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恋をしてみないかい  作者: たかさば


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10/21

くずかご

 やばいなあ、明日のテスト、自信がない。

 僕は半ばあきらめた気持ちで、古典の教科書を見つめていた。


 何度見てもわからない。

 なにがなんだかさっぱりだ。

 上一段活用ってなんだよ、枕草子がどうしたっていうんだよ。


 今はさあ、現代なんだから、昔の言葉なんか学ばなくてもいいだろう。

 めんどくさいなあ、もう追試でいいんだよ。

 でも母ちゃんがうるさそうだしな、ああ、メンドクサイ。


 とりあえず訳だけ暗記して、あとは選択問題に賭けるか。


 レポート用紙にテスト範囲の訳をつらつらと書いてゆく。

 三回くらい書いたら、まあ覚えるだろ、多分。


 はるはあけぼの・・・って!!!

 ()るはあけぼのって書いちゃったよ!!


 ああ、やる気が出ないと、一行目からひでえことになるなあ、こりゃ駄目だ。


 僕は、書き損じた一枚目をぐしゃぐしゃっと丸めて・・・くずかごに捨てようと。


 ・・・。


 くずかごは、勉強机から少し離れた、部屋のドア付近にある。


 …そうだ、この紙があのくずかごに入ったら。

 何の気なしに、丸めた紙を、くずかごに向かって放り投げた。


「このゴミがくずかごに入ったら明日の古典のテスト、100点!!!」


 ・・・ぽすっ!!!

 かなりの距離があるというのに、丸めた紙は実にスマートにくずかごの中にインした。

 それはもう、奇跡的にだ!!!


「よっしゃ!!明日のテストクリア!!!」

「こりゃ!!!勝手な事を言うでない!!!!」


 く、くずかごの中から!!!

 じょ、女子ぃイイイイ?!


「ちょ、なんだお前は!!!」

「なんだとは失敬なやつじゃ!!!人の頭に紙くずをぶつけておいてなんという狼藉!!!」


 小さな女子は、あっという間に僕のところに飛んできて、何やらプンプンしている。

 丸めたレポート用紙を丁寧に伸ばして、くるくる巻いて…何やってんだ。


 パシ!パシパシッ!!!


「いきなり何すんだよ!!痛くないけどヒドイじゃないか!!叩くな!!!」

「うるさい小童(こわっぱ)め!!正義の鉄槌、受けるがよい!!!」


 ちょ!!!かなりうっとおしいな、なんちゅー暴力的な女子だ!!!こわっぱってそりゃお前の方だろ!!


「ぬしがおかしな願いをするで、わしは願いを叶えんといかんくなってしまったではないか!!」

「なに、君が助けてくれるの、そりゃありがたい!」


 渡りに船とはこのことか!


「ホレ!!わしが見てやるから、はよ勉強せい!!!」

「え?!テスト中に答え教えてくれるとかそういう奴じゃないの!!出る問題とその答えを教えてくれるんじゃないの!!」


「そんな都合のいい展開あらすか!!ほれ、朝まであと6時間しかないでな、とっととやるぞ!!!」


 僕は超スパルタ教師のせいで…寝ることも叶わず!!!完全徹夜というものを、初めて体験することになってだな!!!もうさ、ひどいんだよ、ちょっと気を抜くとレポート用紙の棒でぱっしぱっしと叩かれてさ、ちょっと訳間違えるとレポート用紙一枚にみっちり同じ文章書かされたりさ!!!


「うーん、女房が、局がー、まいりたまへるなりける・・・うーん・・・???」

「よし…これだけやれば満点は取れるはずじゃ!!ではさらばじゃ!!!」


 少女は満足そうに腕を組んで、ぽすんと消えた。

 散乱するレポート用紙の上に、少女が愛用した手作りの鉄槌だけが残されている。


「く、クソ…数学と美術の勉強してねえぞ…!!!」


 僕はさんざん頭上に下ろされた鉄槌を願い事もせずゴミ箱に突っ込み、赤い目を擦りながら一階のキッチンに行き、朝食をもそもそ食べ!!テストを受ける羽目になってだな!!!!


