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没落寸前貧乏男爵令嬢に転生したのでコスプレスキルを使って脱貧乏を目指していたら、犬並み嗅覚の年上侯爵様に溺愛されました。  作者: しろまり


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26.高級洋服店で着せ替え人形になりましたわ

窓の外の景色に視線を這わせていると、馬車が止まった。


どうやら目的地についたようね。


トラヴィス様の手を借りて馬車から降りる。

目の前にあるのはブティックだった。


これは所謂、高級洋服店よ。

男爵家の人間なんて利用しないレベルのお店よ!


えっ、ここに入りますの?

トラヴィス様にとっては普通でも、私にはハードルが高いのですけど!


嫌ですわよ、入ったら最後ではありませんか!


そんな心情も虚しく、トラヴィス様は私をエスコートして奥へと進んで行く。

店員に案内されたのは個室だった。


個室といっても、かなり広いわ。

我が家の応接室2~3個分の広さがありましてよ。


「彼女に合う物を頼むよ」


たった一言のトラヴィス様の言葉によって、私は着せ替え人形と化すのであった。まずは採寸されて、ドレスが運び込まれる。最初に着せられたのは薔薇色のドレスだった。


「ど、どうでしょうか?」

「似合っているよ。アネット嬢の明るさが更に際立つ。より華やかになっていいね」

「は、派手過ぎませんか?」

「アネット嬢は、まだ15才なのだから、これぐらい普通だろう」


おずおずと出てきた私にトラヴィス様はニコニコと微笑んだ後、店員に目配せした。トラヴィス様の指示を受けて、店員は試着室に戻るよう促してくる。


あ、はい。次のドレスに着替えるのですね。分かりましたわ。


次のドレスは薄紅色だった。

「これは、とても愛らしいね。とても可愛いよ」


深碧色のドレスの時は

「ほう、この深みのある緑が似合うとは。アネット嬢は凄いな」


萌黄色のドレスの時は

「アネット嬢の亜麻色の髪に、よく合っているね」


瑠璃色のドレスの時は

「夜の妖精のように美しいね。素敵だよ」


空色のドレスの時は

「これは驚いた。まるで空から舞い降りたように綺麗だ」


金糸雀色のドレスの時は

「まさにカナリヤのように華やかだね。とても似合っているよ」


琥珀色の時は

「太陽のように眩しく輝いて見えるよ。まるで光を纏っているようだ」


藤紫色のドレスの時は

「ほう、上品さが増して大人っぽく見えるね」


薄藤色のドレスの時は

「この淡い色はアネット嬢の可憐さが引き立って良いね。素敵だ」


と言った感じで、終始ベタ褒めだった。


どの色合いも似合ってしまうとは、モブ顔とモブ髪色、恐るべしだわ。


着てきたドレスに着直して、トラヴィス様の元に戻る。


ようやく着せ替え人形から解放されたみたいね。


言われ慣れない褒め言葉と、着慣れない上質なドレスに私は疲労を感じていた。


「気に入ったものはあったかな?」

「そうですわね……」


どれも高級すぎて気に入るも何も、恐れ多い気持ちしかありませんわ。


トラヴィス様の問いに何と答えようと悩んだ挙句、言葉を濁すことにした。


「どれも素敵ですわね」

「確かに、どれも似合っていたからね」


ぎこちない笑顔を向けたら、トラヴィス様はウンウンと頷いている。


「疲れただろう。少し休むといい」


トラヴィス様の前のテーブルには、ティーセットが用意されていた。


喉も乾いていたので有難いのですが、座る場所がトラヴィス様の横しかないのですけど? 他に椅子はないの?


テーブルの前にはソファが一つしかない。その右側にトラヴィス様は座っている。空いている側をトラヴィス様がポンポンと叩いた。


あ、トラヴィス様の横に座れと。

まぁ、そこしか空いていませんものね。


うぅ、トラヴィス様に近いからイヤなのですけど。

あ、イヤだというのは不快だとかではなくてね。居た堪れなくなるからよ。


さっきからトラヴィス様の表情が甘すぎて心臓に悪いのよ。

でも、仕方ありませんわね!


