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アン・シャーリーという名の、ちょっと様子がいい男子  作者: るきのるき


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(番外12)アン・シャーリー(の中の人)、謎部の活動内容をさらに知る

 ネコ体型のルシフェルは、リンド夫人体型の女子高生レイチェルに甘えている。ここを撫でろ、とか、そこはもういい、という指示を出してるから、甘えてるというのとはすこし違うかもしれない。


 おーよしよし、と、レイチェルはネコの正体が堕天使と知ってるのか知らないのかは不明だけど、普通に相手してる。ネコの相手は、相手していないように相手する、というのがコツなのである。小さくても猛獣なので、本気になりすぎるとひっかかれたり噛まれたりして痛い思いをする。


「こいつと昔から知り合いだったのか」と、俺はレイチェルに聞いた。


「あ、ハルキのこと? 最近見かけるようになって、ときどき部室の柱で爪とぎとかしてるよ」


 ひょっとしてレイチェル、けっこういい人なのでは。しかしハルキってのは、ハチワレ+ルキフェルに由来してるんだろうけど、悪くないな。俺は堕天使が女子の場合はルーシー、ルー子とか言って、それ以外はルークとかルキフェルだった。


「で、結局ここは手芸部みたいなもの、という解釈でいいのかな。隣人部と書いてリンド部、と読ませる裏名称はともかく」


「公にはそうだね。しかし真の目的は、みんなの噂話の情報交換することなんだ。こうやって、キルトとかちくちくちくちく、ちくちくちくちくとか縫ってたり、編み物とか黙々としてると退屈じゃない? ねえ聞いた、あのリンダ、また別の相手見つけたって知ってる? うそうそ、うそじゃないって、こないだ地下鉄で北千住まで遊びに行ったら。相手のほうは、春日部駅で降りるところまでついてってみたんだけど、で、容姿は、みたいなこと、延々と話しながら手を動かすわけね。集中したいときは、このバンドを頭に巻く」


 バンド、というよりハチマキかな? 手作り感があって、どれも個人用のものらしく、さまざまな色で、額のところに「作業中」って字が書いてあった。「集中中」じゃ「中」の字が多すぎるからかな。


「だから、うちもあんたのことは前から知ってるよ、仮想世界のアン・シャーリー。どこに住んでて、どこに通学してて、何を勉強してて、恋人がいないってことも。ところで、あたしのほうでも恋人募集中のヒト、何人か知ってるけど、写真とプロフィールだけでも見てく?」


「見るだけなら」と、俺は答えたので、レイチェルはさっそくプリントアウトした写真を見せてくれた。表に画像、裏にだいたいのプロフィールと能力が書いてある。


「うーん、どれも悪くないね。顔面偏差値、高すぎるかも」


「あんただって、様子がいい部類なんだから、もっと自信持てよ」


 様子がいい、とは謎の褒め言葉である。というよりむしろ、褒めるところがない人間に対して使う褒め言葉だったと記憶している。


「しかし、画像なんてだいたい加工してあるもんだから」と言って、おれは、ちょっと興味を持った相手のプロフィールを確認した。


     *


 プリントアウトしたものには、裏に趣味・特技・どういう相手のタイプが好みかというようなことが書いてある。しかしなかなか性格というのはわからないので、添付してあるリンク先の自己紹介ショート動画を見るのである。どれもキラキラ系・陽キャ系かと思ったら、そんなことはなく、おとなしめのが多かった。アイドルとかじゃないから、そういう演出、演技になるのは当然だろうか。ネットの解説動画でも「というわけでー! 今年のー! 倒産企業ベースト!」なんてうるさいのは流行っていない。


 何枚か気に入ったのもあったので、これ借りていいかな、とレイチェルに聞くと、ビジターならいいよ、ということでる。正規利用するにはちゃんと登録して、自分のプロフィールも作成せんとあかんけどね。そりゃそうだね、おれが犯罪予定者かどうか、相手に情報がわからないからね。


「ちなみに、そっちのほうにあるのが交渉成立した奴と、成立しなかった奴と、成立したけど別れちゃった奴。見てみる?」


 3つのプリントアウトの山はどれも同じぐらいの高さで、閲覧はできても外部持ち出し禁止になっているらしい。なんでこんな子が、とか思っていたら、趣味の不一致とか多いんだな。今度の、なんのためにだか不明だけれど、役に立つかもしれないので覚えておこう。そうだ、作者に連絡して、使ってもらうといいかも、と思って連絡したら、作者はとうの昔に隣人部のメンバーだったらしい。


「リアルキャラをそのまま物語で使うのは悪くってさ。加工して使うようにしてるんだけど、当人の許可が得られれば、スクールネーム以外はそのまま使うこともあるよ」


 おれはレイチェルに、作者のプロフィールとか登録画像とか、ある、って聞いてみせてもらった。


 ……画像はともかく、プロフィールは嘘ばかりだな。お菓子作りと犬の散歩とテニス、って、由比ヶ浜結衣かよお前は。ちゃんと「物語作りとネット逍遥、ときどき散歩」って書けよ。ネットと散歩はどちらも、物語作りのための素材探し・構想立てのためだから、趣味はひとつしかないのである。


     *


「こんにちは、遊びに来たなのだ!」と、元気のいい中学生っぽい子が入ってきた。黒猫を手にもって、ぶんぶん振り回しているけど、よく見るとそれはネコのぬいぐるみだった。


 中学生っぽい、というより、この高校の中等部の制服を着ているから、どう見ても中学生だな。片目眼帯とか片腕包帯とかしていないし、服も黒を貴重にしたゴシック系じゃないけど、どう見てもナンシーとニャンシーである。


 赤毛のアン・シャーリーが主役である仮想世界のプリンスエドワード島では、スペンサー夫人の姪で、マシューとマリラに、孤児院から引き取ったアンを押しつけた、物語の比較的重要な人物。とはいえ原作にはほとんど出てきませんけどね。要するに、男子の代わりに女子がカスバート家に来ることになったきっかけは、ナンシーなんだけど、そこらへんは読者が深読みして二次創作してみるといいんじゃないかな。

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