 あまりにも眠くて、テスト中見直ししないで、余り時間に睡眠を取らざるを得なくてだな!!!ツレとテスト明けのカラオケにもいかず!家に帰ってひたすら寝て!!!起きたら次の日の朝だったとかさ!!!テスト最終日じゃなかったら僕は大変なことになっていたに違いない!!!!


 もう二度と願い事なんか…しないぞ!!!!




 後日返ってきたテストは、古典が100点、数学が79点、美術が80点。


「珍しいな、お前が数学80点きるなんて。」

「…いろいろと理由があるんだよ。」


 僕は!!!数学が得意で!!!いつも満点かクラストップの点数で!!!…返ってきた答案には、いわゆるケアレスミスが三つ。…見直しさえしてたら満点だったはずのこの答案、答案!!!!


 後悔がハンパない、僕は、僕は僕は…!!!


 怒り心頭で家に帰り、満点の答案と79点の答案と80点の答案を丸めてくずかごに突っ込んだ。


「なんじゃい!!!せっかくの成果を気軽に捨てるでない!!!」


 !!!あのくずかご女子が!!!丸めた答案を伸ばし伸ばし…現れたぞ!!!


「ちょ!!お前のせいでだな!!!俺の得意教科の数学が!!!なんてことしてくれたんだ!!!」

「他の教科の事は知らん!!わしは古典のみ頼まれたのじゃ!!」


 また丁寧に三枚の答案を伸ばしてだな、クルリと丸めて…鉄槌作りやがった!!!


「僕は数学科希望なんだぞ!!数学を得意としていつも満点とってる神童として名高いんだぞ?!とんだ汚点を付けてくれたな!!」


 パシ!パシパシッ!!!

 軽くて痛くない、うっとおしいだけの鉄槌!鉄槌!!!!


「何を言う!!得意と豪語するならば、どんな状況下でも満点を取れるだけの能力があるはずじゃ!!たかが睡眠不足で点が下がるというならばそこまでたいした能力でもなかったのじゃ!!ただの数学の点が高い一般人ごときが得意を振り翳すでない!!!」

「グぬぬ…!!!痛いとこついてくんなあ、くそぅ…。」


「いいか!!もうあほな願い事はしてはならんぞ!!!ちったあ自分で努力せい!!」

「わかったよ!!!今回はどうもありがとうございました!!!」


 それから僕はだな!!自分で地道に努力することを覚えてだな!!!



 きっちり勉強に励んで、念願の数学科に入学し!!!

 きっちり整数論を極めて!ブール代数を操り!


 やけに努力しがちな、真面目な人間として、企業でひたすら研究を重ねる、日々、日々、日々、日々…。


 一人暮らしも三年目に入り、やけにこう…貧弱になってきてしまった。

 学生時代にバスケ部でじたばたしてたのが嘘みたいに動かなくなってだな。

 動かないから腹も減らずに、食う量も減ってどんどん体重が減ってきやがってだな。

 日中は会社で実験ばかりしてるから日に当たることもなく、やけに色白になってきたし、重いもんを持たないからか筋力も衰えてきてだな。


 ・・・。


 これはまずいぞ、ただでさえ出会いのない職場、さらには頼りがいのなさそうな貧弱な体、しかも口下手でクセの強い理系男子!!!ちょっと待て、このままでは僕は…詰む!!!