腹をくくった私はトラヴィス様の隣に腰かけると、ティーカップを手にした。


ふぅ。

この紅茶、美味しいわね。


さすが高級店。

貧乏男爵家で使うより、上等な茶葉を使っていますわね。


一息ついた所で、再び試着するように促された。


えっ、まだ着替えますの?

もう十分ではありませんか?


というか、どうして私はドレスの試着をしているのかしら。


値札が付いているわけではないので正確には分かりませんけど、ここのドレスは高すぎて買えませんわよ。


お店を冷やかすような事したくないのですけど、トラヴィス様は一体何を考えていらっしゃるのかしらね?


最後に着せられたのは、桜色のドレスだった。


「これは、これは。花の妖精かと思ったよ。瞳の色とお揃いで、とても可愛いね」


そんなに褒めないでくださいまし!

恥ずかしくなってしまうではありませんか!


周りの人、店員もゼノンですら生暖かい目を、こちらに向けている。それを気にすることなく、トラヴィス様は立ち上がると手を差し出した。


「では、行こうか」

「えっ? まだ着替えておりませんけど」

「今日は、そのドレスで出掛けよう。あぁ、そっちのドレスでサイズの合う物は包んでくれ。直しが必要な物は後日、届けて欲しい」

「かしこまりました」


私の疑問に答えた後、トラヴィス様は店員に指示を出している。


えっ、あのドレス達は買うことになっていますの?

何故?


私は欲しいとも、買うとも言っておりませんわよ。そもそも、あんな高級なドレスを私が買える訳ないわ。いえ、買う気もないですけどね。そんなお金があるのなら、弟妹達の為に使うに決まっているじゃないの。


私の手を取ったトラヴィス様は有無を言わさず歩き出した。


「え、あの、トラヴィス様? その、支払いは」

「トーマが済ませているよ」

「そうなのですね」


そう、いつの間に。さすが侯爵様、スマートね。

って、そうではないわ!


「いえ、そうではなくてですね。私、あのような高額なドレスを買うお金がありませんわ」

「ん? あれは私からの贈物だよ」

「えっ?」

「言っただろう? お詫びだと」


あー、そういえば“お詫び”で出掛けたのでしたわね。あぁ、あのドレスが“お詫び”だと。いえいえいえ、やり過ぎですわよ!


「トラヴィス様。いくらなんでも、あの高価なドレスは貰い過ぎですわ」

「そうかい?」

「そうですわよ。一体いくらするのやら……考えただけでも身体が震えますわ」

「ハハハッ。面白いことを言うね、アネット嬢は」


正直に伝えたら、トラヴィス様に笑い飛ばされてしまった。


侯爵家と貧乏男爵家では金銭感覚が違うということを、トラヴィス様はご存じないのかしら?


「気にせず貰って欲しいのだが。あぁ、もしかして好みのドレスではなかったのかな? 気づかなくて、すまない」

「はぁ?」


呆気に取られて、変な声が出てしまったわ。

そういう問題ではないですわよ、トラヴィス様!


「いいえ、違いますわ。どのドレスも本当に素敵で気に入りましたわよ。ですが、あのように高額な物をいただく訳にはいかないという話ですわ」

「お詫びなのだから遠慮することはない」


私の言いたいことが伝わっているのか、いないのか。イマイチ分からない反応ですわね。でも、これ以上は断るのも無粋というものですわよ。


「それでは、有難く頂戴しますわ」

「うん、そうしてもらえると嬉しいよ」


満足気なトラヴィス様の笑顔。破壊力がありますわよ。油断大敵ですわ!


「では、次に行こう」

「はぃ?」


次って、どういう事ですの

 これで終わりではないのですか?!

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