青空海岸で出会った霊と、ひとつの別れ
夏。
海、砂浜、青い空──そんな穏やかな風景の中に、時折ふと、言いようのない気配を感じることはありませんか?
この物語は、スピリチュアルに憧れる大学一年生・広末摩耶が、夏の海辺で出会ったひとりの少女の霊との不思議な体験を描いたものです。
***プロローグ 光を求めて***
広末摩耶は、中学生の頃からスピリチュアルな世界に憧れを抱いていた。YouTubeで「天使と繋がる方法」や「潜在意識の浄化」といった動画を見漁り、いつか本物の天使と出会えると信じていた。
青空大学に入学してすぐ、彼女はオカルト研究会の存在を知る。「これは運命かもしれない」──そう思い入部した彼女を待っていたのは、想像を遥かに超えるリアルな見えない世界との遭遇だった。
夏休みの初め、田中先輩たちと訪れた廃墟──通称「娯楽施設跡地」で、摩耶は実際に悪霊に憑かれ、命の危険を感じる体験をした。その恐怖が、彼女の価値観を静かに、しかし確実に変えていった。
「怖いのは嫌。呪われたり、取り憑かれたりするのもごめん……それなら、もっと光のある方向を目指したい」
そんな想いが芽生えた摩耶は、ヒーリングやチャネリング、守護霊との対話といった、より安全で前向きなスピリチュアルの分野に関心を深めていく。
どうせ学ぶなら、楽しくて心が温かくなるような世界がいい──そう決意した広末摩耶は、オカルトの中でも「光の領域」へと歩み始めた。
***第一章 青空海岸、夏の誘い***
「摩耶も行こうよ、海!どうせ夏休みヒマなんでしょ?」
青空大学のキャンパス内、図書館前のベンチに座っていた摩耶は、友人の彩からそう誘われて顔を上げた。
「うん……まあ、そうだけど」
摩耶は少し困ったように微笑んだ。海か。確かに夏らしいイベントではあるけれど──。
彼女の心には、まだほんの少し黒い影のようなものが残っていた。先月、オカルト研究会の活動で訪れた心霊スポットでの出来事。あのとき感じた強い霊的な気配と、足元から這い上がるような恐怖が、まだ記憶の奥にこびりついている。
「ねー、摩耶ってさ、最近テンション低くない?もうちょっとスピリチュアル楽しもうよ!海って、浄化のエネルギーあるんだよ?」
そう言ってくるのは美紅だった。チャネリングやエネルギーワークの話になると、つい前のめりになるスピ系女子だ。
「そうか……じゃあ、行こうかな。海って浄化の場所だもんね」
摩耶は少しだけ笑って答えた。
スピリチュアル──それは、彼女の人生の中心にある"光"のような存在だった。幼い頃から、ヒーリングやチャネリングに惹かれ、いつか本物の天使と出会いたいと夢見ていた。
大学に入って、摩耶は青空大学オカルト研究会に入部した。そこは、神秘学や都市伝説、霊的探求に情熱を持つ変わり者たちの巣窟だった。
中でも田中祐一先輩は特別だった。プロのオカルト雑誌のライターとも親しく、霊能者の寮という凄腕の人物とも繋がっているという。彼の話を聞くだけで、異世界の扉が開くような気がした。
でも、心霊スポットでの調査以降、摩耶は少し距離を置いていた。怖かった。スピリチュアルの世界には、確かに光もあるけれど、時に深い闇もある。
「うん。行こう、海。久しぶりに思いっきりリセットしたい」
決意するように言った摩耶の顔に、ようやく夏らしい笑顔が戻った。
数日後、三人は電車とバスを乗り継ぎ、青空海岸と呼ばれる小さな海辺の町へとやって来た。駅前には観光客の姿もまばらで、どこか昔懐かしい雰囲気が漂っている。
「うわ〜!海だーっ!」
最初に叫んだのは美紅だった。浜辺を走り出し、そのままサンダルのまま波打ち際に突っ込んでいく。
