勇者は苦しい顔をしてはいけない
俺は水嶋守コードネーム「クラブ」。12歳だ。
俺は勇者だ。俺の街は数年前に魔物に襲われて王様でさえもが貧乏暮らし、畑で採れる少量の食べ物で生きていくのがやっとだ。
そんな中、奪われた村の財産を取り返しに、そして悪の根源を断つために街では勇者が集められた。
俺達が今から行くのは街を出て北西の方角にあるゼラル洞窟。
俺達というのは間違ってはない。当然洞窟に行くには俺だけではない。もう一人は、コードネーム「ジーク」俺と同い年。
これから二人で洞窟へ行く。行く前に情報やから聞いた話だと、ゼラル洞窟はそう難しい洞窟ではないらしい。ほとんどの勇者が死なず、しかも無傷で帰ってくるらしい。でも、帰ってくる人のほとんどが瞬間移動の魔法を使い協会に戻ってきて、しかもその人達は服を無くし、立つこともできないくらいに力が抜けているらしい。神父は最初は魔物に攻撃されて服が破れ、魔法によって骨抜きにされたかと思ったらしいが、魔法の効果が切れる一ヶ月よりとても早い数分で力が戻り、HPを見てもMPを見ても共にMAXで攻撃された形跡も一切ないらしい。だから特殊な攻撃をする魔物がいると睨んでる。
まあ、どちらにせよ死ぬことがないのならゴールドも経験値も落とすことはないと案外気楽だ。
さぁ、もうすぐ洞窟だ。装備も完璧、念のために用意した薬草もある。
これから向かう洞窟からすればチーととも言えるこの準備でもし敵に殺されることがあれば恥さらしだ。
さあ行こう!
歩いて数分、ゼラル洞窟についた。中は異様なほど静かだ。
さらにしばらく歩くと宝箱が見つかった。注意して開けてみると中には一人の少年がいた。
数ヶ月前この洞窟に入ってから行方不明となっている少年だ。
彼は装備、衣類、武器を全て奪い取られて宝箱の中で拘束させられてくすぐられている。
魔法がかかってあるのか、声は聞こえないし彼もこっちへ気付いていないようだ。
???「察したかい?」
後ろから声が聞こえたので振り返ると、そこには少年の形をしたスライムが立っていた」
スライム「気づいたかい? この洞窟の秘密」
俺「秘密?」
スライム「勘の鈍いやつだ。無理にでもわからせてやる。戦闘開始だ」
クラブのターン。スキル、重斬り。
ジークのターン。魔法、サンダー。
スライム「おやおや、そんんなもんかい。」
スライムのターン。クラブを大の字に拘束。
サンダーで攻撃。 攻撃が失敗した。
クラブのターン。クラブは拘束されている。
ジークのターン。クラブを防御。
スライム「そんなことしても無駄だよ」
スライムのターン。ジークを大の字に拘束。
クラブのターン。クラブは拘束されている。
ジークのターン。ジークは拘束されている。
スライムのターン。くすぐり攻め。
スライム「始まったよ。うちの洞窟では攻撃は全てくすぐりでするのさ。だからこの洞窟でダメージを受けたやつも死んだやつもいないってことさ」
俺「くっそ、くすぐりなんて」
ジーク「絶対に耐えてやる」
スライム「じゃあくすぐりの準備だ」
スライムは魔法を唱えた。
クラブとジークの服が全て破れた。
スライム「さあ、これでどうだ」
スライムの体から手が伸びて俺とジークの脇や横腹をくすぐり始めた。
俺「ひやぁ!あはは…ひひっ…こ…こんなの…ハハッ!…耐えて」
ジーク「くひひひっ…全然…大丈夫…ヒヒっ!」
スライム「なんだ? やけに強気だな。じゃあこれでどうだ」
スライムの手はさらに伸びて、足の裏や股までもくすぐり始めた。
俺「ははは!だめぇっ!くすぐったいい!ははは!」
ジーク「ひははは!ふえっちゃっやだ!ははは!」
スライム「これだけ増えただけでそれほど弱気になるとはな。さらに増やしてやる」
さらに十数本もの手が伸びてきて、身体中のいろいろなところをくすぐり始めた。
俺「あはははははは!もうだめえええ!やめでえええ!あはははははははっっはっはははは!」
ジーク「あひゃはあああああはははは!ゆるじでええええええええ!やめでぐだざいいいい!ははは!へへはあははははははは!」
スライム「やめてとはかなり弱気だな。じゃあこうしよう。お前の村の場所を教えろ。先に教えた方にしばらく休憩させてやろう。」
俺「あはははは!そんなこと言ってたまるかああははははは!」
スライム「そんな顔くしゃくしゃにして言ってもカッコよくないよー」
ジーク「わがっだ!いいますからああああ!やめでええええああははははははへへへはははは!ここから南東に行ったとこですううう!あはははは!ゃめでよおおおおお!」
スライム「じゃあお前は休憩だな。言わなかったお前にはこっちでやってた分も加えてやるか」
今だけでも精一杯なのに、さらに増えるとなっては…
俺「ぎゃははははははははははははははははははは!だめえええええええだめだっってえええええええ!ああはあははは!ぐるじいいいいいいいいひひっはははは!」
意識が遠のいていく。
俺「はっはは!…もうむりい…あはは!」
意識は完全に閉じた。
俺は目が覚めた。一体どれだけ寝てたのだろうか。
周りからはたくさんの少年の笑い声が聞こえる。目に見える全員がしばらく見ていない顔だった。
俺は全てを悟った。
俺「ははははははははははははははは!やめでよおおおおおおお!もうやらああああはははははは!」