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アン・シャーリーという名の、ちょっと様子がいい男子  作者: るきのるき


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(番外15)ルキフェル、アン・シャーリー(の中の人)の下宿先におじゃまする

「なるほど、本が全然ないね」と、ルキフェルは言った。

「いや、これでも現代の学生だったらあるほうだよ」


 せっかくリアルでも友だちになったんだから、と、おれはルキフェルを自分の家に誘ってみた。もうひとつの理由もあることはある。


 男性型でおれの部屋に遊びに来たルキフェルは、開口一番にそう言った。なぜなら、開口一番という言葉をおれが使いたかったからである、というメタな理由ではない。使ってみたくなる言葉としては上位ではあるけれど。


 今日はルキフェルが、最近の若者はちゃんと勉強してるのか、と、シンキバやミノワさんのような、頭のおかしいレベルの勉強ぶりに疑問を持ったこともあって、3日後におれの下宿に来てくれ、と、いちおう招待してみたのである。


 ルキフェルは、創造神とたいして年の差がないくらい長生きをしている堕天使だから、ヒトではない眷属や、顔見知り程度の友だち系天使・堕天使はいても、ヒトの寿命はそこまで長くないので、すぐに世代交代をしてしまうため、今の時代には親しいヒトはいないらしい。


「ほとんどは電子書籍とかPDF保存とかしてあるから。研究室にはそれなりのリアル本もあるんだけど、自宅で持ってても意味ないから」


 5つのモニターとそれに接続しているキーボードがあり、そのうちのひとつはゲーム用の、スペック高めのものもあるけど、そんなにゲーオタではないから、ただのテキスト作成用に使っている。


 一番古いものは、もう5年ぐらいになるだろうか。これは辞書専用で、ネット辞書を複数見るときには別の端末を使ったほうが便利なのでは、みたいな感じで、端末が増えていったのを覚えている。


 壁のすみには、安い仏壇ささやかな棚が置かれていて、上段に昔買ったフィキュアとアクスタ、中段にはプリントアウトしてファイルにしてある、現在研究用のリアル印刷物(PDFから印刷したもの)、下段には、読むと面白いからという理由で何種類かのリアル辞書もある。


 ただ、下段から辞書を取り出すのは面倒、というか腰が痛くなるから、上段と下段は入れ替えてもいいかな、とは思っている。


 おれが利用している大学の研究棟までは、下宿先からは歩いて5分ほどの距離にあり、おれの下宿先は大通りに面した中層マンションの5階にある。


 自宅から研究室までエレベーターの時間を入れると7分ぐらいかな。


 秋になると育ったイチョウの木がじゃまになる程度の位置で、今はまだ緑の葉がじゃまになっている。


 独身の社会人が住むような1DKで、家賃に関しては、このビルのオーナーがおれの知り合いであることと、リフォームはされててもいささか古くなりつつあること、それに昔、おれの先祖がこのビルのオーナーを、あやかしから助けたことがあるらしく、学校を卒業して別のマンションに引っ越すまではただにしてもらっている。


学生割引などもしてもらっている関係で、そんなに高くない。


 できたての中・高層ビルで、家族が住もうと思ったら1億円は最低かかるような地区だけど、鴎外・漱石の時代は、農家と畑、それに田舎家が点々と並ぶような土地だった、とルキフェルは言う。


 リビングルームに落ち着かなく腰掛けたルキフェルは、キリスト教的なものがないかと心配した。


 おれの机の引き出しにおしゃれ十字架を見つけると、すばやく4つの端を曲げてネオナチのシンパが身につけるようなものにしてしまった。


 十字架の真ん中にはドクロがあるからよけいそうなのである。


 これは確か海賊のシンボルとして、なにかのイベントのときオヤに買ってもらったんだけど、存在も忘れてしまったから、まあいいか。


 高い酒と安い酒、それに柿ピーその他乾燥系のおつまみを用意して、さあなんか神様の悪口言えよ、とおれがグラスに氷と酒をそそいで差し出すと、ルキフェルは、いや、お前が手にしているほうがいい、と言った。


 別に毒なんか盛ってないし、おれのほうが安い酒だったんだけど、こうやってグラスを交換するのはお約束ごとらしい。


 ただしミステリーの。


 昔の領主は、しょっちゅう有能な家臣を毒殺してたんだよなー、とルキフェルは言う。


 葬儀に火葬が使われることは稀だから、有能な家臣は毒殺されたふりをして、翌日にはこっそり、泥人形を置いてよく逃亡してたものよ。


 時計を見るとそろそろだな、と思ったときに、部屋のチャイムの音がした。


 やってきたのはお隣の天使様で、両手に持ちきれないほどの料理があるため、出前持みたいな手持ちワゴンを使っていた。


 土足の部分に手持ちワゴンを置くことはないから、天使様はそのまま、ほとんと使われていないキッチンに、料理を並べはじめた。

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