「うるさっ。でも、確かに人も少ないし、空が広くていい感じ」
彩はサングラスをかけ直しながら、ビーチタオルを敷く場所を探し始める。
摩耶はと言えば、バッグから小さな石のペンダントを取り出し、そっと胸元にかけた。これは浄化の石、クリスタルクォーツ。田中先輩からもらったものだ。
(お願いだから、今日は何も起きませんように)
そんな祈りを心の中で唱えながら、摩耶は海の方へ歩き出した。
空は青く澄み渡り、波音は心地よく、風はやさしかった。
だが、あの日の出来事は、すでに始まっていた。
*** 第二章 岩場の少女***
その日の午後、海岸にはゆるやかな変化が訪れた。
波の音が少し遠くに聞こえるようになり、白く泡立つ水面が、いつのまにかずいぶん沖まで下がっていた。
「……あれ、潮、引いてない?」
彩がサングラス越しに海を眺めながら呟く。美紅が顔を上げ、驚いたように声を上げた。
「うそっ、すごい!あそこ、岩が出てきてる!」
沖に、普段は水の中に沈んでいたゴツゴツとした岩場が姿を現していた。光を浴びた海藻がぬめり、貝殻が白く光っている。まるで、海が一時的に何かを見せてくれたかのような、不思議な光景だった。
「行ってみようよ。滅多にあんな岩場、歩けないよ」
美紅はビーサンを手に持って裸足になり、足元を気にしながら砂浜を歩き出した。彩も興味津々といった様子でついていく。
摩耶はしばし迷ったが、ペンダントを軽く握って心の中で祈ると、2人の後を追った。
岩場に近づくと、地面はぬかるみ、磯の匂いが濃くなった。足元には小さなカニや魚の死骸、潮の香りに混じるような、鉄のような匂いも漂ってくる。
(この感じ……やっぱり、少し変)
摩耶の中の"感覚"が、小さくうずいた。それは、霊的な気配──とまでは言えないが、普通の場所とは違う何かを告げていた。
「ここ、ちょっと怖いね。でもワクワクする!」
美紅は岩の間を覗き込み、何かを見つけてははしゃいでいた。彩もスマホで写真を撮りながら「インスタに使えそう」などと言っている。
摩耶はふと、人の気配を感じて振り返った。
──そこに、少女がいた。
白いワンピース。肩までの黒髪。麦わら帽子のような、つばの広い帽子をかぶっている。小学校中学年くらいに見える少女は、無言で立ち尽くし、じっと岩の奥を見ていた。
(……誰?)
周囲には他にも観光客が何人かいたが、誰もその少女に注意を払っている様子はなかった。摩耶は言い知れぬ違和感を覚えながら、少女の顔をよく見ようとした。
──目が、合った。
表情はない。微笑むでも、怯えるでもなく、ただ、こちらを見ていた。
(この子……どこかで見たような……)
摩耶が歩み寄ろうとした瞬間、潮がまたじわじわと満ち始めた。
「そろそろ戻ろっか。岩場って、すぐに水かぶるって言うし」
彩の声で、我に返る。
摩耶がもう一度あの少女の方を見たときには──そこにはもう、誰の姿もなかった。
浜辺に戻ったあと、3人は木陰でかき氷を食べながら一息ついていた。
「ねえ、さっき……岩場に女の子いなかった?」
摩耶がぽつりと口にする。
「女の子?」
美紅が眉をひそめる。
「白いワンピース着てて……帽子かぶってて。ちょっと変な雰囲気の子」
彩と美紅は顔を見合わせて、同時に首を振った。
「そんな子、いた?全然気づかなかった」
「摩耶、まだちょっとスピリチュアル疲れしてるんじゃない?」
冗談まじりに笑う美紅の言葉に、摩耶も曖昧に笑って返した。
けれど、心の中では確信していた。あの少女は、確かに"そこにいた"。
波の音が、少しだけ不穏に聞こえた。
***第三章 びしょ濡れの窓辺***
夜の帳が下り、民宿の静かな夕食を終えたあと、摩耶たちは海辺での一日を振り返っていた。
