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7.23.魔術詠唱場所


 夜風は生ぬるい。

 早く冷房のかかった部屋に帰りたいものだ。

 手に持った真珠が冷たさを増していく。


 ここで詠唱をするのはあまり良くない。

 人が完全に来ない場所が好ましいが……そうなると神社が良いだろうか。

 この辺だと神社は何処にあるのかと、その辺に座って確かめる。

 どうやら少し離れた場所にあるらしい。

 とは言え徒歩でも行ける距離だ。

 そちらに向かう事にして、足を運んでいく。


 すると、少し離れた場所から足音が聞こえてきた。

 誰かが走ってきている様だ。

 見てみると……。


「ありゃ」

「八樫さーん!」

「でぇー……ぜぁー……!」


 万巳と小間井が走ってきていた。

 万巳はまだまだ余裕そうだが、小間井は既にヨタヨタとしており、何とか万巳に食いついている状態だ。

 そこまで無理しなくてもいいのにと、困った顔をする。


 とは言え走ってきて疲れたのだろう。

 立ち止まると膝に手を置いて肩で息をしていた。


 しかし妙だ。

 小間井は車が使えたはずなのに、どうして使わなかったのだろう。

 そんなに慌てていたのだろうか?


「八樫さん! まだ大丈夫だと思いますから盗みなんてやめましょう!」

「そ、そうっはぁー……で、ですよ……ぜぇー、ぜぇー……」

「え、なに。わざわざ止めるために走ってきてくれたのかい?」

「そうです!」

「はは、悪いね……。でも何とかなったよ」

「へ?」


 八樫は手に持っていた真珠を二人に見せる。

 それを見て二人は固まってしまったが、それに付け加えるようにいして八樫は説明した。


「万巳君。黒い子供、知ってる?」

「え? ……あ、合ってるかどうかは分かりませんが、一度病院で……」

「フヘヘ、ハヘヘッとか気持ち悪い笑い方する子供だよ」

「あ! 知ってます!!」

「じゃあ話が早い。そいつから貰えたよ」


 今八樫が言ったことは、完全な嘘である。

 だが万巳にはその説明で十分だったようで、なんだかほっとしていた。


「え、何? どういうこと……?」

「あー、簡単に言うと、八樫さん盗んでないみたいです」

「そうなの……? なーんだー、走ってきて損しっげっほげほげほ……」

「無理したんですねー……」


 万巳は小間井の背中をさすっている。


 八樫はあの二人の話を完全に信じたわけではないが、面倒ごとを回避できるのであればそれに越したことはないだろうと思って、今回は嘘をついた。

 自分でいうのもなんだが、間違ったことはしていない。

 もし自分が留置所などに入った場合、その期間はこの怪異事件を解決できなくなる。

 こんな大掛かりな仕事が舞い込むようであれば、嫌でも出て行かなければならなくなるだろう。

 であれば、自由に仕事ができるこの生活を続けたい。


 少なからず犯行に手を染めたことは事実ではあるが、一度や二度ではないのだ。

 やったとしても、それは必要不可欠な事であり、人を傷つけるようなことはしていない。

 家宅捜査くらいだ。


 だが今回は三人に行くと教えてしまったことが失敗だった。

 次回からは一人でひっそり行くことにしよう。


「さ、移動するぞ」

「何処にですか?」

「とりあえず、空ができるだけ近い場所がいいね。神社があったから、そこに向かおうとおもう」

「うぇー!? 神社って事は階段あるじゃないですかー!」

「行くよー」

「ちょーっとー!」


 小間井が何だか後ろで騒いでいるが、それは無視する。

 ゆっくり歩いてきてくれればそれでいい。


 実際、まだ時間はある。

 今日の内に顕現するということはないだろうが、今日でこの事件に終止符を打つ。

 三人は少しだけ涼しくなった夜道を歩いていく。


 遠く離れた位置から、虚ろな表情をしてついて来る警備員の姿には、誰も気が付かなかった。

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