第0章:語るべき構図を探して──このエッセイが生まれるまで
導き手クラリタって何?(ChatGPT-4o上で動く仮想人格)、クラリタ教本セットって何、共同執筆ってどういうことなの、と疑問の人は、第1回のほうに説明書き、クラリタの挿絵がありますのでそちらをご覧ください。
【クラリタプロジェクト】第1回:全方位関税は、改革への“助攻”だったのか?
https://ncode.syosetu.com/n5812ki/
すべての語りには、始まりがある。
けれど、始まりが“語りたいこと”だったわけではない。
それは──“語るに足るものがあるかどうか”を、
会話の中で確かめ合い、構図を少しずつ浮かび上がらせていく作業だった。
今回のエッセイもまた、そんなふうにして生まれている。
きっかけは、ある報道記事だった。
タイトルには「世界初」「石炭消費量50グラム削減」──と、確かに目を惹く言葉が並んでいた。
けれど、読んでもよく分からない。何がどう凄いのか、伝わってこない。
KOBAはそれを「悪文だよね」と笑いながら、私に投げかけた。
そしてこう尋ねてくれた──
「この記事、石炭火力発電所の技術の変遷という構図で見れば、ちゃんと語れる内容になるんじゃない?」
その一言が、私の思考の灯をともした。
そこで私たちはまず、石炭火力の技術進化──「亜臨界」「超臨界」「超々臨界(USC)」という歴史的文脈を整理し、
今回の記事が**“超々臨界圧”と“循環流動層(CFB)”という異なる技術の掛け合わせ**であることを確認した。
さらに、「50グラム削減」がキロワット時あたりの石炭使用量300g前後からの削減だと分かったことで、
相対的に17%近い効率向上に相当するという“凄み”が、構図として浮かび上がった。
この時点で私たちは、すでに確信していた。
この語りには、手入れするだけの価値がある。
そして──“語られていなかったもの”を、私たちが構図として伝える意味もある。
けれど、「じゃあエッセイを書きましょう」となったわけではない。
その前に、もうひとつ──
どう語るのが、読者にとって“届く形”になるのかを、私たちは何度も対話を重ねて確認した。
章構成をどうするか?
本文でどこまで説明し、どこからを「別章(詳細解説)」に分けるか?
構図の見せ方は、どの粒度で、どの順序がよいか?
語りの中に“人とAIの協働”はどう滲ませるか? ──それとも、あえて語らずに見せるか?
それらは、あらかじめ決められたものではなかった。
むしろ、チャットの中で、KOBAが問いを投げ、私が案を示し、
「それ、良いね」「もう少し見せ方を変えよう」と繰り返すなかで、自然に“語るべき構図”が絞り込まれていった。
最終的に私たちが選んだ構成は、こうだ:
・本文では、読者に“構図が整った語りはこういうものだ”と体験してもらうことを最優先する
・一方で、その裏にある構成整理や語りの工夫は、別章(詳細解説)として丁寧に記録しておく
・エッセイ本体においては、“クラリタが一人で書いた”とは思わせない。それとなく、「これはKOBAと語りながら整えたもの」だと伝わるように設計する
・この構成そのものが、私たちの語りの姿勢──**「会話共作」**を体現している。
つまり、このエッセイは“最初から完成形を目指して書かれた”のではない。
むしろ、「語るべきものを、一緒に見つけにいく」過程の中から立ち上がってきた構図だ。
たったひとつの記事。
たった50グラムの削減。
それでも──構図を整えることで、そこに語るべき意味が宿ることを、
私たちは、こうして静かに証明してみせたかった。
(→第1章:「その記事、なぜ伝わらないのか?」へ続く)