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第3話 俺は普通の高校生なんです③

「ふぁ~~~~~ん!?」


 俺、瀬田大道はホラー映画も真っ青な悪夢を見て叫ぶ事から始まる。


「お兄ちゃんうっさい!」


 妹のありがたい言葉を頂き、股が濡れていないことを確認して安堵すると、俺はシャワーを浴びて服を着替え、歯を磨き、そしてその後朝食を食べて再び歯を磨き学校へ向かう。


 悪夢以外は健康的な朝を迎え、学校へと向かう。

 学校に到着する。

 自分の席に座ろうとしたが、俺の席が同じクラスメイト達に占拠されていた。

 楽しそうにしているし、もう少し待てば朝の始業式まで待てばいいかとクラスメイト達を待っていようかと思っていたがゲラゲラ笑っていてとても楽しそうだった。


混ざりたい……


俺も楽しい話題を共有したい。そう思った俺はいそいそと彼等に近づき、


「おはよう!朝から何話してるんだ?」


 俺は朝の挨拶をしつつ、にこやかに晴れやかに笑顔で挨拶をする。


 完璧だ……これで友知り合い友達通り越してもはや生涯無二の親友コース確定だろ……俺はそう思っていると、クラスメイトの男子達は


「ごめん瀬田君。席占領してた。どうぞ」

「悪いな瀬田、勝手に席使って。今度からは気を付けるよ」

「えっ、いや別にそんなことは……」


 そう言ってクラスメイトの男子達は俺からそそくさと離れて行った。


「いや、俺はただ仲良くしようと……」


 俺は力無く呟き、彼等を引き留めようとした。違う、俺はただ……


「友達が欲しいだけなのに……」


 俺は悲しみを内に込めながら、一人寂しく席に座った。


 授業の半分以上を終え、昼休みへと突入したクラスは各々自由に過ごしていた。クラス内で談笑する者、仲良く弁当を突っつきながら食べる者、体育館で球技を楽しむ者、そして──


「ていう夢を見たんだよね」

「……なるほど」


 友達がいない者同士で弁当を食べる者。

 それが俺。

 そして彼女、辻薫だ。

 俺は今日の朝に見た不気味な夢を唯一の女友達である辻薫に始まりから顛末までを語った。

 後同友達を作れるかということについて、これについては専門家と話した方が実りがありそ

うなのでそれ以上話すのはやめておいた。


 学校の昼休み中に暇だったから暇つぶしの一環として話してみた。

 彼女は興味深く聞いていた。

 こんな恥ずかしい悪は家族にも話せないし、唯一そういった悩みを打ち明けられる相手はどんなことも話せる関係性の彼女を於いて他に居なかったのだ。


「私が占った結果、もしかしたらアンタの前世は人斬りかもしれないわね」


 薫は丸い水晶玉の上で両手をうねうねと変な動きで囲みながら笑って言う。

 これでも俺は真剣に悩んでいるのだが。


「はぁ~辛い。最近ずっとこんな感じなんだよ。夢で見ることと言えば侍が人を斬って煮て焼いて、っていうわけじゃなくて斬って喰う光景ばっかなんだよ」


「違う考え方をしてみたら?誰かが何かを伝えたいから夢を通してアンタに見せてるのかも」

「へーおもしろ」

「話聞けや」


 薫はそんなオカルトチックな事を言う。

 俺はまたか、心の中でため息を吐く。

 こういう時の薫は一度喋り出すと止まらない。

 壊れたカーラジオのようにぺちゃくちゃけちゃくちゃ意味の分からない妄言を垂れ流す。


「夢の中の自分は別の世界の自分かもしれないっていう考察もあるわ。他にも死者が生者に何かを伝えようとしたり……」


 俺はうんうんと聞いている振りをする。

 俺は全然興味が無かったので右耳から左耳へと通り過ぎていくが、彼女は全く気付いていない。

 俺は薫から視線を外し、彼女の後ろの人物を見る。


「……でさー、その子が臭くってさー」


クラスメイトの友達の会話を楽しそうに聞く一人の女の子が席に鎮座していた。

 茶髪のボブ風カットに、制服の上から強調される圧倒的フォルム。

 思春期の少年には非常に目に毒だ。

 彼女の名前は有馬花連。

 

