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Scarlet seasons  作者: 有河 さくら
第一章
6/8

ようこそやまびこへ!

 わたしはそとのせかいをみている。ここからだとよくみえる。

そらをとぶトリ。

しゅじんとでかけているイヌ。

そとをきままにあるくネコたち。


 このそとのせかいにわたしはあこがれている......

そとにあるがっこう。

たくさんのひとたちとあそぶひび。

ほしいものがたくさんあるおおきなおうち。

こうえんにじんじゃにしょうてんがい、ほかにもいきたいとこがたくさん。


『はやくかえってこないかな、ごしゅじんさま......』


 でも、いちばんはごしゅじんさまのちかくにいたいの......

だから、そとにでるのはがまん! ごしゅじんさまからたくさんのはなしをきけるから。

 次の休みの事だ、俺はある喫茶店に来ていた。

 俺の先輩が経営しているやまびこと言う和風喫茶である。

 店内はカウンター席とテーブル席があり、テーブル席は会議をしたりするのにうってつけだ。

というのも。この喫茶店を知っている人はほとんど居ないため、知っている人はだいたい貸切状態にする事ができる。


 理由はメインの客が観光客と学生であること。

そのうちの観光客も紅葉狩りのこの季節、更に四季祭が重なった時以外は訪れることは九割方無いので。

四季祭が終わったあとのこの場所は平和なものである。


 しかし、俺たち学生にとってはありがたい穴場であり気を落ち着けれる場所ではあるのだが。

普通に考えれば経営出来る事が不思議であり、どう考えても赤字営業である。


 どんな風に生計を立てて店を存続させているのかというのは、俺たち学生にとっては都市伝説で色々と例が挙げられている。


 例えば喫茶店の元店主、水瀬蒼人(みなせあおと)さんは裏の顔を持っており、内密に危ない仕事を受けていると言う噂がある。

 そう言われる由来としては昔は町一番の荒くれ者であり、この辺では知らない人が居ないほどの不良であったことらしい。


 今では落ち着いては居るがもしかしたらというのは囁かれている。

 極道や麻薬取引、他には殺し屋などと、とんでもない事を言っている学生も居る。


 ついでに俺の親父も名の知れた不良だったらしく、水瀬さんとはライバル関係にあったらしい。

 今では、お互いに飲んだりするくらい仲良しである。


 昔の事が関係しているのかは不明だが店の中には龍の掛け軸や鬼の置物など少し怖い装飾品が飾られている。そんな中カウンターの奥の神棚には招き猫が置いてあり、凄まじい存在感がある。


「皆、今日は私の為に集まってくれてありがとう」


 ピンクのチュニックに黒いコーディガンを羽織り。白いロングスカート姿の吹雪が集まったメンバー、俺、夏希、沙季、冬也、朝霧にお礼を言って例のビラをテーブルに置く。

 俺は吹雪の方を見るが、チュニックの奥の膨らみが気になりすぐさまビラに目を向ける。


 そこには、三毛猫の写真が記載されていて名前はしょうゆと言うらしい。


「うむ、俺は来る予定はなかったのだか......」


 俺がビラを確認していると上は青いシャツと緑のワイシャツ。下はジーパンを履いた爽やかな雰囲気の冬也がボソッと小言を言う。

 それもそうか、俺が冬也を無理やり巻き込んだ感じだからな。


 しかし、それだけなら普段の冬也ならこんな小言を言わないだろう。


「ふふふ、(ふゆ)君が来てくれるとは思って無かったから凄い嬉しい!」

「いや待て、別にお前の為では無い......俺は守に頼まれたから来たわけで......」

「分かってるわよ、でもありがとう!」


 冬也にはいつもの冷静さはなく、吹雪はそれを面白がっているようにも思う。

 冬也と吹雪は幼馴染みで、誰よりも親しい関係である。


 というのも冬也がここまで冷静さを欠くこと自体が異例であり俺達にも普段見せない顔だからだ。

 

 冬也が苦手意識を持つ相手=吹雪=親しい仲。俺の中ではそう解釈している。


 夏希もそれは同意していて二人で冬也と吹雪の関係を食事中の会話で話したことがある。


「部長、生田目先輩と話しして主旨を脱線させないでください......」


 朝霧がジトーとした目つきで、ツンとしたように話す。

 その朝霧の服装は茶色のトレンチコートで身を包み、白いニット服が襟部分から少し覗いている。

下は青いガウチョパンツを履いていて、パッと見た感じは少女というより少年である。


 俺は、そんな朝霧を見ていて改めて感じた事があった。年上相手には敬語で話していて今まで気付かなかったが。

 夏希と話している時同様、口調の鋭さは変わらないと言う事だ。

 敬語の力は偉大なり......


