29.マカロンは正義!
次に馬車が止まったのはカフェの前だった。とても洒落た雰囲気で、堅苦しくはないものの高級感が仄かに漂っている。またも私はトラヴィス様にエスココートされながら個室に入った。
「ここはマカロンで人気のカフェだそうだよ」
「マカロンですか! 大好きですわ」
思わず声に喜色が乗ってしまったわ。仕方ないわよ。
だって私、前世の時からマカロンが大好きなのだもの。
でもマカロンって高いでしょう?
頻繁に食べられなくてね。それなら自分で作ったらいいじゃない!って思ったのだけど、マカロンって湿度管理が重要なスイーツなのよ。やっぱり本場は違うわ。日本の湿度と素人の腕では、自分の望むマカロンが作れなくてね。試行錯誤する間もなく断念したわ。
メイクなら、いくらでも試行錯誤できるのだけどね。
お菓子作りに関しては、根気がないみたいなのよ。
あ、私の名誉のために言っておきますけど、ちゃんとマカロンは作れましたからね。私の望むサクフワではなかっただけで、ちゃんと食べられるレベルでしたからね。
決して消し炭ではありませんわよ!
今世に至っては、貧乏すぎて食べる機会にすら恵まれなかったマカロン。
そのマカロンが、もしかして食べられるの? 楽しみすぎるわ!
なんて思っている間に、お皿に盛られたマカロンと紅茶が運ばれてきた。
可愛くてカラフルなマカロンに、どれから食べるか目移りしてしまう。
う~ん、どれにしましょう。
白いのは、きっとバニラね。緑のはピスタチオかしら? 茶色はチョコレート、橙色のはオレンジね。あ、このピンクは、きっと苺だわ!
私はピンクのマカロンを頬張る。
「美味しいわ!」
思わず頬に手を当てて、うっとりと顔を綻ばせた。目を閉じて、この至福を味わう。それは思った通り、苺味のマカロンだった。
苺の程よい甘味と酸味が口の中に広がる幸せのハーモニー。最高よ!
これは弟妹達にも食べさせたいわ。これを包んでもらえたりしないかしら? 私が食べる分を持って帰りたいわ。
「どうしたんだい?」
マカロンを堪能していた私が急に手を止めてジッと皿を見つめるので、トラヴィス様は首を傾げた。
「あの、これを持って帰っても良いでしょうか? 弟妹達に食べさせてあげたいのです」
「本当に君は弟妹思いなんだね。安心しなさい。ちゃんと弟妹達の分を土産に包んでもらっている。これは全部、君が食べていいんだよ」
「!! 本当ですか!! ありがとうございます!! トラヴィス様!!」
嬉しさから“!”マークだらけになってしまったわ。でも仕方ないでしょう。
とても、とーっても嬉しかったのだから。本当にトラヴィス様は優しい人ね。
「う~ん、美味しい~!!」
私はニコニコと上機嫌でマカロンを口に運ぶ。はしたなくない程度に、ゆっくりと。気づけば、紅茶を飲む手も進んでいた。
「これだよ、私が求めていたものは。どうやら私は攻め所を間違っていたようだな」
トラヴィス様が何か呟いていたけど、私はマカロンに夢中で何も聞いていなかった。
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私達がホクホク顔でカフェを出た後、馬車の中でトラヴィス様は尋ねてきた。
「アネット嬢、どこか行きたい場所はあるかな?」
「行きたい場所ですか? あ、それでしたら、あの丘に行きたいですわ」
「あの丘?」
「ゼノンに言えば、分かりますわ」
「では、そちらに向かおう」
トラヴィス様が御者の方へ合図すると小窓が開く。私が「あの丘へ」といえば、ゼノンがコクリ頷いた。こうして、私達を乗せた馬車は軽やかに“あの丘”へと向かった。
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「ここがアネット嬢の言っていた“あの丘”かい?」
「はい。ここからは王都が一望できるのですよ。それに、ほら。この時間になると、夕日に染まって綺麗でしょう?」
時刻は夕方。
日が傾き、夜の帳が東の空に少しずつ下りてくる。
暮れていく今日最後の太陽の光が、王都の建物も丘の草木も、辺り一面を黄金色に輝かせていた。その光に照らされて、私もトラヴィス様もオレンジ色の薄いオーガンジーを纏ったように見える。
同意を求めて横を見ると、隣に立つトラヴィス様は一瞬、目を瞠って動きが止まる。その後、ゆっくりと瞬きしてから、とても穏やかに微笑んだ。
「本当に綺麗だね、アネット嬢」
「私、ここからの景色を気に入っておりますの」
「そうか。こんなに素敵なものを見せてくれて、ありがとう」
「ふふふっ、お気に召していただけたなら嬉しいですわ」
私達は二人並んで笑みを浮かべると、暫くの間この美しい光景を眺めた。
「旦那様が、あんなにも楽しそうにしている姿を初めて見ました」
「そうですか」
「旦那様は女性を好ましく思われていませんでしたから、遠ざけておいででした。それなのに、アネット様に対する旦那様のご様子といったら! 先程、旦那様が仰っていた想い人は、もしかしてアネット様のことではないでしょうか」
「そうかもしれませんが、お嬢様は何よりも大切にしている人達がいるので、トラヴィス様の入る隙があるかどうか」
「なんと! それは、どなたなのですか?」
「お嬢様の弟妹達です」
「あぁ、なるほど」
「それに、お嬢様は鈍感な方なので」
「旦那様の恋は一筋縄ではいかないという事ですね」
お嬢とトラヴィスの背後で俺とトーマは、そんな会話をしていた。
お嬢との恋は難しいと思うぜ?
何せ、弟妹達命だからなぁ。
マカロン、美味しいですよね!大好きです!
でも高いんですよねぇ…あぁ、一度に5個ぐらい食べたいから高く感じるんだと思います←
サイズが小さいから沢山、食べたいんです(食いしん坊の発言w)