 慌てた僕は、今はやりの筋トレに手を出すことにした。


 自宅でできるトレーニングを一通りやってみようと、簡単なトレーニングセットを通販で買った。

 外にランニングに行けるような体力がないのはもちろん、出歩く気力すらわかない現状を何とかして打破したいと思ったんだ。


 かくして届いた、トレーニングセット。

 ハンドグリップ、ダンベル、バーベルが入っている箱が重いのなんの。・・・配達員が置いてった位置から部屋に持ち込めないじゃないか。まだまだこれを使ってトレーニングなんてできそうにないな。ちょっと待て、これはこの貧弱なハンドグリップから始めなきゃいけないんじゃないのか。


 マッチョへの道は遠いなあ、そう思いながらぽてぽてと歩いてパソコンの前に座り、貧弱なハンドグリップを握ると。


 ぺき。


 ・・・?!

 はあ?!何これ!!!握ったとたんに、オレンジ色のプラスチック部分が折れて!!ちょ、何これ、プラスチックのグリップの頭の部分しかスプリングが入ってない、なんちゅー粗悪品だ!!!


 一度も筋肉の増強に役立たないごみを、僕は怒り心頭でくずかごに。


 ・・・。


 くずかごは、パソコンデスクから少し離れた、部屋の入口付近にある。

 昔から愛用している、年期の入った、あのくずかごだ。


 …そうだ、このごみがあのくずかごに入ったら。

 何の気なしに、壊れたハンドグリップを、くずかごに向かって放り投げた。


「このゴミがくずかごに入ったら、僕はマッチョになれる!!!」


 ・・・がすんっ!!!


 かなりの距離があるというのに、壊れたハンドグリップは実にスマートにくずかごの中にインした。

 それはもう、奇跡的にだ!!!


「よっしゃ!!マッチョ確定!!!」

「こりゃ!!!勝手な事を言うでない!!!!いてて…!!!」


 く、くずかごの中から!!!

 じょ、女子ぃイイイイ!!あの時と変わってない!いや、頭にでっかいたんこぶがある!!


「ちょ、お前は!!!」

「失敬なやつじゃ!!!人の頭にこんなもんをぶつけておいてなんという狼藉!!!・・・ひい、こげなでかいたんこぶが!!!」


 小さな女子は、あっという間に僕のところに飛んできて、ずいぶんプンプンしている。

 壊れたハンドグリップを両手でバーベルみたいに持ち上げて…何やってんだ。


 ガシ!バシボコッ!!!


「いきなり何すんだよ!!痛いじゃないか!!叩くな!!!」

「うるさい!か弱きわしの頭上にたんこぶなど作りおってからに!!正義の鉄槌、受けるがよい!!!」


 ちょ!!!なんちゅー暴力的な女子だ!!!…そりゃたんこぶになっちゃったのは悪かったけども!!


 怒り狂う女子をなだめつつ、冷えピタをたんこぶに貼ってやる。


「ぬしがおかしな願いをするで、わしは願いを叶えんといかんくなってしまったではないか!!」

「なに、また君が助けてくれるの、そりゃありがたい!」


 渡りに船とはこのことか!


「ホレ!!わしが見てやるから、はよ筋トレせい!!!」

「え?!すぐに筋肉付けてくれるとかそういう奴じゃないの!!」


「そんな都合のいい展開あらすか!!ほれ、朝まであと10時間しかないでな、とっととやるぞ!!!」


 しまった、そういえばこの女子は…相当なスパルタ式だった。


 僕は超スパルタトレーナーのせいで…弱音を吐くことも叶わず!!!完全燃焼というものを、初めて体験することになってだな!!!もうさ、ひどいんだよ、ちょっと気を抜くと壊れたハンドグリップでがっしがっしと叩かれてさ、ちょっと休むと腹の上でボスボス飛び跳ねられてさ!!!


「うーん、腹筋腹斜筋広背筋に僧帽筋・・・うーん・・・???」

「よし…これだけやれば筋肉痛が起きるはずじゃ!!ではさらばじゃ!!!」


 少女は満足そうに腕を組んで、ぽすんと消えた。

 何もない部屋の床の上に、少女が愛用した壊れた鉄槌だけが残されている。


「く、クソ…こんなんで明日会社行けんのかよ…!!!」


 僕は鉄槌を拾う気力すらわかず、そのまま放置してだな、震える体でキッチンに行き、牛乳を飲んで風呂に入ってだな!!!!次の日きしむ体で会社に行ってだな!!!


