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17話 アン・シャーリー、教会で派手にすっ転ぶ

 おれ、アン・シャーリーは、ヘビに変身した堕天使ルキフェルを、帽子の花飾りの間に隠して、ばれないように用心して教会に入った。信仰の薄き者は入れないのかと思ったけど、プロテスタントはそこらへんゆるいらしくて(本当はどうなのかは知らない。今と当時とは違って、カソリックも新人歓迎、みたいなゆるい運動部みたいになってそうなイメージはあるね)、アン・シャーリーの中の人、つまりおれでも問題なく教会の入り口はくぐれた。しかし入り口の階段、けっこう子供には段差大きくて難儀した。バリアフリーなんてものはないんだけど、子供とか老人には優しくないのだった。


 でもって、階段ではつまづかなかったんだけど、教会の正面の窓とか牧師の演壇 (でいいのかな)の、金と人手がかかってそうな作りに感心して先へ進んだら、後部席と前方の席の間に段差があるのに気がつかなくて、やはり転んでしまった。床にすべって尻もちではなかった。


 おれが野辺の花を摘みながら歩いたため若干遅れて、教会は3分の2ぐらい席が埋まっていて、その大半はおれと同じ日曜学校に通う子供たちとそのつきそいの両親だった。


 とっさの判断で顔面を教会の床にぶつけることはなかったかわりに、帽子は前のほうへすっとんだ。帽子、花かざり、そしてヘビのルキフェルがころころすとん。


 おれの格好を不審そうに見ていた信仰の篤き者たちは、悲鳴をあげた。せっかくのお忍びが台無しである。これも神の力か。


 ウナギぐらいなダイヤ柄のヘビだったルキフェルは、たちまち姿を変えた。おとなの変質者ではなくその姿は、どう見ても白黒ネコ。前髪の上のほうが真ん中わけみたいな感じで黒くて、体全体は白と黒が混じっていて、4つの足は白かった。


「あーっ、ハチじゃん、教会の中で会ったのなんてはじめてだよ」と、おれと同じぐらいの年の女子が言ったので、当惑しているルキフェルの周りに、もっぱら女子が複数集まった。


 ああ、白黒で頭がこんなふうになってるネコって、ハチワレとか言うんだっけ。だから略してハチ。ミケとかクロとかいうのと同じぐらい、見た目まんまな名前である。


「ハチ、こっちおいで、しょうが味のクッキーあげるよ」と、これは食料品店の女子かな。たいていのネコは呼んでも呼ばれたほうは見ない。しかし、食べ物を床に置かれると、ハチ (旧名ルキフェル)は、くんくんとにおいをかいで食べはじめた。教会にクッキーぐらいは持ってってもよかったのか。


 しかし、女子たちに触られまくるのは嫌だったのか、毛を逆立てると、ひょいひょいと、堕天使の羽根がないにもかかわらず身軽に、窓のへりとかを使ってキャットタワーを登るように、うまいこと二階席の出っ張りのすみのほうへ身を落ち着け、おれたちを天使のように見下ろした。


 牧師はそのネコの正体を知っているのかどうかは不明だったけど、まあいいか、という感じで話をはじめた。ネコのルキフェルは、はじめのうちはおとなしく聞いていて、そのうち長い尻尾を動かしながら寝てしまった。牧師も含めて教会の中の人間は、しじゅうそっちのほうを見ていたので、堕天使がヒトを堕落させるのには成功したんじゃないかな、とも言える。


 おれは窓際の席に座って、午前の太陽に照りつけられる湖の、きらきらした湖面を見ながら、物語の続きを考え、あのネコとどうやって友だちになれたの、って、周りの子が休み時間に聞いてくれたので、友だちというか同じくらいの年の顔なじみがたくさんできた。村の規模の割には子供はやたら多かった。

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