表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没落寸前貧乏男爵令嬢に転生したのでコスプレスキルを使って脱貧乏を目指していたら、犬並み嗅覚の年上侯爵様に溺愛されました。  作者: しろまり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/49

43.酔拳だったの?

「トラヴィス様。そろそろ、お嬢様を起こされた方がよろしいかと」

「しかし、こんなにも健やかに眠っているのを起こすのは忍びない」


近くで話し声がする。


騒がしいなぁ。

もう少し寝かせてよ……むにゃむにゃ。


「ですが、そろそろ帰宅しないとヨシュアお坊ちゃん達が心配するかと」

「分かっている。だが、もう少しだけ」

「ハァ……お嬢様、起きてください。お嬢様」


溜息を吐いた誰が、私の身体を揺すっている。


う~ん。

あと、もうちょっと……あと5分だけ……。


「あ、こら、待ちなさい。もう少しだけ寝顔を堪能させ」

「もう、煩いな~!」


私は目を擦りながら起き上がる。そして目を開けて、見知らぬ部屋にいることに気付いた。


「あら、ここはどこ?」

「お目覚めになりましたか、お嬢様」

「ここはツークエ伯爵邸の一室だよ」


少し呆れ声のゼノンに対して、的確に答えてくれたのはトラヴィス様だった。


「えっ、どうして私…???」


ツークエ伯爵邸の一室のベッドで眠っていたの? 一体、何があったの?


その疑問に答えたのは、今度はゼノンだった。


「お嬢様は果実酒を飲まれて、眠られてしまったのです」

「えぇ! 果実酒って、お酒よね? 私、そんなの飲んでないわよ。お酒は二度と飲まないと決めたもの。庭で選んだ時だって、シャンパンは避けて隣のジュースを手に取ったのよ?」

「それが果実酒だったんだよ、アネット」

「え、そんな、まさか……」


苦笑いのトラヴィス様が教えてくれた。あのオレンジ色の液体は果実酒だったと。


あのジュースのように甘い飲み物が、お酒だったの? あれは、どう味わっても濃厚ジュースだったわよ? というか、例の如く、記憶がないのだけど……まさか!


「私、何かしでかしてしまったのでは?!」

「いいえ。むしろ、お嬢様は大活躍でしたよ。そうですよね、トラヴィス様」


ゼノンの視線を受けてトラヴィス様が「あぁ」と頷いた。


「コワルスキーを倒したのは君だからね」

「はい? 私が? コワルスキー元伯爵を?」

「あぁ、それはそれは華麗な立回りだったよ」

「お嬢様が、あれほど戦えるとは思いませんでした」


トラヴィス様もゼノンも、その時の光景を思い出しているのか“うんうん”と首を縦に振っている。


えっ、全く覚えていないわ。私が倒したって、どうやって?


「酔った所為でしょう、お嬢様は身体を左右にユラユラと揺らし、その動きに敵は翻弄されていました」


酔ってユラユラ……それは、まさか酔拳!

私ってば、いつの間に酔拳を習得していたの?


いえ、違うわね。ただ本当に足取りが覚束なかったのでしょう。それが偶々、良い方向に作用しただけね。つまり酔って暴れて(語弊)、眠ってしまったということ?! なんてこと!!


あれ、待って。衝撃が大きすぎて何気にスルーしてしまったのだけど、今、トラヴィス様は『コワルスキー』と言ったわよね?


「ここにコワルスキー元伯爵が現れたのですか?」

「あぁ、それは―――」


トラヴィス様は話してくれた。私が間違って果実酒の飲んだ後、何があったのかを。


コワルスキー元伯爵と手下に囲まれた所、異変を察知したゼノンが駆け付けて、トラヴィス様と私を含める三人で敵を制圧。騒ぎを聞きつけたトーマが、すぐさま治安隊を呼びに行って、コワルスキー元伯爵と手下達は捕縛された。そこに顔面蒼白のツークエ伯爵が現れて、事情を告白したという。


ツークエ伯爵は脅されて、コワルスキー元伯爵を手引きしたそうよ。


脅しの内容は、不正を告発するというもの。そう、ツークエ伯爵は不正―――脱税を行っていたのよ。この間の不作で領地経営が上手くいかず、借金をしても足らないため、とうとう脱税に手を出してしまったのね。そこをコワルスキーに付け込まれたってわけよ。