「いや〜、やっぱ海って最高だわ。岩場もワクワクしたし」
「でも、私、日焼け止め塗るの忘れてた……」
浴衣姿で団欒する部屋。風鈴の音が外からかすかに聞こえ、窓からはうっすらと月明かりが差し込んでいる。どこか懐かしい、田舎の夏の夜。
摩耶は窓辺に座り、ぼんやりと空を見上げていた。
(あの子──やっぱり、気のせいじゃなかった)
波音の中で交差した無言の視線。少女の冷たいまなざしが、頭から離れなかった。まるで何かを訴えたかったのではないか。そんな予感が、心にこびりついていた。
「ねぇ、摩耶?聞いてる?」
「……あ、ごめん」
「やっぱ、疲れてるっぽいよね。先に寝な〜」
美紅に言われ、摩耶は苦笑して布団に潜り込んだ。
夜半。
窓がガタリ、と音を立てた。
遠くで雷が鳴ったような音がして、次の瞬間、バチバチと勢いよく雨が降り始める。
摩耶は眠りから浮かび上がるように目を開けた。
「……雨?」
窓の一部が少しだけ開いていて、雨が吹き込んでいた。静かに立ち上がり、足元に気をつけながら窓へと向かう。
軋む音を立ててガラスを閉め、掛け金をかけたそのとき──。
──視線を感じた。
はっとして外を見た摩耶の目に、衝撃が走る。
──そこに、いた。
白いワンピースを着た少女が、雨の中、ただひとり立っていた。
髪は顔に貼りつき、全身ずぶ濡れになっている。だが、まるで寒さも苦しさも感じていないように、彼女はじっと、民宿の二階を見上げていた。
……いや、違う。
──摩耶を、見ている。
「……っ!」
言葉にならない声が喉の奥で詰まる。
その少女は、まるで、そこにいて当然。というような空気で、摩耶の視線を静かに受け止めていた。
雷が再び鳴り、閃光が辺りを照らしたその瞬間、少女の姿がスッと、かき消えるように消えた。
誰にも気づかれず、誰にも知られず。まるで雨とともに、海に還るかのように。
翌朝。
雨は上がり、民宿の朝食には香ばしい干物と味噌汁の香りが漂っていた。
「昨日の夜、急に雷雨だったね。びっくりしたわ」
「私まったく気づかなかったよ……爆睡してた」
美紅と彩の会話を背に、摩耶は食後、おかみさんに話しかけてみた。
「あの……ちょっと変な質問かもしれないんですけど、昔、この近くの岩場で何か事故があったり……しませんでしたか?」
おかみさんは、少しだけ顔色を変えた。
「……あなたも、見たのね」
その一言に、摩耶の背筋が凍りついた。
「何人か、たまに言う人がいるの。白い服を着た女の子が、雨の夜に立っていたって」
おかみさんはゆっくりと語り始めた。
「もう十年以上も前になるけど……あの岩場でね、遊んでた小学生の女の子が、潮が急に満ちて逃げ遅れて……溺れて亡くなったの」
「……!」
「かわいそうにね。夏休みだったのよ。ご両親も旅行で来てて、ほんの数分、目を離した隙だったって」
摩耶の頭に、あの無表情の少女の姿が浮かぶ。雨に濡れても叫ぶこともなく、ただ立ち尽くしていた姿。
あれは、偶然じゃない。きっと、何かを伝えたくて、現れたんだ──。
***第四章 祈りと浄化***
「摩耶、どうしたの?ずっと黙ってるよ?」
民宿の部屋で荷物をまとめていた彩が、心配そうに声をかける。摩耶はふと我に返り、小さく首を振った。
「ううん、大丈夫。……ちょっとだけ、行きたい場所があるの」
彼女はバッグの奥から、丁寧に折った和紙を取り出した。それは大学のサークル活動の一環として、自分で写した写経だった。心を込めて一文字一文字、祈るように綴った般若心経。
そして、小さな白い野の花を、そっとタオルで包み、手に持った。
潮が少し引き始めた浜辺。
昨日のように岩場には行かず、摩耶は海を静かに見つめながら、波打ち際に立った。風が柔らかく吹き、空は雲ひとつない青だった。
