34.まさかのコワルスキー元伯爵の手下が我が家に!
それから数日、屋敷から一歩も出ることなく、弟妹達と楽しく過ごした。
外出しないのは念のためよ。コワスルキー元伯爵に私の存在は知られていないだろうけど、ゼノンが用心するようにって言うの。
そして、そのゼノンは我が家の護衛でもあるから、必要な物の買い物とかは全部マーサに頼むことになり、負担をかけてしまっているわ。マーサには特別手当を出すべきね。
今も居間で弟妹達と笑いながら過ごしていたのだけど、突然ゼノンはピタリと動きを止めると窓の外をジッと見つめた。
「ゼノン?」
「お嬢様、皆をつれて地下室に隠れてください」
「えっ、どうしたの?」
何事?!と思っている私に、ゼノンは耳打ちした。
「コワルスキーの手下が屋敷を見張っている」
「え、コワルスキー元伯爵の? 本当に?」
「あぁ、間違いない。一人はコワルスキーの屋敷にいた見張りと同じ気配だ」
「全員捕まったのではなかったの?」
「コワルスキーの脱獄に手を貸した奴がいるんだから、逃げ延びた奴らは確実にいる。奴らは、こういう時の為に隠れていたのかもな」
「でも何で我が家に? 一体、何のために」
「目的は恐らく偵察だろうな」
「だ、大丈夫なの?」
「今のところ、動きはない。相手は3人だから襲ってきたとしても、俺にとっちゃ脅威じゃねぇよ。けど、念のため避難しておいてくれ」
「分かったわ」
ゼノンはマーサに、不審者がいるから地下室に隠れるよう伝える。弟妹達の説得は私の役割だ。
「さぁ、皆『かくれんぼ』しない? 新しい『かくれんぼ』よ」
「新しい『かくれんぼ』?」
最初に食いついたのはユアンだった。
「そう、ルールは簡単よ。鬼はゼノン、隠れるのは地下室。ゼノンが良いよって言うまで静かに隠れていられたら勝ちよ。どうかしら?」
「ゼノンが鬼なのに、私達を探さないの?」
次に興味を示したユリアは首を傾げる。
「えぇ、探さないわ。ちゃんと静かにしているか確かめるだけよ」
「「ふ~ん」」
”思ったのと違った”と、乗り気でないユアンとユリア。
私に提案力がないばかりに、どうにも盛り上がらないわ。どうしましょう。
どう説得しようかと考えていると、空気を読んだヨシュアが誘うように二人の肩を叩いた。
「楽しそうだ! 皆、やろう!」
「ぼく、やる~!」
「マーサも参加しますね」
「それじゃあヨシュアとヤトル、それにマーサも一緒に行きましょう」
そう言って、居間を出ようと扉へ向かう。わざと双子を置いてけぼりにすると、仲間外れにされたと思った二人は慌てて追い駆けてきた。
「私も行く!」
「僕も!」
「ふふふっ、皆一緒に行きましょうね」
気付けばゼノンが、いくつかの本とヤトルのお絵かきセットを纏めてマーサに渡していた。
これで退屈しのぎは万全だわ。
マーサを先頭にヤトルとユアン、ユリアが続く中、ヨシュアが私に小声で問い掛けた。
「姉上、一体何があったのですか?」
「ヨシュア……」
勘の良い子だから、何かを察しているのね。ヨシュアは次期当主の自覚もあるから、知る権利があるわ。
それに賢いから誤魔化せないわね。でも本当のことを全て話すわけにはいかないわ。トラヴィス様との契約には守秘義務があるからね。
後ろにいるゼノンを見たら、小さく頷いた。
「詳しいことは言えないのだけど、実はトラヴィス様の仕事はね、犯罪組織を捕える手伝いだったの」
「えっ」
「無事その組織は捕縛されたわ。けれど、組織を仕切っていた人が脱獄してしまったのよ」
「まさか、それで姉上が狙われて?」
「そうかもしれないけど、まだ詳しいことは分からないの。でも大丈夫よ、ゼノンがいるからね」
「はい、姉上」
ゼノンを見たヨシュアは、しっかりと頷いた。そこには不安な様子は微塵も感じられない。
もしかしたらヨシュアは、ゼノンの正体に気付いているかもしれないわ。いずれは、ちゃんと話さなくてはならないわね。
それにしても―――
「ごめんなさいね。私の所為で、皆を危険に晒してしまったわ」
「そんな! 姉上は何も悪くありません」
「でも」
「その犯罪組織は悪いことをしていたのですよね?」
「えぇ、そうよ。沢山の人が酷い目に遭ったわ」
「それなら悪いのは犯罪者の方です。姉上は正しいことをしたのですから、謝る必要も気に病む必要もありません」
「ヨシュア、ありがとう」
「むしろ僕は誇らしいです。姉上が悪人を捕まえる手助けをしていたなんて! さすが、僕の姉上です!」
尊敬の眼差しを私に向けるヨシュアに胸が熱くなった。
本当に良い子に育ったわね。嬉しいわ。
私の方が誇らしいわよ、ヨシュア。
気が付けば、地下室の前に到着していた。
「それでは閉めますね。呼ぶまで、決して外に出てはいけませんよ」
「「「は~い」」」
弟妹達の返事を聞いて、ゼノンは地下室の扉を閉めた。
それから、どれだけ経っただろうか。
ヨシュアの勉強が一区切りして、ユアンとユリアが本に飽き始め、ヤトルが舟を漕ぎ出した頃、ノックの音と「ゼノンです」という声と共に扉が開かれた。
「もういいですよ」
ゼノンの登場に反応しないユアンとユリア。
「静かに隠れられていたので、『かくれんぼ』は坊ちゃん達の勝ちですね」
「あ、そうだった!」
「私達、新しい『かくれんぼ』してたんだった」
どうやら二人とも『かくれんぼ』をしていたことを忘れていたみたいだわ。
ふふふっ、子どもってそういう所があるわよね。
「僕達の勝ち?」
「えぇ。ですので、賞品をお受け取りください」
ゼノンはポケットから飴を取り出した。
「わ~い、飴だ~」
ユアンは受け取った飴を口に放り込んだ。
用意がいいわね、ゼノン。しっかり弟妹達の扱いを心得ているわ。さすが我が家の優秀な執事ね!
心得られていないのは私ではないかしら?
さっきも“新しい『かくれんぼ』”では上手く乗せられなかったし。ヨシュアのアシストがあったお陰で何とかなっただけだわ。
私はゼノンやマーサに比べたら、まだまだね。
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