第23話 シフターズ、帽子屋を成敗する
「皆さん、ありがとうございました♪」
竜宮城で保護されたウーラ王子が太郎達に礼を言う。
「どういたしまして、しかし何でまたあんな目に?」
太郎が王子に尋ねる。
「帽子屋についても謎ですね、我らには敵でしかありませんが」
アカネが呟く。
「結局は奴らの好き勝手だよ! 悪党共の好き勝手のせいで、皆迷惑するんだ!」
キジーは結論を言う、とどのつまりはそう言う事でしかない。
「許しちゃいけませんね、悪党殺すべし!」
チグサも悪党に慈悲はなかった。
「まあ、成敗するのは当然として事の発端はお家の事で?」
ウコンが王子に尋ねる。
「はい、私は平穏に暮らしておりました。 ある時、我が城に帽子屋と言う男が商売に現れてから城の者達はおかしくなりました」
ウーラ王子が悲しい目をする。
「なるほど、乗っ取りか。 王子はおそらく、トヨさんの祝福があったから敵の術が及ばなかったんだろうな」
太郎は帽子屋が、神の力には及ばないが手強い妖魔であるのだろうと推測した。
「ええ、いつの間にか大臣となった帽子屋に父は傀儡にされてしまいそれまでは私とトヨ様の仲も認めていてくれたのですが掌を返して隣国の姫と婚約しろと言い出したので私は立場も国も捨てて逃げ出したのです!」
ウーラ王子が叫ぶ、思う所はあったらしい。
「う、ウーラたん♪ 私の事をそこまで、好き♪ お父上もお助けせねば!」
トヨがウーラ王子に感動して気合いを入れた。
「そこを帽子屋に捕らわれて、前回の事件に至ったのですな」
アカネが繋がりを納得すると、ウーラ王子が頷く。
「王子とトヨ様のお二人は両思いだったのですね、素敵です♪」
チグサがウーラ王子とトヨを見てうっとりと微笑む。
「さて、大将どうします? 王子はこのまま、ここでお婿になれば安全ですが?」
ウコンが太郎に港町の国を救うのかと尋ねる。
「決まっている、俺達で祭りをぶちかましてド派手に悪の野望をぶち壊すんだ♪」
太郎が皆に見たなと街の国を救うと宣言した。
「流石ボス♪ 人助けで大暴れだね♪」
可愛い顔だが暴れん坊なキジーが喜ぶ。
「では、世直しと参りましょう♪」
アカネも微笑む。
「その上で、王子とトヨさんの結婚式ですね♪」
チグサが言うと、ウーラ王子とトヨが照れる。
「王子、あなたは運が良い♪ 俺達が、悪党を退治して二人の結婚をド派手に盛り上げて見せましょう♪」
太郎もテンションが上がる。
「皆さん、私も協力します! 国を取り戻した上で、僕達を結婚させて下さい!」
「私も、全力で支援します~!」
「心得た、世の為人の為、スポンサーの幸せの為にブレイブシフターズ出陣だ♪」
太郎が軍配を上げれば、その場の皆が応とレスポンスした。
「なるほど、こいつはお家を悪党に乗っ取られ売り飛ばされた若君を救って姫と結ばせるって演目ができるね♪」
大桃号に戻った太郎達は、お園さんとこれまでの話をする。
「お園さん、ブレませんねえ♪」
ウコンがお園さんの胆力に感心する。
「あんた達のお陰で、大抵の事じゃ動じないよ♪ いつも通りに、牛車を動かせば良いんだね?」
お園さんが自分の役割を聞いて来たので太郎は頷いた。
「民草は敵の手で特に何もないのですかな?」
アカネがウーラ王子に尋ねた。
「はい、今の所は敵が傀儡にしたのは私達王家の周りのみのはずです」
ウーラ王子が答える。
「それじゃあ、ダイシフターで戦う時は結界張らないとね♪」
キジーが周囲への被害の配慮をした。
「そうですね、悪党を退治したらそのまま結婚式に行く予定ですから♪」
チグサが大まかな段取りを呟く。
「大将~♪ 私達皆もついでに結婚式を挙げるってのはどうです?」
ウコンが太郎に尋ねた。
「駄目だ! 結婚式と言うのはついでで挙げる物じゃない、俺達は俺達で計画を立ててヤチヨ村で俺達が主役の結婚式をド派手にぶち上げるんだ♪」
太郎がウコンや仲間達を見て宣言する。
「大将♪ 言質いただきましたよ♪」
ウコンがウキキと笑う。
「太郎殿とお仲間の皆様は、そう言う仲だったんですね」
ウーラ王子が驚く。
「太郎きゅん、ヤチヨちゃんに似て逞し過ぎますね」
ウーラが太郎を見て関心を抱いた。