「……きっと、帰りたかったんだと思う」
摩耶はつぶやくように言った。
誰にも気づかれず、誰にも助けを呼べず、ひとりで波にのまれた少女。この場所に、彼女の思いが残ってしまったのは、当たり前だったのかもしれない。
摩耶は、波に足を濡らしながら、ゆっくりとお経を唱え始めた。
「──摩訶般若波羅蜜多心経……」
心を込め、言葉を一つひとつ吐き出すように。すると、風の中で何かがふっと和らいだように感じた。
続けて、手に持っていた写経の紙と、白い花を波にそっと流した。海水にゆっくりと溶けていく文字と花。まるで、少女の魂が少しずつ浄化されていくようだった。
(どうか、光の中に行けますように)
最後に、摩耶は両手を合わせ、深く目を閉じた。
その瞬間──。
ほんのわずか、潮の向こうに、白い影が揺れたように見えた。
少女の姿。……いや、気のせいかもしれない。けれど、彼女は──もう、悲しそうな顔をしていなかった。
「遅かったね〜。どこ行ってたの?」
民宿の玄関で待っていた美紅が、タオルを振りながら迎えた。
「ちょっと、見送りに行ってたの」
「見送り?誰の?」
「ううん、ただの気持ちの問題。……少しでも、安らかにって思って」
そう答えた摩耶の顔は、どこか晴れやかだった。
帰りの電車の中、摩耶は流れゆく車窓の外を眺めながら、ふと思った。
(怖がってばかりじゃ、ダメだよね)
スピリチュアルの世界は、ただ幻想やオカルトではない。時に人の思いを癒し、つなぎ、そして、解き放つ力にもなり得るのだ。
摩耶は自分の中に、ひとつ静かな灯がともったように感じていた。
*** 第五章 光の中での対話***
その夜、摩耶はひとり民宿の裏手にある静かな磯辺に立っていた。月が雲の切れ間から顔を出し、海面を銀色に照らしている。
胸元のペンダントを握りしめる。意識を落ち着け、呼吸を整えた。
「……チャネリング、できるかな」
サークルで習った瞑想と集中の方法を思い出し、静かに目を閉じる。少女の霊と波長を合わせるように、心の中で優しく語りかけた。
──もし、まだここにいるなら。
──あなたの想い、聞かせて。
しばらくすると、周囲の空気がふっと変わった。海風が止み、波の音が遠ざかり、世界が静寂に包まれたように感じられた。
「……ひとり、だったの」
その声は、摩耶の耳ではなく、心に響いた。
目を開けると、目の前に──あの少女が立っていた。
白いワンピース。濡れた髪。けれど、その表情はどこか柔らかかった。
摩耶は静かに言葉をかけた。
「あなた……ずっと、ここにいたの?」
少女は小さくうなずいた。
「みんな、いなくなったの。お母さんも、お父さんも。……わたしだけ、取り残されたの」
その言葉に、胸が締めつけられた。
「でも、わたし、怖くなかった。……ただ、帰る場所が、わからなかっただけ」
摩耶は、そっと手を伸ばし、少女の手に重ねるような仕草をした。実際には触れられない。でも、心は通じ合っていると、そう感じた。
「もう、大丈夫。あなたは、帰っていいんだよ。だって、たくさんの想いを残してきたけど……ちゃんと、気づいたから。わたしが、あなたに出会ったから」
少女の瞳が、うっすらと潤んだ。
「……ありがとう」
その瞬間、彼女の身体が淡い光に包まれていく。
海から立ちのぼるような白い光が少女を包み、空へとゆっくりと昇っていった。
そして。
その光の中に、摩耶は一瞬──はっきりと見た。
翼を広げた存在。柔らかな金色の光をまとう、天使の姿。
表情は見えなかった。でも、その存在は確かにそこにあり、少女を静かに迎えていた。
風がそっと吹き、浜辺の砂をさらう。光はやがて、星の彼方へと消えていった。