 あまりにも筋肉痛がひどくて、休み時間に湿布を買いに行かざるを得なくてだな!!!同僚にくさいと言われ!家に帰ってひたすら寝ようとおもっていたのに!!!


「帰ってきたな!!!よし、昨日の続きじゃ!!!」


 …勘弁してくれ!!!!




 毎日毎日、地道な自重トレーニングが続いた。クランチ、ツイストクランチ、レッグレイズ、スクワット、プッシュアップ、ランジ、ヒップリフト・・・。


「なんか君ずいぶん顔色良くなったね。」

「…いろいろと理由があるんです。」


 いつの間にやらずいぶん鍛えられた僕は、やけに食欲が増し、体重が増えた。

 毎日毎日、地道なトレーニングを続けた効果がハンパない。

 ダンベルもバーベルも使わない、ただの自重トレーニングだけで結構効果って出るもんなんだなあ。


 ・・・というのも。

 すぐ横で最初から最後まで目を光らせている女子の目がね?!くじけそうになった日もあったが、気を抜くとすぐに鉄槌が飛んでくるから、常に気を張っているというかなんというか。


 まあ、でも、筋肉にいい食事なんかも調べてくれてさ、女子のメモ書きのものを買いに行って、調理をしたりするようになって、僕の生活はずいぶん変わったんだな。まさかこの僕が自炊をするようになろうとはねえ…。


「もうそろそろバーベルも使えるのではないかえ。」


 レッグレイズをする僕の腹の上で、女子が壊れた鉄槌を片手に進言する。


「どうだろう、一回箱から出してみるか。」

「今のぬしなら、箱から出せようて。」


 貧弱だった僕はだな、ワンセット20キロのバーバルセットの箱が持ち上げられなくてだな…お、持てる、持てるぞ!!!筋トレセットの入った箱を持ち上げることができる事を確認した僕は、半年ぶりに筋トレセットの箱を開け、ようやく中身を取り出す!!!ええと、5キロが二枚、2.5キロが二枚、1.25キロが二枚に、1キロダンベルが二つ、3キロダンベルが二つと。


「よし、これでよりディープな筋トレができる!」


 うれしくなった僕は、さっそくバーベルのパイプを組み立て、持ち上げようと…。


「たわけ!!説明書も読まずに組むでない!そもそもまずはバーのみを使って動きを体に叩きこまねばならん!基本中の基本、筋トレの基礎を無視してはいかん!!!」

「グぬぬ…!!!痛いとこついてくんなあ、くそぅ…。」


 やけに筋トレに詳しい女子は、相当口うるさいんだよなあ。ちょっとぐらい持ちたいじゃん。せっかく持てるようになったんだし。


 僕は、1.25キロのプレートを二枚、バーに装着して軽々と持ち上げ…!!!


 ガッ、ズベキョッ!!!!!!!!!!!!!!


「う、うわああああ!!!なんてことするのじゃ!!!わし!!わしのクズ、クズクズくずかごェ…!」

「ご、ごめん・・・。」


 説明書に目を通すことなく、適当にバーにプレートを差し込んで持ち上げた僕は…プレート止めを、装着していなかったのだ。結果、右側の1.25キロのプレートが外れてしまい…部屋の入り口にあったくずかごの真上に落下し。