「だそうだ、そろそろ本題に入ったらどうだ?」


 冬也は吹雪に目線をそらしながら言う。

 頬を指で掻いている様子を見ると凄く恥ずかしいのだと言うことが分かった。

 そんな冬也を夏希は片手に持ったスマフォで写真を撮っている。


「冬兄の数少ない弱みを......ふっふっふっ」


 いかにも危ない顔を浮かべている夏希がちょっと怖い。


 ちなみに服装はねずみ色のダブルスリップのパーカーで上からチャックを閉め下3割を開けている、その下からは白黒のシャツが覗いており更に黒と赤のチェックシャツを巻いていて、下はスキニージーンズとお洒落な服装だ。


「いやいやいや、それはネタに使うなよ? 流石にかわいそうだ」

「分かってるよ! ボクはそんはひどいことしないから平気だよ!」



 俺は酷いことは結構されているんだがな……大抵非があるのは俺の方なのだが。


 冬也に関しては夏希と喧嘩になったりすることなどまず無いだろうし平気だろう。


「ごめんなさい! うん、それじゃ早速初めましょう!」


 すると朝霧から指摘を受けた吹雪は本題に入るため、机の上に置いてある紙を人数分ショルダーバッグから取り出す。

 それを、皆に渡すと吹雪は話し出す。


「皆に探してもらうのは、三毛猫のしょうゆちゃんよ」


「………」


 さっき確認した三毛猫の名前を聞いたあと、俺たちは渡されたビラを確認しつつ吹雪の次の説明を待つことにしたが全然返事が返ってこない。


「まさか、それだけか?」


 痺れを切らした俺は吹雪に思わず聞いてしまった。

 他の面子も同じような事を思ったのだろう......ビラに向けていた視線を一斉に吹雪の方向へと逸らした。


「それしか無いわ......」


ケロッと吹雪が言うと『.........』時計の音しか聞こえないくらいの静けさが店内を包みこんだ。


そして......


「「えぇぇ!!」」


 コンマのズレもない見事なタイミングで一同の声は店内を包みこんだ。

 それもそうだろう探すための情報が三毛猫と名前しか無いのだ、なんの目印も無く探なすなんて無理がありすぎる。


「部長! それじゃ情報が不足しすぎですよ! 首輪とか模様とか何かそういった特徴とかは無いんですか?」


 朝霧が俺の思っている事を代弁してくれた。

 俺だけで無く皆同じことを考えているだろう。


「首輪はしょうゆちゃんが嫌がっちゃったから付けてないわ、模様とかもこれといってという感じね......」


 それじゃ、手詰まりじゃないか......

 他に特徴的なのはと聞きたいが、朝霧の質問にしっかり反応できたあたり目印になる物は皆無なのだろう。


「そう言えばなんだが......あの猫オスじゃなかったか?」


 すると、冬也が唐突に性別について言い出した。

 性別って今関係あるのか?


「ええ、確かにそうね......でもそれがどうしたの?」

「流石、冬兄! うん、それは凄い目印だよ! 三毛猫はオスが滅多に生まれないからね! 同じ男でもお兄ちゃんとは大違いだ! 」

「守と同じにするな、かわいそうだ」

「おい! それはどういう意味だ!」

「うむ、そのままの意味だが」


 夏希も夏希だが、冬也も冬也でその言い方は酷くないか?

