45話 アン・シャーリー、夜鳴きヌードル屋に勘定を払う・1
「どうだい、景気のほうは」とおれは、ロブスターそばを食べながら聞いてみた。箸を使えない人たちは、フォークとスプーンを使って、くるくる、って回して持ち上げて、ぱく、と食うんだけど、すでに箸の使用はグローバルになっている。
単に、この『赤毛のアン』の架空世界が、日本人仕様になっているだけ、という見方は、ある。
「入れ物は、フチがぎざぎざとか、いい器とかじゃなくて、プラスチックのカップか」
「プラスチックじゃなくてスタイロフォーム、ね。箸はディスポーサブルで、誰かが使ったようなもんを使い回しているわけじゃないから、きれいだよ」
発泡スチロールと割り箸、ね。でも……。
「ロブスター以外の中の具は、ちくわじゃなくてちくわぶだな」
「うちはそのほうが人気あるんだよ。味が染み込んでて、ふわふわしてて食感がよくて、これはちくわじゃなくてちくわぶじゃないか、と怒りやすいとか、利用者があって」
ちくわぶの味は、普通。めん、つゆ、もたっぷりの量があって、つまり我慢すれば食べられないことはない、みたいなこともない。グリーンゲイブルズのキッチンで食べるカップ麺より風情がある。
「じゃ、勘定をしようか。いくらだい」
「10000セント」
「そりゃ高いよ! 夜鳴きそばの値段って、16文…セントが普通だろ」
「うちは10000セントなんだよ。いいか、ちょっと財布を出してみろ」
おれは、小銭がじゃらじゃらと入っている、というか小銭しか入っていない、きんちゃく型の財布をまるごと渡し、親父はそこから5枚の1セント硬貨を取り出した。
「女王陛下の肖像があるほうを「0」とするだろ、「1」と単位が書いてあるほうが「1」ね。それをこう並べる」
10…2
100…4
1000…8
10000…16
まさかの2進法!