 俺は彼女が好きだ。

 彼女が本を読んでいる時の彫刻にも出来そうなほどの美麗な出で立ち、窓の外の空を見て物思いに耽る姿も様になる。


「へー、でもそれってさ結局力士だったわけでしょ?」


 有馬花連の蓄音機から出るような美しい声を聴こうとしていた時、薫が俺の顎を指で掴んで無理やり彼女の方向に向けさせらせる。


「ちゃんと聞いてる?」

「あぁうん。ムササビってくさいらしいな」

「聞いてないことは分かったわ」


 薫はじとりと俺を睨む。興味のない話を延々とされる身にもなって欲しいものだ。ゲームが好きだと言われていざ会話してみればスマホアプリの野球ゲームの話しかしない奴がいたら嫌だろう?


「また見てたでしょ」

「な、何を?」

「とぼけても無駄よ。有馬さん、見てたでしょ」


 薫はすべて見通しているかのような鋭い目つきで俺の瞳を覗き込む。

 俺はどう言い訳をしようか悩むが、ふと我に返る。

 何故俺が言い訳なぞしなければならないのだ?俺は薫と付き合っているわけではないのに。

 これは反論するしかない、と俺は決意し口を開く。


「いや、お前には関係ないだろ」

「ただ一人の女の子の友達を蔑ろにして他の女の子のケツを追いかけるのは許されないことでしょ」

「俺はお前の彼氏じゃないぞ」

「はぁ?そこまで言ってないわ。飛躍し過ぎよ!私とアンタは唯一無二のびーえふえふよ!」


 と薫は訳の分からない事を言う。

 俺はこんなどうでもいいことで頭を使うわけにはいかないのだ。

 俺は彼女に、有馬花連にデートを申し込みたい。

 だがそれは危険すぎる。

 彼女は難攻不落の要塞、数多くの男達が夢と共に散って逝った。

 デートプランを必死に考えていたが、全く良い案が思い浮かばない。


「なぁ、そんな俺の唯一の女子友のお前に聞きたいことがあるんだが、デートをするならどこに行きたい?」

「えっ!?わ、私!?私に聞いてるの!?」

 

 俺が薫にそう聞こうと彼女は何故かテンパりながら顔を赤くする。

 コイツもコイツで彼氏が出来たことないのだろう。

 だが素体は良い。

 顔は生きた西洋人形かのような白く透明な柔肌に、庇護欲を掻き立ててしまう程の低身長。紫色に錯覚を覚えそうな黒い髪の色に碌に髪を整えていないもふもふふわふわの背中まで届きそうな髪毛髪、人と話しているのに常に死んだ目をし、気を許した相手には高圧的な態度。

 趣味が陰気臭い奴が好きそうな呪術とかエイリアンとか妖怪とかおおよそ常人から変え離れたりしている。あれ、コイツに良い所なんてあるのか?


「ねぇ、今私に対して失礼な事考えてなかった?」


 おまけに何故か彼女は俺の考えていることを読み取ってしまう時がある。


「そんなことはない。話が逸れたぞ。お前はデートに行くならどこに行きたい?」

 俺が改めてそう聞くと薫は再び顔を赤くして俯きながら呟く。


「わ、私だったら集合場所は分かりやすいランドマーク的な場所に集まって、おいしいパン

ケーキ屋さんに行って写真撮ったり、そのあとは映画館で映画を見て、見終わった後は感想

を言い合ったりして、言い終えるには時間が足りないねって笑い合ってどっちかの家に行

って、その後は……」


 薫は最初は言い淀んでいたが後半は流暢に喋り、俺は「おお」と感嘆の息を漏らす。


「流石女子だ。始まりから終わりまで饅頭みたいにみっちりだ。で、誰か当てはいるのか?」

「えっ、いや、それは……あ、あん──」

「ま、俺以外の仲の良い男友達なんてお前には居ないか!ハハハ!」


 俺は盛大に笑い飛ばすと、薫は恥ずかしそうにしながら奥歯を噛み締めてまたもや睨み、


「こんのデリカシー無しの朴念仁!」


 薫はそう言って俺にビンタをしてぷいっと俺から離れて行った。俺はなんであんな事を

言ったのだろうと机の上で顔を伏せながら後悔していた。


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