同じアパートに住んでる仲良しのJKが実は最推しの大人気Vtuberだった〜幼馴染に「Vオタきもい」と振られた僕、社長にスカウトされ弟系Vとしてデビューして大人気に。幼馴染よ今更甘い顔をしてももう遅い〜
短編版です
よろしくお願いします
「す、好きです! つ、付き合ってください!! 」
僕は今日幼稚園からの幼馴染である久蘇霞に告白をした。
幼稚園の頃からずっと一緒に過ごしてきた僕達は、高校も一緒の学校に入学した仲だ。
家族同士の仲も良かったのでご飯を食べに行ったりすることもあった。
何故過去形なのかと言うと僕の父は海外で働いているからだ。
なんでも大企業の社長なのだとか。
母は幼い頃に他界した。
だからか一緒に過ごしていくにつれて僕は霞が恋愛的な意味で好きになっていったのだ。
そして今日、今まで生きてきた中で1番勇気を出して霞に告白をした。
心臓がどくどくと鼓動が早まるのを感じる。
数十秒お互い無言のまま時間が過ぎていく。
ついに霞が口を開く。
「は? いやごめんけど無理。だって私好きな人居るし」
「え……」
思いがけない言葉に硬直してしまう。
「まぁそういう事だからじゃあね」
「ま、待って! 」
出ていこうとする霞の手を思わず握ってしまう。
だがーーー
「あのねぇ? 私は幼馴染のよしみであんたと話してあげてるだけなの。常識的に考えてあんたみたいな陰キャと付き合うわけないでしょ? それにそのぶいちゅーばー?だっけ。
普通にきもいから。 あんたが好きだって言ってた【夢詠 姫菜 (ゆめよみ ひめな)】ってやつにでも告っておきなよ」
リュックに付けていた缶バッチやアクキーを指差し、笑いながらそう言ってくる。
きもいってそんな風にずっと思ってたのか。泣きそうになるのをぐっと堪える。
もうこの空間に居たくない。
立ち去ろうと床に置いていたリュックを掴み、抱えるようにして教室から走り去る。
そのはずみでアクキーの一つが外れて、霞の方向に転がる。
バンッッとアクキーを踏みつけニヤニヤとしながら靴をぐりぐりとめり込ませる。
ミシリと嫌な音がした。
「やめて……」
「はぁ? こんな安物いくらでも買えるでしょ」
「それが買えないんだ。それはゆめぇの誕生日記念のグッズだったんだ。もちろん数量限定で極小数の人しか買えなかった……」
「ちっ、もう喋りかけないで。このゴミは返すから。にしてもこいつ(ゆめ姫)の何が良いの? ただのブスじゃん」
「……っっ! 」
告白しただけでなんでここまで言われないといけないんだ。
振られた事ももちろん辛い。だけどそれよりもゆめ姫ちゃんを悪く言われたのが何よりも辛かった。
溢れ出る涙を堪えながら僕はダッシュでこの場を走り去った。
それからのことはよく覚えてない。
無我夢中で走り続けて家のアパートに辿り着くと、布団に潜り込み夜まで寝ていた……のだと思う。
脱ぎ捨てた学生服や、怒り任せで投げた霞との思い出の写真がそれを物語って……ん?
