無知が食らったその色は
「ねぇ、私たちが出会って今日で何日目かね」
黒髪に少しの銀色が混ざった少女が尋ねた。
「……知らない」
黒髪に少しの青色が混ざった少女が答えた。
「ふふ、100日目よ。それはとてもすごいことなの。異種族がこうして互いの毒に干渉して生きた事例では最長よ」
銀色の混ざった少女は青色の混ざった少女の手を取り微笑んだ。
「そうだね」と言った彼女の目からは青い涙が他愛もなく流れ続けている。
「もう、泣かないの。あなたと会えてとても楽しかったわ。一緒にお花畑で遊んだし、狩りもしたね。なにより、あなたと過ごせたのが一番の思い出だわ」
「ごめんね、ごめんね、私の毒が強すぎるばかりに、ごめんね……」
「ううん、これはあなたのせいじゃない。私があなたの愛を抱えられなかっただけ」
私の目にも銀色の涙があふれてきた。
「でも、でも、私には……」
「私はもう長くないし、たとえ私がやったとしても、あなたが大きすぎて抱えきらないわ」
彼女は静かに頷いた。
「私はいなくはならないわ。むしろあなたと一緒になれるのだもの。これからもずっと一緒……」
彼女は震える手に持つ短刀を私の首元に近づけた。
カタカタと震える短刀と手をそっと握ってあげた。
「1の魂はあなたへ。2の魂は地へ。3の魂は空へ。4の魂は小鳥になって、あなたのもとにまた現れて素敵なお歌を歌ってあげる。だからあなたはめげずに生きるんだよ――」
「う……ん……。ありがとう、そして、さよなら私の愛した人」
二人は最後に唇を交わらせた。
彼女の涙が私の頬を伝い、私の涙と混ざって青く光沢のある涙を作った。
――次第にベッドに横たわる子の髪は黒に染まり、涙は無色透明になっていった。
静かな森の奥で生涯たった一人だった青い髪の女の子、その目から流れる青く光沢のある雫が頬を濡らした。