太郎達ブレイブシフターズは、大桃号をステルスモードで浮上させて地上へ上る。
「王子とトヨさんは牛車で待機で、俺達が正気に戻した所で登場と」
「なるほど、でしたらこちらが出るタイミングはこういう感じでどうでしょう?」
太郎とウーラ王子が、偽者王子の結婚式へと乗り込む前の段取りを牛車内で行う。
「は~~~♪ 推しとダーリンが同時にいる空気、うまうま♪」
トヨは良い空気を吸っていた。
「ただいま~♪ 空から偵察して来たよ~♪」
雉に化けたキジーが牛車内に入り、ポンと煙を出して人型に戻る。
「ただいまですワン♪ 街の人達は特に何もされてなかったです♪」
チグサも犬から人型に戻り報告する。
「二人ともありがとう♪ じゃあ皆、今回は客演二人を追加で出陣だ♪」
太郎が声を上げる。
「「ブレイブ♪ ブレイブ♪ シフターズ♪」」
仲間達も掛け声を上げて、牛車は出発した。
太郎は法螺貝、アカネは太鼓、チグサは横笛、ウコンは鉦でキジ―は三味線と牛車を山車モードにして演奏している姿を人々に見せて旅芸人らしく振舞い進んで行く。
「何だ、東の方の芸人か?」
「随分楽しそうな曲だな、王様が呼んだんだろう」
街の住人達は、太郎達を旅芸人だと思いスルーした。
牛車が城門の前まで来ると、兵士達が止める。
「お前達、旅芸人だな? 今日はめでたい日だから王様が芸人を集めておられるのでお前達も入れ」
そう言う兵士の前にお園さんが出て来て、挨拶と礼を言い一行は小さい砦サイズの平城へと入って行く。
「あちゃ~? 参列者の皆様、皆呪いの帽子被ってますねえ」
「ならば、俺達の番で解呪の桃饅頭をばら撒くぞ」
「お任せ下さい♪」
「がんばるよ~♪」
「大きい広場、走り回りたいです♪」
城は小さくとも敷地は広い広場、中央に司祭らしき男性がシルクハット状の呪いの帽子を被せられて待機していた。
そんな中、城の方から黒いシルクハットを被ったウーラ王子とこちらも黒いシルクハットを被ったお姫様らしい女性が広場へとやって来た。
「その結婚、偽りだらけである!」
司祭の前にやってきた偽王子と花嫁、夫婦の誓いの言葉を二人が上げようとした所でシロシフターの叫び声が上がった。
「とうっ! 解呪の桃饅頭をお召し上がりなさい!」
「桃饅頭、ぶっぱなすよ~っ♪」
「ウキキ~♪ 分身してねじ込みまっす♪」
「桃饅頭、乱れ打ちですっ!」
「お前達もくらえっ、邪悪な妖魔には地獄の味だ♪」
現れたブレイブシフターズが次々と、桃饅頭を参列者達に強制的に食わせて呪いを解いて正気に戻して行く。
「……はっ! 私は一体何を?」
「父上っ! お助けに上がりました!」
父王が正気に戻った所で本物のウーラ王子が牛車から飛び出して駆けつける。
「ぶは~~っ! なんだこの卵男の靴下がご馳走だと思える味は?」
王子に化けていた帽子屋が正体を現す、花嫁の方もアヒルの妖魔の正体を現すがこちらは桃饅頭を食った効果で事切れていた。
「は~っはっは♪ 正体を現したな悪党、ブレイブシフターズが相手だ♪」
シロシフターが軍配を構えると、仲間達が瞬時に彼の下へ集結した。
「……くそっ! お前達が時計兎や笑い猫を殺した奴らか?」
帽子屋がブレイブシフターズを睨む。
「その通りだ、貴様らブラックテイルの企みは全て俺達が粉砕する♪」
「この世をあなた達に蹂躙させはしません!」
「……ブラックテイル、殺すべしです!」
「さあ、悪党退治の時間ですよ♪」
「お前らはキジ―達がぶっ殺してやる!」
ブレイブシフターズは構えを取った。
「はっはっは♪ ならば勝負と行こうじゃないか♪」
帽子屋はパイプを口に咥えて煙を吐き出して己の身を包む。
煙が晴れると、帽子屋は紳士服姿に白骨の仮面を被った怪人へと変身した。
「父上、こちらへ!」
ウーラ王子と父王が牛車へと避難すれば牛車は急発進で城から脱出した。
「よし、結界展開!」
シロシフターが叫ぶと、彼ら戦隊と帽子屋は何処とも知れぬ空間へと転移した。
「何だ、この山と田んぼの田舎臭い世界は?」
帽子屋が結界内の世界を馬鹿にする。
「我が村の風景を舐めるな悪党っ! カナボウダイナミック!」
アカシフターが帽子屋へと突進して、金色に輝く金棒を振るう!