 だが、三毛猫の性別にそんな秘密があるとは知らなかった。


「でも......三毛猫ちゃんがオスでも......やっぱり結構居るんじゃ無いのかな? ......」


 すると、今まで黙っていた沙季が口を開く、こういう場面は大分苦手な為か話すのもやっとだろう。

 服装は膝より長くて青いワンピースと、その上から腿くらいまでの黒いコートに水色のストールを巻いている。

 隣に居るためか妙に心が高鳴ってしまうのが分かる。


「大丈夫だよ沙季姉! オスが三毛猫で生まれるのは凄い稀で三万分の一の確率だから、二匹見つかるなんていう奇跡は無いよ」


 流石夏希完璧な説明で凄い目印を導き出してくれた。

 とりあえず、三毛猫を見つけたらオスかメスか確かめれば良いんだな。


「そうなのね、初めて知ったわ」


 吹雪は思わぬところに凄い目印があった事に驚いたらしい、赤いお茶を口に運び少し顔を隠している。

 ちなみにこの赤いお茶は紅葉茶と言って盛城町の名物である。

美味しいらしいのだが、俺は飲んだことが無いため分からない。


「今日は何を話してるのかな? あっこれはサービスのアイスね」


 眼鏡をして青い和服を着た男の人が抹茶のアイスを人数分持ってきてくれた、横には菓子切かしきりが置いてある。

さっきも言ったがこの喫茶店のオーナーで水瀬葵(みなせあおい)先輩だ。

 髪型は澄んだ水色で後ろ髪だけは長く、結んでいる。顔はアイドルみたいに美形で身長も高め。

 爽やか系男子の究極ではないだろうか。


 そして、先輩は俺たちに話の内容を聞いてくる。


「茜の猫が行方不明になったんで、俺たちが探すのを手伝う事になったんです」


 先輩は俺にとって信頼できる兄貴のような存在なので、特に隠すこともなく話せる。

 それは、冬也も同じ事でやる気は無いが誰よりも早く先輩に説明してくれた。

 しかし、冬也は先輩の方には目を向けていない、厳密に言えば先輩から目線を外してるのではなく、たまたま近くに居る吹雪を見ないようにしているのだろう。


 幼馴染みでもっとも親しい仲なためか、面倒事を避けるためにわざと目線を外しているのだ。

 見ての通り冬也は吹雪には弱い。


「そうなんだ、僕にも見せてくれる?」


 先輩は湯のみをお盆に乗せて、右手に持つ。


 そして、置いてあったビラを左手に取ると器用に内容を確認しながらカウンターに戻って行った。

オーナーとしてはお客の前で絶対にやってはいけない行為だが、そんな事をするのは俺たちしか居ないからというのが際も近い答えだろう。


 そういう行儀の悪さは親譲りなのかもしれない。


「三毛猫か......そういえばこの前見たな」


 葵さんは情報の少ないビラを確認した後、そんな事を軽く言った。


「本当ですか!? その子どこに居ました!? オスでしたか!?」


 吹雪は先輩の言葉に我を忘れて食いつく。

 その表情はさっきまでの大人っぽい包容感がある姿から一転、我が子を心配する母親のような表情になる。


「えーと......盛城公園に何匹か居たよ、オスかどうかは分からなかったけど」


 それに対して先輩は予想外だったらしく少し反応に困っていたが、すぐに元の表情に戻り受け答えした。

 盛城公園か、確かにあそこには野良猫とか結構居たな。

しかし、その中で家猫が混ざって暮らせるのだろうか。

......それを言ったらどこも同じか。


「盛城公園......それじゃあ皆でそこを探せばいいかしら......」

「そうですね、宛もないですから私は部長に同意です」


 吹雪は盛城公園を探そうと、別の案も出ていないうちに決めようとしてしまっている。

 それに対し朝霧は同意のようだ。


「えと......あの......ごめなさい......」

「どうしたんだ? 仙宮寺」


 二人の同意の意見を割って沙季がおろおろと手を挙げる。

 それに対して冬也は軽く後押しする。


「私も......一週間前に......見たよ......三毛猫ちゃん......」

「まじか? その猫は何処で見た?」

「登校中の......住宅街で......」


 俺ん家の方か。


「仙宮寺さん家の方でも居たのね、となるとやっぱり手分けした方がいいかしら?」


 吹雪は沙季の話を聞いて、一瞬で手分けするような頭に切り変わったようだ。

 吹雪は実は頼りになるようで頼りない。

あまり知識が無いと言う点と、周りによく振り回されるからだ。

 しかし、そのギャップがよいのか後輩には好かれている。


「それなら三手に分かれて探そうよ! ボクと千秋ちゃんは商店街の方を探すからさ」


 夏希は朝霧を半場強引に、自分と組み合わせる。

朝霧は少し嫌そうにしている?


