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ブロローグ

大阪の町の真ん中に南北に細長い台地がある。


北は大阪城から南は天王寺近辺まで大阪の町一番の高台になっていて、それを上町台地と呼んでいた。


その上町台地からから西へ緩やかな坂を下りきった場所にロマンという店があった。


ロマンは食事もアルコールも出す喫茶店で、昼食時はランチもあり、近くの会社などに出前もやっていた。


その店の、斜めになっている歩道から一段降りた入り口のドアを開け、僕と浜岡さんは中へ入っていった。


その店があるのは昔から知っていたが入ったことは一二度しかなく、二人で一緒に行くのは始めてだった。


浜岡さんと僕は本町のレストランで働いていて、僕がホール係から喫茶調理へ移り浜岡さんの下で働くようになってから無口な浜岡さんと会話をするようになった。


そして住んでいる所が近くだった事がわかってから親密になっていった。


そんなある日


「山下君、帰りに家の近くの喫茶店行けへんか?」


「ええ。いいですよ。何処ですか?」


「ロマンっていう店やねんけど知ってるかな」


「いやぁ、知りませんねぇ」


「まぁ、行ってみたら知ってるかもわかれへんな」


「そうですね」


そう言って僕達はロマンに来たのだった。


店に入ると左右に四人がけのテーブルが二つと二人がけのテーブルが一つ並んでいて、一段高くなっている奥のスペースには手前と壁際に二人がけのテーブルがあり右にカウンターと厨房があった。


いつも来る常連客は奥のスペースのカウンターやテーブル席にいて、一見の客や雑誌を読みながら寛いだりする客は、段の手前の席に座っていた。


店に入った浜岡さんは、段のそばの右側の、微妙な席に座った。


普段は酒も飲まず人ともあまりしゃべらない浜岡さんにとって、常連達の話も良く聞こえマスターやママに話しかけやすいこの席が一番寛げるのだった。


僕は浜岡さんの向かいの席に座った。


すぐにウェイトレスの女の子がやってきた。


「慎ちゃんいらっしゃい」


そう言って水を置いた女の子の顔を見て僕は驚いた。


彼女も、目を丸くして僕を見ていた。


彼女はミカちゃんと云う名前だった。


僕はミカちゃんに言った。


「ミカちゃんこの店にいてんの?白樺はやめたん?」


「うん。ここのマスターに、うち来ぇへんか?って誘われてん」


「そやったんや」


「なんや。自分ら知り合いやったんかいな」


浜岡さんが言った。


「うん。うちが白樺にいてる時のお客さんやってん。慎ちゃんこそ、この人と知り合いやったん?」


「うん。今いてるレストランで一緒に働いてんねん」


「へぇー、びっくりしたわ」


「俺かてびっくりしたわ」


三人は笑いあった。


それから僕と浜岡さんは仕事が終わってから毎日ロマンに行くようになった。

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