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76. 『MECHANISM』
「ケルに任せてって言った癖に、私だって人任せだなぁ」
機体を引き摺りながら、ステラは目的の場所へ辿りつく。
穴が空いている箇所に手を突っ込み、中の配線諸共何かをちぎりながら引き出した。
その手の中には、血のような色をしたひとつのコア。
手を握り、対象に接続。機能停止中の機体を自身の一部として操作するための行為。本来ならプロテクトによって弾かれるが、修復に全機能を注いでいる今、外部からの接続を弾く余力もない。
胸部装甲が開き、台座が現れる。
「アールムが借りてたもの……ちゃんと、返すね」
その上にステラはそっとコアを置いた。
台座が下がり、開いていた装甲は切れ目なく閉じる。
目的を果たしたステラは、最後の力を振り絞って仰向けになった。
雲が流れている。
遠くを鳥が飛んでいくのが見えた。
この世界はまだ生きている。
ステラはそっと目を閉じた。
「お願い、ライン」