「ん? まて、なんで商店街なんだ?」


 流れ的にまだ、二手に分かれるとは決まっていないが探すなら盛城公園か住宅街だ。

 しかし、夏希から商店街の方を探すと三つ目の選択肢が出てきた。

一応理由は聞いておいた方が良いだろう。


「言わなきゃダメ?」

「だめだ」

「うーん、少し買いたい物があってね。この後千秋ちゃんと買いに行く予定だったんだ」


 夏希は諦めたようで苦笑いしながら理由を話してくれた。


「そういうことか」


 それなら三つ目の選択肢にも納得ができる。

 ついでに探すとなるなら一石二鳥だ。


「それにあの辺は猫が沢山居ますから、もしかしたらいい情報があるかも知れません」

「そうそう! 千秋ちゃんの言うとおり! 流石だね!」

「べ、別にお前に褒められるようなことは言ってない......」


 朝霧は顔が赤くなっていて照れているようだ。

 普段は強がってて真面目な感じだが本当は不器用で褒められたがり屋なのかもしれない。


「だけど、今日は探すとはまだ決まってないわよ?」

「いや、まだ探す時間はあるぞ。ここで話してても情報が無さ過ぎて意味は無いし、早いところ探しに行ってもいいんじゃないか?」


 時間はまだ午後の知らせが鳴ってからそんなに時間は経っていない。

 会議ついでに昼を済ます為にここに来たとも言えるため時間には余裕があるのだ。

 その為午後の予定は決めていない。


「それもそうね! 私も出来るだけ早く見つけてあげたいからそうしましょう! 私と冬君は盛城公園を探すから、仙宮寺さんと愛坂君は家の周辺を探してくれるかしら?」


 吹雪は冬也の腕にしがみついて強制的にチームを振り分けた。

冬也はそうなった事を後悔しているようで、だいぶ固くなっている。


 そういう俺も久しぶりに沙季と二人になれると考えると凄い緊張してしまい、心臓の鼓動が早くなっている事が分かる。

 即興で決めたとはいえナイスな人選だと思う。


「そうか! わかった! こっちは二人で探すから任せとけ!」


 思わず言葉に力がこもってしまい大分不自然になってしまったが、沙季はその事に気付いては居ないようだ。

 だが、なんとなく顔が赤くなっている? 


 夏希にはバレていたようでクスクスと朝霧の方に逃げて笑っている。

朝霧は状況は読めていないようで夏希が笑っている事に困っていた。


「ふむ、分かった。それと、そろそろ離れてくれないか息苦しい」

「そう? 冬君本当は嬉しいんでしょ?」

「そんなことは......ない」


 とか言っているが本当は嬉しい筈だ、冬也の反応を見れば分かる。


「それじゃ、そろそろ行くか! 善は急げだ! 吹雪の猫が俺たちを待っている!」


 我ながら恥ずかしい事を言っているような気がするが気にしないようにしよう......

 そして、俺たちは荷物を纏めて会計を済ました。


「「ごちそうさまでした」」

「ありがとうございました!」


先輩の挨拶を背に俺たちはお店を後にして、自転車に乗り三手に分かれた。


大変お待たせしました!最新話です!


今回の見どころは冬也ですね!

実は吹雪とは幼馴染みで、普段のクールさから一変ちょっぴり崩れた感じがかわいらしい感じに描きました!


あとは、主人公以外の服装を細かく説明してみました!

ちょっと、想像力とファション能力の無さが裏目にでて、かわいいのかかっこいいのか全然分からないまま描いてしまいましたが、いかがでしょうか?


なんか変だなとか思ったり、こうした方がかわいいと思った場合は教えて下さいね!


それから、今回も新しいキャラを追加しました!


水瀬葵(みなせあおい)二十歳


守達より、3歳年上で頼りになる先輩です。

やまびこのオーナーで爽やか系の男の人ですね。


心優しい性格の裏側には、親の少し大雑把な性格が入り組んでいて

完璧そうに見えて、ちょっぴりダメな感じの部分もあります!


今回は一日の出来事を、4部くらいに分けて描きたいと思っているので、最初の前書きを本来とは違う感じにしました!


今回は大分短めですが、ある意味4部に分けると一番長いかもです。



ではでは、また次回に!

どうぞお楽しみ下さい♪

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