ツークエ伯爵がトラヴィス様の弱点になってしまったわ。この茶会はトラヴィス様を誘き出す為のもので、あの招待状はコワルスキー元伯爵の罠だったわけね。


そしてツークエ伯爵が庭に誘ったのも、ゼノンやトーマを遠ざけたのも、すべてはトラヴィス様を無防備にする為だったのよ。


「それなら何故、コワルスキー元伯爵は私も招待したのでしょうか?」

「アネットを人質に取るか、私に何か出来なくても君を傷付けて一矢報いるつもりだったのだろう」

「でも、私がいなければコワルスキー元伯爵は思惑通りに事を運べたでしょうに」

「ん? どういう事だい?」

「私がいなければゼノンもいないわけですから、コワルスキー元伯爵は丸腰のトラヴィス様に勝てたかもしれませんわ」


そう。話を聞く限り、ゼノンがいなければトラヴィス様に勝機はなかったと思うのよ。だってゼノンが敵の大半を暗器で倒して、さらにトラヴィス様に武器を渡したというのだもの。ゼノンがいなければコワルスキー元伯爵が優勢だったでしょうね。


「アネットは誰の味方なのかな?」


疑問を口にしたら、トラヴィス様は黒い笑みを浮かべていた。


あら、いやだ。

誤解させてしまったのかしら?


「もちろん、トラヴィス様の味方ですわ。ただ、コワルスキー元伯爵は欲をかき過ぎたと思っただけですわよ」

「確かに、アネットの言う通りだ。私だけに照準を合わせていたら、結末は違っていただろう。だが、コワルスキーは悪人だ。欲深いからこそ、悪事に手を染めた。ならば、欲をかくのは必然だっただろう。この結末は、コワルスキーの自業自得というものだ」

「まぁ、そうですわね」


話が終わったところで、私達は帰宅すべく部屋を出た。


茶会に招待されていた人達は既に解散しており、静かな屋敷内を私達は歩く。エントランスへと向かうと、そこにはツークエ伯爵夫人と子ども達の他にも使用人達が全員揃って頭を下げていた。


「申し訳ありませんでした!」

「夫人、貴女が謝ることではない。罪を犯したのはツークエ伯爵自身なのだから」


謝罪の言葉を口にした夫人に、トラヴィス様は首を振る。


「しかし……」

「今後は、私が力になろう。だから気を落とさないように」

「ありがとうございます!」


尚も追い縋る夫人はトラヴィス様に励まされて、やっと顔を上げた。




馬車に乗り込みながら私はトラヴィス様に尋ねる。


「ツークエ伯爵は、どうなるのですか?」

「そうだな。脱税自体は軽い罰で済むところだが、指名手配犯のコワルスキーに加担したことは重い罪に問われるだろう」


そう言って、トラヴィス様は小さく(かぶり)を振りながら、そっと溜息を吐いた。


「まったく、ツークエ伯爵は馬鹿だ。困っていたのなら一人で抱え込まず、私に相談すれば良かったものを。私は迷うことなく、力を貸しただろう。そうすれば、こんな事にはならなかったはずだ。そもそも、脅された時点で自分の罪を告白すれば良かったのだ。軽い罪を隠すために、より重い罪を犯すとは……本当に馬鹿だよ、ツークエ伯爵は」


呆れるように窓の外を見ているが、トラヴィス様の顔は憂いを帯びている。


昔馴染と言っていたから、それなりに絆や情があったはずよ。きっと、トラヴィス様は辛いのね。相談してもらえなかった事も、重罪を犯した事も。それに……コワルスキー元伯爵に自分が差し出されたことで、裏切られたと感じているのかもしれないわ。


トラヴィス様を頼れば、きっと助けてくれたでしょう。でもツークエ伯爵は自分一人で問題を抱えた所為で、こんな事態になってしまったのね。


それは、いずれ私に訪れるはずだった未来かもしれないわ。父の事も、家の事も一人で抱えようとしていた私。でも私には、頼れる人が現れたわ。


トラヴィス様がいなければ、どうなっていたでしょうね。トラヴィス様を頼れて、本当に良かったわ。私は恵まれているのね。


ゆっくりと馬車が動き出した。夫人達は外まで出て、深々と頭を下げている。それは馬車が門をくぐり、夫人達の姿が見えなくなるまで変わらなかった。

お読みいただき、ありがとうございます(*ᴗˬᴗ)⁾⁾

また、ブックマーク・いいね・評価もありがとうございます!

とっても嬉しいです!!励みになります♪

(☆☆☆☆☆を★★★★★にポチっと押していただけると泣いて喜びます!!)

今後とも応援いただけますと幸いです。宜しくお願い致します٩(´ᗜˋ*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