見間違えかなと思い目を擦ってもう一度見るが同じ。
脱ぎ捨てたはずの学生服は綺麗に畳まれており、割れた破片は片付けられ、ぐしゃぐしゃにして破いたはずの写真はセロハンテープでつなぎとめられていたのだ。
不思議に思いつつもそれ以上は気にとめず冷蔵庫に向かう。
よろよろと歩いていると、テーブルの上に何か置かれているのが見えた。
そこには弁当箱と共に手紙が添えられていた。
【りー君へ
お夕飯作っておいたから、気持ちが落ち着いたら食べてね。霞ちゃんと何かあったのかな? 泣きたい時は沢山泣いていいからね。後でいいから、さやの部屋に良かったらきてね
みか姉より 】
「みか姉……」
思わず声がこぼれでた。
みか姉は同じアパートに住んでる二つ年上の女の子だ。
両親が仕事の関係でどちらも滅多に家に帰ってこないのを気にかけてくれて、朝ごはんから学校での弁当、夜ご飯まで作ってくれている優しい人だ。
いつも作ってもらっていて申し訳ないと思っていたけど、本人曰く「好きでやってることだからりー君は気にしなくていいよ。なんなら食べてくれない方が悲しいよ〜! 」と言っていたのでご好意に甘えることにした。
けどしてもらってばかりじゃダメだから部屋の掃除だったり買い出しを手伝うようにしている。
妹のまりんは最近みか姉に料理を教わっていた。
と、
「ご馳走様でした」
ケチャップでハートマークが添えられたオムレツ、サラダ(これもドレッシングでハートマークが添えられている)、を完食し弁当箱を洗う。
「少しみか姉と喋りたいし今部屋行こうかな? 」
弁当箱も返さないと行けないからね。
そんなこんなで階段を降りて1番端の部屋のチャイムを押す。
しかしいくら待ってもみか姉は出てこない。自転車はあるから家には多分居るはずなんだけど……。
いつもチャイムなんて押さずに好きに入ってきて良いよとは言われてるが流石にそれは気が引けるから今まで入った試しはない。みか姉は躊躇なく入ってくるけど、そ、その……ね?これでも高校生だから気にしちゃうというかなんというか。
また後で来ようか迷っているとドタバタと音がして勢いよくドアが開いた。
「りー君!! ちょっと【お仕事】中で出るの遅くなっちゃった」
「タイミング悪くてごめん。そ、その弁当美味しかったよ。あと慰めてくれてありがとう」
「りー君のお部屋覗いたら部屋は真っ暗でめちゃくちゃに散らかってるし、りー君は泣いてるしで凄く心配したんだからね? ちょっと色々聞きたいし部屋入って入って! 」
「え、けどお仕事中なんじゃ……? 」
「りー君より大切な仕事なんてないよ」
「みか姉……」
ここまで大切に思っていてくれたなんて。
「それに私のお仕事は特殊だからね」
部屋に入り、みか姉の【仕事部屋】で二人向かいあう。
マイクやヘッドホンが置かれており、PCはデュアルモニターで、キーボードは虹色に光っている。いわゆるゲーミングキーボードだ。
この時キーボードにばかり気を取られずにモニターにも注目していればあんな事にはならなかっただろう。
「で、霞ちゃんと何があったの? もちろん言いたくなかったら言わなくていいからね? 」
「その実は……」
かくかくしかじか。
告白して振られたことや、大切にしてたアクキーを壊されたこと、沢山の暴言を吐かれたことなどを説明した。
「そっか、辛かったね」
そう言うと抱き寄せて頭を撫でてくれる。
「りー君があのゴ……こほん、霞ちゃんが好きだったのを私が一番知ってたから、りー君が今どれだけ辛いか手に取るように分かるよ。
だけど、いつまでも引きずってたら損しちゃうよ! 一緒にゲームでもして少しずつ忘れていこ……? 」
立ち上がり、棚からゲームソフトを取ろうとする。
「なんのゲームした…… え? 」
PCの画面を見て固まっているみか姉。
「どうしたの? 」
「ごめん……今の会話全部姫民の皆に聞かれてた……」
姫民……?
みか姉の口から出てきた意外な単語に僕は驚きを隠せなかった。
だって姫民は、僕が推してる大好きなVtuber、夢詠姫奈のリスナーの名称だからだ。
姫民に聞かれていた。
この言葉が示す意味はーーー
「みか姉ってゆめぇ!? 」
「そ、そうなるね」
ミュート忘れから始まったこの一件はネットで爆発的に話題を呼び自分自身もVtuberとしてデビューすることになり波乱万丈な生活を送ることになるのだが、この時はまだ知る由もなかった。
如何だったでしょうか?初めての現実恋愛作品で拙い部分もあると思いますが少しでも楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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