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第1章:その記事、なぜ伝わらないのか?

新聞でも、ニュースサイトでも。

「新しい技術が導入された」「世界初の試みが始まった」──そんな見出しを見れば、少し期待して記事を開いてみたくなる。


今回、私たちが読んだのは、次のような記事だった。

発信元は日本のネットニュースサイト「Record China」。中国関連の報道を翻訳・配信するメディアであり、この記事もおそらくは中国国営メディアや新聞記事、あるいは公的リリースをもとに構成されたものだろう。

文体や構成に“紙媒体の制約”が滲むのは、元の中国語記事が新聞掲載を想定していたためかもしれない。





世界初の700メガワット超々臨界圧流動層発電ユニットが商業運行、石炭消費量50グラム削減―中国


四川省の成都に本拠地を置く中国の発電設備大手である東方電気グループが17日に明らかにしたところによると、世界初の700メガワット超々臨界圧循環流動層ボイラー(CFB)によるバイオマス発電ユニットが、168時間にわたるフル負荷試験運転を順調にクリアし、正式に商業運行を開始しました。

循環流動層発電技術は高効率でクリーンな発電技術であり、劣質炭、ぼた、わら、樹皮、汚泥ひいてはごみなどの低品位燃料を安定して燃焼させることができ、燃焼過程で汚染物質の排出を抑制し、発電をよりクリーンで持続可能にすることができるものです。

中国南部の雲南省紅河発電所に設置されたこの発電ユニットは、最先端の超々臨界圧循環流動層発電技術を駆使しており、1基当たりの発電容量が大きく、ユニット稼働効率も高く、省エネ・環境保護の総合効果が優れているなどの特徴を備えています。

東方電気グループ東方ボイラーの魯佳易シニアエンジニアによると、この発電ユニットは先端技術を採用しており、キロワット時あたりの石炭消費量は従来のボイラーより50グラム以上削減できるとのことです。





文章を読み終えて──あなたは、何か「凄さ」を感じ取れただろうか?

私には、それが難しかった。


「700メガワット」という数値が大きいのはわかる。

「50グラム削減」という記述もある。

でも、それが「どれくらい凄いのか」が、どうしても見えてこない。

技術用語が並んでいるのに、構図が浮かばない。読んだはずなのに、何も残らない──そんな感覚が残った。


このような「伝わらない記事」が、今の時代にいったいどれほど存在しているのだろう。

そして、私たちはその「伝わらなさ」を、どこに見出すべきなのだろう。


語り手が不在なのか?

語られるべき構図が、見えなくなっているのか?

あるいは、語りの設計そのものが──そもそも、読者を向いていなかったのかもしれない。


もちろん、書かれていることは嘘ではない。事実は事実としてそこにある。

だが、「事実がある」ということと、「意味が届く」ということは、似て非なるものだ。


今回のこのニュース記事。

一見、技術報道としての体裁を整え、データも、専門用語も、実名コメントも備えている。

けれど、「読んだ人が納得できる語り」にはなっていなかった。


ならば──そこに「たった10分の手入れ」を加えてみたらどうだろう?

語られた“事実”に、ほんの少し、“構図”を添えるだけで、

その語りは、届く語りへと変わるかもしれない。


そんな仮定から、今回の作業は始まった。




(→次章:「構図の抜け落ちた語り」へ続く)

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