(番外2)アン・シャーリー(の中の人)、どうしてアンがグリーン・ゲイブルズの家に来るようになったかを作者と考える
「よお、どうしたの。こんな時間に。珍しいねえ」と、作者は、いつもの喫茶店でプロットメモをまとめているところにあらわれたおれ、つまりアン・シャーリー(の中の人)に声をかけた。時刻は夜の9時を回っていて、店もアルコールを提供していた。
「どう、アップルワインとか飲む」と、作者は聞いた。どうも「小説家になろう」という小説投稿サイトでは、1分500字で読む読者を想定しているらしいので(ちょっと遅すぎると思いませんかみなさん。普通1000字ぐらい、ライトノベル系だったら読むよね)、だいたい3万字ぐらいテキスト作ったら、つまり読者が1時間ぐらい読むだろうな、と想定できる量を作ったら、一休みしてプロットを考え直したりしているらしい。
「そういえばこの店のコーヒー、仮想世界のプリンスエドワード島にも商品輸出してたね」と、おれは店の店主に話しかけた。実際に飲食物を作っているのは、カウンターの中のすっきりしたいい男で、持ってくるのはやとわれメイドのクロネコかシロネコである。店主はどうやら探偵業を副業にしていて、店では客の無駄話に混ざったり、相談に乗ったりするだけだ。
「あ、向こうで飲んでくれたんだ」と、店主は言ったので、おれは事情を説明した(以下略)。
「ところで、グリーン・ゲイブルズにアン・シャーリーが、女子なのに男子と間違えられて行くことになったのはどうして」と、おれは作者に聞いた。
「それはスペンサー夫人が間違えたからだろ」と、作者は言った。
「責任者という意味ではそうだけどね。実際、マリラがアンを連れて行くところはスペンサー夫人の家だし。ただ、原作ではこうなってるんだ」
(以下、テキストは著作権保護期間終了の元テキストを独自に翻訳)
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「マリラ・カスバート、聞いてたのと違いますわ」と、スペンサー夫人は当惑ぎみに言った。
「だって、ロバート(これは原文ではbrotherで、夫人の兄とも弟とも取れるので、訳者によって扱いが異なる)は、姪のナンシーを寄こして、あなたは女の子が欲しい、って私に伝えたの。ねえ、フローラ・ジェーン」
夫人は玄関先にちょうどいた娘のフローラに声をかけた。
「そのとおりです、カスバートさま」と、フローラは力強く答えた。
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「このロバート、ってのは姓は不明だけど、ロバート・スペンサーってことはないだろうね。まあたいていの翻訳ではそこんところ、ブラザーと同じ感じでごまかしてるんだけど」と、おれは言った。
「なるほど、ロバートはちゃんと伝えたつもりで、スペンサー夫人もちゃんと聞いたつもりで、だけどナンシーは間違えて伝えたんだな」と、作者は言った。
「つまり、この件の犯人はナンシーだね。夫人も、まったく、もうもうですわ(テリブル・フライトリイ・シング)って言ってるし。で、おれの疑問なんだけどさ、このナンシーって子、この場面のこのところで名前出てくる以外になにかしてたっけ」
「えーっと、アンの大学時代、通称アンのモテ期時代になにかしてたと思うよ。スペンサー夫人、けっこうアンに対しては責任感じてたみたいで、いろいろフォローしてるんだよね」
「そこだよ」と、おれは言った。
「作者の二次創作の腕の見せどころは。つまり、ナンシーはアンの孤児院時代の顔なじみで、友だちだったんだ。アンを間違えて呼んじゃった、んじゃなくて、ナンシーがわざと間違えて、11歳ぐらいの女の子、つまりアンがグリーン・ゲイブルズに来るように仕掛けたんだな」
「ああ、そういうのもいいね。でもなあ、もう孤児院時代の子のひとりは、伯爵令嬢のリリちゃん、ってことで出しちゃったからなあ」
「でもって、ナンシーはリリの双子の妹」
「また双子かよ。アン・シャーリーの話って、やたら双子が多いんだよね」
「とりあえずロバートは、伯爵の代々の執事長ということでどうかな。実権はスペンサー家のほうが握ってて」
「いいねそれ。でもってお家騒動みたいなのも入れとくとか。原作のスピンオフね」
「そこまで行くと原作のかけらもないけど、とにかく、みんななぜかアン・シャーリーが好きなのよ」
「百合系のハーレム・ヒロインだな」
「お話中失礼ですけど」と、店主は言った。
「ああびっくりした。あんた聞いてたんだ」と、おれは言った。
「早いとこ学園編はじめてくれると、読者としてはうれしいんだけど。自分のひいきはガーティ・パイなんだよね」
「ああ、意地悪なジョーシーとガーティの双子だね。この話、今どきの学園ライトノベルなみに登場人物多くってさあ」と、作者はプリントアウトした一覧表を見せた。
「おまけにアン、物語の中で物語部作るし。何なんこれ」
「二次創作じゃない物語として、作者のあんたは書いてそうだよな」と、おれは同意した。
よかったら、店主もこの仮想世界の話に出て来てみないか、と、作者は誘ったけど、さすがに違う物語には出にくい、というのが店主の主張だった。




