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アン・シャーリーという名の、ちょっと様子がいい男子  作者: るきのるき


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(番外13)アン・シャーリー(の中の人)、日本国憲法の奥深さを試される

 リアルのナンシーは、ナナコというハンドルを使用していた。ニャニャコ、としかうまく発音できないのに、なんでそんなハンドルにしたのか。黒い髪に黒に近い目、と、どこにでもいそうな女子で、母は再婚して、再婚相手である義父の妻が成仏していない、というのは本当のようである。ナナコの妄想の中では本当。しかしそれは本当のことと言えるのだろうか。あまりその方面をくわしく話すと、別の物語になってしまうから置いておいて。しかしすでに『赤毛のアン』とはほとんど関係のない、リアルよりの話になってはいますね。


「じゃあ、いつもの『日本国憲法かるた』やるよ」と、ミノワが言って、茶室の隅にある大きめの段ボール箱の中から、高級そうな菓子が以前は入っていたと思われる厚めの、かるたをしまっておくには手頃な箱を取り出した。


 ……日本国憲法かるた?


「それは普通のかるたとは違うのか」と、おれは聞いた。普通のかるた、って、子供がやるやつと、競技でやる百人一首かるたがあるのは知ってるけど。


「ほぼ同じだよ。こちらが読み札で、こちらが取り札」


 読み札には歴代総理の顔と名前、それに日本国憲法が1条ずつ、条のはじめの部分だけ小さく印刷されている。札はオリジナルのようで、つまり市販はされていないけど、ネット通販とか学部内の専門書店には置いてあるらしい。興味のあるかたは作ってみてください。日本国憲法は著作権ふりーだからね。


「初代が伊藤博文で……最近だと、カツカレーを食べている安倍晋三元総理、モモを食べてジューシー、って言ってる安倍総理、パンケーキを食べてる菅元総理、広島風お好み焼きを食べてる岸田総理、おにぎりを食べてる石破総理、柿を食べてる高市総理……なんか食べてる総理ばかりやん」


「平和でいいだろ」


 確かに平和ですけどね。日本国憲法が103条で、歴代の総理が複数代入れてちょうど103代以上だけど、石破までは数は合ってたんだな。


「これ、総理が代替わりして104代以上になったら……ああそうか」


「その場合は、初代は残して、2代・3代とかから順番に消すんだろうな。誰も2代目内閣総理大臣は誰なのか知らないだろうし」


 2代目は黒田清隆で、一応いろんなことをやっている。任期が1年半で短いため忘れがちになるのは仕方ないかな。


 ミノワとシンキバは、取札を各人の前に51枚と52枚を並べて、じっと考えて、その位置を記憶する。取り札のほうにはちゃんと条の全文が書いてあるから、とても読みにくい。ミノワは、ちょっと待って、とお手洗いに行って、半透明のスポーツ用ゴーグルのアイウェアをかけて戻ってきた。


     *


 103枚の取札を並べて、記憶タイムがあって、試合本番となる。読み手はレイチェルである。まず最初に序歌の代わりに、日本国憲法前文を読む。


「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」


 これを、桂小文治が「金明竹」の仲買人の口上ぐらいの勢いで読む。テキストを手に持ってはいるんだけど、暗唱してるね。90秒ぐらいか。


「あ」


 ネコがバッタを捕まえるぐらいの勢いで、ばし、とミノワが取札をはらう。


「これは1字きまりのひとつだね。『第八十四条・あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。』」


 難しすぎ。


「この憲法施行の際、さ」


「『第百一条・この憲法施行の際、参議院がまだ成立してゐないときは、その成立するまでの間、衆議院は、国会としての権限を行ふ。」


「もうひとつ、『第百三条・この憲法施行の際現に在職する国務大臣、衆議院議員及び裁判官並びにその他の公務員で、その地位に相応する地位がこの憲法で認められてゐる者は、法律で特別の定をした場合を除いては、この憲法施行のため、当然にはその地位を失ふことはない。但し、この憲法によつて、後任者が選挙又は任命されたときは、当然その地位を失ふ。』というのもあるんだけど、第百一条と第百三条では「施行の際」のあとに読点のある・なしの違いがあるんだ。それを直すのも憲法改正になるから、国民の同意を得ないといけないのが困るところなんだ」と、シンキバは説明した。


「そういうの、法律勉強してる人はみんなできるのか」と、おれは一般人なのでびっくりした。

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