を引き抜くと、今度は自らの怒張したペニスをそこへ叩き込んだ。
ドクン、と二人の肉体が激突する。
キリアンは野獣のような荒々しさで、エルナの奥の最も深い場所――子宮の入り口を壊さんばかりに突き上げた。エルナは彼の首に腕を回し、叫び声を上げながらその快楽を飲み込んだ。
その時、キリアンの脳裏に変化が訪れた。
いつもなら殺して標本にするという結末を夢見て腰を振る彼が、今この瞬間だけは、「彼女を生かしたまま、永遠に自分だけの所有物として、この熱の中に閉じ込めておきたい」と願っていた。
(死なせたくない。この熱を、この震えを、消したくない)
初めて抱いた、混じり気のない生への愛着。
キリアンはエルナの喉を締め上げるのを止め、代わりに彼女の顔を包み込み、貪るような接吻を交わした。
「エルナ、行くな……、私だけを見ろっ!」
キリアンの絶叫と共に、熱い精髄がエルナの胎内を焦がした。
死を想わず、ただ純粋にエルナという女の中に果てた瞬間。
爆発的なオーガズムののち、キリアンはエルナの上に崩れ落ちた。
彼は愕然としていた。自分を殺そうとする彼女を愛し、その結果、彼女の生そのものを愛してしまったことに。
エルナは、荒い呼吸の中でキリアンの髪を優しく撫でた。
彼の中に芽生えた子供じみた嫉妬と、それを愛着へと変えてしまった絶望。
「ああ、キリアン。あなたは、私を殺せなくなるわ。……私を愛してしまったから」
エルナの言葉は、キリアンにとってどんな毒よりも深く彼を沈めていった。
殺して完成させるという彼の美学が、いま、一人の女性への執着によって根底から崩れ去ろうとしていた。それはキリアンにとって、死よりも恐ろしい、甘美な地獄の始まりだった。




