第3話 残火のベストパートナー
自室の扉を開けるとそこにはサメが描かれたサメの尻尾が付いたパジャマを着たネムが居た。
ネムは俺の嫁だ。ネムも俺と同じで名前が無い。
だからネムは恩人に教えてもらった名前を気に入って付けている。
俺はネムの頭を優しく撫でておでこに優しくキスをした。
「ただいまネム」
「うん、おかえり」
ネムは右足を手でさすりながらそう言った。俺はそんなネムを見てこう言った。
「足痛むか? もし痛むんだったら言ってくれ。 俺に出来ることならなんでもするから」
ネムにそう言うとネムは首を横に振った。
「ちがう、この義足が慣れないだけ。違和感すごい」
そう、ネムは義足なのだ。 7年前に上司の企みによってこうなってしまった。
「俺が、、俺があの場に、、、 あの場に居れば」
残火がそう悲しげに言うとネムは残火を抱きしめ、こう言った。
「ざんかは悪くない。 それに悪い人はあびるが倒した。
わたしは今、 ひさめとざんかと居れてるから幸せ。 それに首はまだ噛めるもん」
そう言いネムは右首を噛んできた。
そして俺の血をチュウチュウと音を立てながら吸い始めた。
ネム曰く俺の血を吸うとなんだか力が湧いて出てくるらしい。
ただ俺の血には特に何も含まれていない。
黒猫の医者曰くそういう体質の可能性か、ただの思い込みだそうだ。
もちろん娘である火鮫も同じだ。
俺はネムの頭を撫でながらこう言った。
「俺の血吸うのも良いけど、、 一旦後に出来るか? 火鮫ずっとおんぶするのも疲れるからよ」
ネムは血を吸うのをやめて俺の首元から離れた。
口の周りに付いた血を手で拭うと俺の前に「ん」と言って手を伸ばしてきた。
「ひさめベットに持ってくから早く渡して。 ざんかはここで待ってて」
「別に持ってくよ」
「ざんか疲れてる、だからわたしがやる」
ネムがこういうときは大体頑固だ。 俺がやるって言ってもやらせてくれない。
だから俺は大人しく火鮫をネムに渡した。
ネムは火鮫を俺から受け取ると寝室へと抱っこで持っていきベットに寝かせてあげた。
そして優しくおでこにキスをした後音を立てないように戸を閉めて俺の元へと戻ってきた。
ネムは俺の手を掴んでお腹を撫でさしてきた。 俺は謎に思いながらこう言った。
「ん? どした急に、、、 っは、、 もしかして!! 妊」
「ちがう、お腹すいた。それに最近してないからそれはない。またしたいけど、ざんかしごとある」
「終わっても終わってもどんどんと仕事がきちゃうからな、、
ごめんな、寂しい思いさせて」
「ざんかが凄いからしごと来る。わたし嬉しい。 ざんかの頑張ってる姿大好き」
ネムはかわいい笑顔を見せながらそう言った。
「そんな事思って、、、」
「でもベットでのヨワヨワなざんかもまた見たい」
ネムはニシシと笑いながらそう言った。
「よし、さっき言おうとしてた事撤回。 今度の時覚えとけよ、、?」
「ふん、やれるもんならやってみな。 ニシシ、ニシシ」
「おまっ、、、 ふん、こんな話もう辞めだ。 ほら早く食堂行くぞ、お腹すいてるんだろ?」
「うんすいてる、いこ」
俺はネムの手を握りしめて一緒に部屋を出た。
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廊下をネムと一緒に歩いていると後ろの方から聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
「残火〜!!!!」
睡眠から起きたイリヤが缶コーヒーを持ちながら俺に向かって走ってきた。
「どうしたイリヤ? なんか用か?」
俺がイリヤに聞こえるようにそう言うとイリヤは全速力で走って俺達に追いついてきた。
イリヤは息を切らしていた。
「帰って...きてるんだったら言ってよね」
「なんで嫁でもないお前に、、、 というかお前寝てたろ」
「嫁じゃなくても言ってよ... 私は残火におかえりって返したいの」
「はいはい、、 分かったからとりあえず息整えろ」
「うん、、」
イリヤは息を整えていつもの顔色に戻った。
「んでイリヤ、なんか俺に用か?」
「別に用があるわけじゃないけど...一緒にいちゃダメ?」
「別に俺は良いけど、ネムがどう言うかだぞ?」
俺がそう言うと背中からネムがヒョコっと出てきた。
「イリヤ...わたしのざんかあげない」
「別に残火をネムから奪おうとしてないよ。 ただ一緒に居たいだけ、、」
「イリヤ.. .好きな感情もれすぎ...」
「そりゃ漏れるでしょ! あの研究所から救ってくれたんだから!」
ネムはその言葉を聞いて何かを感じたかのかこう言った。
「ひーろーってこと...?」
「そう、ヒーロー。 私のヒーロー」
「まぁべつにイリヤだったらいい。 ひさめにもざんかにもやさしいから好き」
「て事は、、?」
イリヤはキラキラした目で俺を見てきた。
「良いって事じゃねぇか? イリヤも一緒に食おうぜ」
「やった〜!! ご飯! ご飯!」
「ごはん、ごはん!」
イリヤとネムは二人で楽しそうに手を繋ぎながら飛び跳ねていた。
俺はそんな二人を後ろで見ながら貰った缶コーヒーを飲みながらついていった。
(にしてもなんで超濃厚ブラックコーヒーを選んだんだ? 俺カフェラテの方が好きなのに、、)
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食堂に着くと俺らは料理員達が作ってくれた料理を受け取ってそこら辺の席に座った。
手を合わせて全員食べ始めた。
ネムはオムレツ、イリヤはうどん、俺は蕎麦だ。
イリヤはうどんを食べながらずっとネムの方を見つめていた。
ネムはそんなイリヤを見てこう言った。
「なにイリヤ。 このオムレツあげない」
そう言いネムはオムレツを手で隠した。
「違う違う。 なんでオムレツをフォークで食べてるのかな〜って思ってさ?
というかいつもフォークで食べてるよね?」
「わたしそれ使えない」
イリヤの箸を指さしながらネムはそう言った。
「んん、だいじょうぶ。ふぉーくとざんかが居ればだいじょうぶ」
イリヤはネムの言葉を聞いてため息をついていた。
「ほんっと、、ネムは残火の事好きだよね。 ネムは残火のどんな所が好きなの?」
「そんなのぜんぶ。ぜんぶが好き。わたしが血を吸いたいっていったら吸わせてくれるし、ベットの上」
俺は咄嗟にネムの口を塞いだ。
「ネム、、 その話題は禁止だ。イリヤにはまだ早すぎる」
「うん、分かった」
「え、、? 何々? なんの話?」
「いずれ多分お前が体験する事の話題だ。
今この話題に触れたらお前が変な方向に曲がりそうで俺は嫌だ」
「まぁ、残火がそこまで言うなら触れないでおくよ。
でもまぁ、、ネムが残火の事大好きってのは分かったよ」
「だな」
そう言いネムの方を向くと、ネムはニシシと笑っていた。
俺たち三人組は談笑をしながらご飯を食べ、
食べ終わるとイリヤはそのまま仕事をするためにあの部屋に戻っていた。
俺とネムは部屋へと戻り火鮫を一緒に風呂に入れ、俺とネムの間に火鮫を挟んで眠りについた。