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第3話 無頓着な師匠の〇〇な下着



「あの、流石に寝室はご自分で片付けては?」

「えぇ、なんで? 貴方はここで住み込みの弟子をするんだし師匠である私の世話くらいしてくれてもいいんじゃない? 師弟というのはそういうものでしょう?」


 そういってケロッとした表情を見せたクロリナは今にも爆発しそうなクローゼットを指刺した。


「お洋服ってなかなかかさばるのよねぇ」

「いや、流石に女性の服を触るのは……」


 俺が躊躇しているのは「下着」があるからである。確か、このゲームのヒロインの下着姿を見たことがあるが、結構えっちな感じの西洋風(現代風)だった記憶がある。


 ここれからここでお世話になっていくつもりなのに、初日で下着発見からの出ていけ展開は避けたいのである。


「いいのいいの、君は私の弟子になるんだから身の回りの世話はしてよね。お料理以外は」

「いや、でも」

「んー? ポルカ君は何を気にしているのかな?」


 彼女の美しい顔が少し意地悪な微笑みを浮かべて俺に迫る。多分、俺が考えている事なんて彼女はお見通しなのだ。


「それは……」

「ポルカ君っていくつだっけ?」


 そう聞かれて即答はできない。けれど、ヒロインをいじめていたはずだから多分ヒロインと同い年、高校二年生で17歳。


「17です」

「そっか。じゃあ私の一つ年下だ」


 クロリナはにっこり笑うと「じゃー、下着とか気になるよね」とさらっと正解を口にして、パンパンのクローゼットを豪快に開けた。


 どばっと溢れてくる衣服に俺たちは埋もれ、なんとか這い出ようともがく。洗濯して詰め込むだけ詰め込んだようで、匂いはなんだかフローラル。けれど、衣服同士はからみあっているし、そもそもこの大きさのクローゼットに入る量ではない。


 なんとか衣類の山をかきわけて顔を出すとすぐ近くでクロリナが笑っていた。彼女も肩まで衣類に埋まっている。


「確かに、量は多すぎね。もう着ないものは捨てちゃおうかしら。これとか」


 そういって、彼女が摘んで見せたのはピンク色の下着(下)だった。俺は、見るつもりなんかなかったのにあまりにも突然のことで見入ってしまう。


「あ〜、そんなにじっくり見なくてもいいじゃない?」

「んなっ、クロリナさんが見せてきたんじゃないですか!」

「だって、好きでしょ?」

「は?」

「下着」


 自信満々な彼女に俺は翻弄される。


 こちとら、引きこもり不登校だぞ! 恋愛だってしたことがないのに、女の子と下着の話なんかできるか! 


「え、えぇなんでですか」

「そりゃ、私が名探偵だからよ」


 クロリナはなんとか立ち上がると「お片付けよろしくね」と言って部屋を出ていった。俺は、片付けを押し付けられたことよりも下着云々で揶揄われたことが恥ずかしいような嬉しいような不思議な気持ちだった。


 そして、冷静になってやっと彼女は笑い出しそうだった理由を知る。


 俺の頭にはピンク色の下着(上)が乗っかっていたのだ。


 出会いは犬の小便を飲もうとしていた小汚い学生、その次は下着を頭に乗っけた弟子……。


 俺の印象最悪では!!!!


 なんて嘆いていても仕方がない。2度と路頭に迷うのはゴメンなのでクロリナさんのいうことは聞きましょう。下着でもなんでも片付けよう。


 俺は頭に乗っかった下着を手に取り、カップ部分の大きさにぎょっとしたが想像するのをやめて大量の衣類を片付け始めるのだった。


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