「喰らうものか!」
帽子屋は口から黒煙を吐いて、回避する。
「キジーの鉄砲がドカンと行くよ、エアバースト!」
ミドシフターが巨大な空気の砲弾を発射し、帽子屋へと当てる。
「ぶはっ! おのれ、この鳥女~~っ!」
吹き飛ばされた帽子屋が立ち上がり、ステッキを召喚して杖から仕込み劍を抜き襲いてミドシフターへと襲いかかる。
「させません、シフター忍法クナイバインド!」
アオシフターが、苦無を帽子屋の影に突き刺して動きを止める。
「何っ? 動けん!」
「そこに追撃、クマデサンダーレイン♪」
キシフターが熊手を頭上に掲げて纏いの如く振り回せば、帽子屋の頭上に雨雲が現れて雷を落とす。
「うぎゃ~~~っ! こ、この私がろくに動けないだと?」
ボコボコにされて慌てる帽子屋。
「あ~っはっはっは♪ 忘れたか? あの時貴様に食わせた桃饅頭は地獄の味に加えて貴様ら悪党を弱体化させる効果もあるのだ♪」
シロシフターが笑う。
「おのれ~っ! 正義の味方が、毒を盛るとは恥を知れっ!」
帽子屋がどの口で抜かすのか叫ぶ。
「キジー達は、お前の正義の味方じゃないんだよ!」
「貴方達の筋書き通りに動きはしません!」
ミドシフターとアオシフターが叫び返す。
「その通りだ♪ 皆、武器を合わせろ♪ ブレイブバズーカだ♪」
シロシフターが叫ぶと仲間達が動き出す。
まずはシロシフターが軍配を地面に突き刺した。
「赤鬼の金棒が砲身です♪」
アカシフターが軍配の上に金棒を乗せる。
「苦無が照星、狙いは外しません!」
アオシフターが苦無を金棒にセットする。
「熊手でも支えますよ♪」
キシフターが熊手を突き刺して支え棒にする。
「引き金はキジ―の鉄砲だ♪」
最後にミドシフターの銃を合体させれば、完成だ。
「ブレイブバズーカ、レインボーバスター!」
シロシフターが引き金を引けば、虹色の光線が帽子屋へと発射される。
「げげ! この光はますい、止めてくれ!」
止めろと言っても止められない、レインボーバスターを喰らった帽子屋は跡形もなく消滅した。
「「ブレイブ♪ ブレイブ♪ シフターズ♪」」
全員での勝利の掛け声、彼らを祝う花火が上がる。
結界を解き、現実へと戻ってきたブレイブシフターズ。
彼らをトヨとウーラ王子、城にいた参列者達が出迎えた。
「ブレイブシフターズの皆さん、ありがとうございました♪」
「太郎きゅん、ありがとうね♪」
「変身勇者の皆様、ありがとうございました」
ウーラ王子とトヨ、そして王様から礼を言われたブレイブシフターズ。
この後行われたウーラ王子とトヨの結婚式でも、ブレイブシフターズは宴を盛り上げたのであった。




