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10話 アン・シャーリー、著作権保護期間の話をする

 赤毛のアン、と言えばダイアナちゃんである。


 まことの友、とかすごいこと言いながら、アンが毒水飲ませる、黒髪の貞子さんみたいな子。


 あと、炎系の魔法が使える(アンは光の魔法系ですが)。


「学校ではいろいろな仲間と出会えるからね。ギルバートとか」と、マシューは説明した。


「ギルバート……誰それ」と、おれは聞いた。


「アンのライバルで、結婚する男子だよ。だいたいなあ、『赤毛のアン』シリーズは、1作めより2作め以降のほうが面白くなる、って有名じゃん」


「ごめん」と、おれはあやまった。


 もちろん知ってるけど、おれの心は男子なので、女子が興味を持ちそうな男子にはあまり興味が持てなかったんだ。


「ああ、楽しみだなあ、ダイアナちゃんと会える日が」


「中身は男子だけどね、ダイアナちゃん」と、マシューは言って、おれは愕然とした。


「そそそそ、それはないだろ、マシュー」


「ダイアナちゃんの役は男子に人気枠なのよ。そもそも女子はケストナーのギムナジウム・ランドのほうが客多いし」


「ああ、『飛ぶ教室』の世界ね。はがねの誓い(アイザーン)! 個性的な男子山ほど出てくる奴」


「ただ、著作権がちょっとややこしいのよ。エーリッヒ・ケストナーが死んだのは1974年だから、死後70年、つまり2045年まで勝手に使えないんだ」


「だったら、この、おれたちの物語が書かれたの、2045年ってことにすればよくないかな」と、おれは名案がひらめいた。


「おれたちの物語、ってなんだよ。きみはしょっちゅうおかしなことを言うね」


 やっぱダメだよね。なろう世界では。カクヨム世界その他でも多分ダメだと思う。アニメや漫画のキャラが、幼女体型じゃがわしは十万111歳なのじゃー、って言いはってもエロキャラとしては使えないのと同じ。


「ちなみに、ヘルマン・ヘッセは1962年没のドイツ生まれ・スイスの作家だから、日本国内では著作権フリーのはず」と、マシューは言った。


 車輪の下ランドか。あまり楽しくなさそうだな。どうもヘッセのギムナジウムものは楽しくないんだよ。


「トーマス・マンはどうだったっけ」


「ドイツ生まれで、1944年6月にアメリカ市民権を取得してるから、アメリカの著作権が適用されるけど、1955年没だから、戦時加算があっても問題ないね」


 AIのマシューは、携帯端末でウィキペディアを見るようなズルもしないでスラスラと答えた。


 著作権の戦時加算というのは、わかりやすく言うと日本が第二次世界大戦中に交戦国だった国 (アメリカ・イギリスなど) に所属している著作者の著作権は、ざっくり10年延長される、という日本国内の決まりで、たとえば1960年に死んだアメリカの作家が、1930年に書いた著作は、ざっくり2040年ぐらいまで切れていない、ということになる。ただし、1952年4月28日以後に出版された著作は、2010年に著作権フリーになった、という判断が可能である。ここらへんややこしくなるから、各人が勝手に調べたほうがいいだろう。


 なお、ドイツ・イタリアその他の枢軸国(日本と交戦しなかった国)、およびスイスなどの中立国には、この戦時加算というものは適用されない。


 とか話しているうちに、おれたちはきらきらした湖のほとりまで来た。


 水子池、じゃなくて、バリーの湖、赤毛のアン的には「きらきらした波の湖」、地理的にはパークコナーのキャンベル池である。


「この湖に向かって、「おれは幼女が好きだ―」って叫んでみるのじゃ」と、マシューは言った。


 それって強制イベントなんでしょうか、マシューさん。

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