 見るも無残な、割れてしまった、くずかご。


「ああ…わし、わしの、うう…。これでは、もう、わしは。まだ、願いも、叶えておらんのに…。」


 ぼったぼったと、大粒の涙を流す、女子がいる。


「直したら、帰れる?」

「無理じゃ…わしは、力も、足りんで…神として、ここには、向こうには、おられまいて…帰れまいて…。」


 あんなにも、僕に鉄槌を下した女子が、こんなにも、気弱に、小ぢんまりと…。


「…ここにいたらいいじゃないか。」

「この姿を維持する力が、ないのじゃ…。くずかごがないと、無理なのじゃ…。」


 …今にも、消えてしまいそうで。


「神をやめたらいいんじゃないの。」

「神をやめたら、わしはただの人になってしまうのじゃ…。」


 …なんだ、人になったら消えないのか。


「人になればいいんだよ…ここで僕をマッチョに鍛え上げてくれるんだろ?」

「いいのかい。」




 神をやめた女子は、僕と同じ大きさになって、共に体を鍛えるようになった。


 毎日一緒に筋トレをして。

 毎日一緒にウォーキングをして。

 毎日一緒にプロテインを飲んで。

 毎日一緒に高蛋白質料理を作って食べて。


 二人で大会に出場して。

 二人で全国を回って。


 二人で、ケーキに入刀したり。

 二人で、いつも、一緒に過ごして。


 僕は、ずいぶん屈強な体を持て余しつつ、会社で研究をし、実験をし、結果を残して退職した。

 穏やかに、女子とともに、健康的な生活を楽しんでいたけれど。


「おぬしの悪行に鉄槌を下すものがおらんくなってしまうのう…。」


 一緒にずいぶん、筋肉をつけたはずなのに…女子は、やけに細くなってしまって、ベッドの上で、僕を見つめている。


「…僕がいつ悪いことをしたっていうんだい。」


「ぬしは、気を抜くと、すぐにズルをしようとするでな…。きちんと、最後まで、生きるのじゃ…。いいな…?」


 僕は、ずいぶん細くなった妻の手をしっかり握って。


「わかったよ。」




 妻と共に鍛えた筋肉は、ずいぶん貧弱になってしまった。


 毎日の日課のウォーキングが、辛くなってきた。

 …今日は雨だから、家で軽くトレーニングでもしておこうかな。


 ベッドの上で、力なく…新品のハンドグリップを握る。

 一番軽い、女性用のハンドグリップだけど…それすら、もう、僕には。


 部屋の入り口には、ゴミ箱がある。

 …そうだ、このごみ(僕には使えない物)があのくずかごに入ったら。

 何の気なしに、ハンドグリップを、くずかごに向かって放り投げた。


「これが入ったら…明日は、ウォーキングに、いける!」


 ・・・コンっ!!!


 僕の投げた、ハンドグリップは…ごみ箱に入らず、床の上に、落ちた。

 ・・・ああ、もう、僕には、力が。


「こりゃ!!!横着をするでない!ゴミはゴミ箱に入れに行かんか!!!」

「…はは、歩くのに…疲れちゃってさ。」


 やけに体が、重いんだ。

 僕は、腰かけていた、ベッドに…横になった。

 仰向けになって、天井を見る僕の目に、女子が映りこんでくる。


「ずいぶん、貧弱になってしまったのう。…鍛え直しじゃ。」

「そうかい・・・?じゃあ、レッグレイズでも、やろうか?」


 僕は、重くてたまらない足を、思い切り上に引き上げようと。

 …重くて、足が、持ち上がら・・・。


 重い、重い体が、ふいに軽くなり。


「…そうじゃ、その勢いじゃ!!」

「…これくらい勢いよくあげないと…鉄槌が飛んできちゃうからなあ。」


 女子は、いつの間にか、妻の大きさになって、僕に手を、差し出した。


「鉄槌は必要ないで、もう下らんよ…さあ、一緒に、走りに行こう?」

「久々にたんこぶができると思っていたんだけどな。」



 僕は、愛する妻の手を取って。



 足音ひとつ立てずに。



 部屋から、駆け出した。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 10/10 ・昨日忘れてたやつー!! ・うおおおお ・いつものパターンなのに色々と侵食されてるー!! [気になる点] ダンベルは重いという真理を学ぶことができましてね。しゅごい [一言]…
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