摩耶はひとり、浜辺に立ち尽くしていた。
静寂。けれど、心には、確かな"温かさ"が残っていた。
「……見えた。ほんとに……天使って、いるんだ」
その声は、誰に向けたものでもない。
ただ、自分の信じる世界が、現実とつながった瞬間だった。
そして、摩耶の心の奥に、小さな誓いが芽生えた。
──いつか、もっと深く、スピリチュアルの世界に触れたい。
──もっと、人の心に寄り添えるような、力を身につけたい。
波音が、やさしく答えるように続いていた。
*** エピローグ 夏の終わりに***
夏休みが明け、キャンパスに再び活気が戻ってきた。
青空大学の一角、いつもの部室棟に摩耶が足を踏み入れると、どこか懐かしさが胸に広がった。棚には相変わらず魔導書風の謎の書籍や、鈴のついたお守り、石英の原石などがごちゃごちゃと並んでいる。
「お、広末。久しぶりだな」
そう声をかけてきたのは、オカルト研究会の田中祐一先輩だった。ラフな格好に、やや眠そうな目元。でもその瞳は、やはり洞察の光をたたえている。
「先輩……あの、夏に……」
摩耶は、民宿で体験した出来事を、できるだけ丁寧に言葉にして伝えた。
岩場で出会った少女の霊。雨の夜に現れた白い影。そして、祈りとともに写経と花を海に流したこと──。
先輩は、しばらく黙って話を聞いていたが、ふと小さくうなずいた。
「……そうか。霊にも、色んな型があるんだよ。記憶に縛られて彷徨うもの、想いに縋って残るもの、そして、人の念で呼び戻されてしまうものもいる」
「……型、ですか?」
「そう。だから今回の広末さんの対応は、正しかったと思う。ちゃんと"祈り"の形をとった。感謝と哀悼。スピリチュアルにおいて、それはとても意味のある行為だ」
そう言って、田中先輩は微笑んだ。
「でもな、覚えておいてほしい。……優しさだけじゃ届かない存在もいる。だから、感情に流されず、冷静な判断を持つこと。それもまた、力のひとつなんだよ」
「……はい」
摩耶は深くうなずいた。心にじんわりと、何かが染み込んでいくようだった。
そのとき、別の部員が「先輩ー!こっち来てくださいよー!」と呼びに来て、田中先輩は軽く手を振りながら部室の奥へと歩いていった。
摩耶は、一人残された静かな空間で、窓の外を見上げた。
空は高く、夏の名残がまだ少しだけ残っている。風が頬を撫でるように通り過ぎ、遠くから部員たちの笑い声が聞こえてくる。
──少しだけ、自分が変わった気がした。
スピリチュアルに憧れ、ただ夢見ていたあの頃の自分より、ほんのわずかでも"現実"と向き合えるようになった気がする。
「……よし」
摩耶は胸に手を当て、小さく呟いた。
「いつか、絶対、天使と出会うんだ」
空を見上げたその表情には、迷いのない光があった。
光を求める少女の旅は、ここから本格的に始まるのだった。
**完**
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本作は、夏の海辺で出会った少女の霊と、大学生・摩耶との小さな心の交流を描いたスピリチュアル短編です。
幽霊は怖い存在というイメージがありますが、そこに“悲しみ”や“迷い”といった感情が隠れていることも多いのかもしれません。
摩耶のように、誰かの想いに耳を傾けることで、優しさが届き、救いが生まれる──そんな希望を物語に込めました。
一瞬だけ現れた“天使”の存在は、彼女が信じる世界がほんの少しだけ、現実に重なった証。
そしてそれは、彼女の成長の兆しでもあります。
感想・レビューなどいただけますと、今後の創作の励みになります。
またいつか、摩耶の物語でお会いできる日を楽しみにしております。