始まりと始まり
俺はあの日の事を後悔している。
単純に再開するための願いだったはずなのに、思わぬ方向に成就してしまったのだ。
今の俺には何もない、あの季節に頼れる人も大切な人も全てを失った。
最愛の人に言われた言葉が脳裏に浮かぶ......
『さようなら』
あの日の出来事を今でも覚えている。
そして、長い時間を掛けてようやくたどり着いた。
彼女と別れなければならなかった理由も......
あの日の願いの本当の意味も......
俺は大切な事を見落としていたのだ......
「神様頼みます。最後に俺の願いを聞いてください」
俺が神様に願う事は一つ......
「もう1度、あの季節をやり直させてください」
あの季節に俺がやらなければならなかった事とあやまちを......
全てをやり直す為に......
そう願った瞬間辺りが急激に静まり返り。
そして、俺の時間は止まった......
夕日に照らされた紅葉が広がる人気のない展望台。
そこにはだいたい小学校高学年くらいの髪の長い白いワンピース姿の少女と、白い半袖と紺色の短パン姿の少年がいる。
少女の表情は悲しそうで、何か言いたげに指と指をすり合わせながらもじもじしている。
「それで、話って?」
少年の方が初めに口を開く。
「うん......えっと、あのね......」
少女は少年に言いたい事を伝えようと頑張るが上手く言葉にできないのか、もう少しで泣いてしまいそうな顔をしている。
そんな少女をあざ笑うかのように夕陽は淡々と沈んでゆき薄暗くなってゆく。
「私もうすぐ......引っ越すの......お母さんと......お父さんが......喧嘩して......」
少女はやっとの思いで言葉が出てきたが、さらに一層泣きそうな顔になる。
「サキは、引っ越さないと行けないの?」
少年は少女が引っ越したくないという気持ちだと思ったのだろう、引き止めたいのかそんな事を言う。
「それは......ダメなんだって......ここ以外の......世間を......見ないとダメだって......お母さんは......私の為だって......」
親の言う事を子はいやいや聞かなくてはならない。
抵抗しても最終的には何もできない事を少年と少女は学んでいるのだろう。少年はそれ以上何も言わない。
「サキは......また帰ってこれるの?」
少し沈黙が続き少年は再度違うことを質問する。
「わからない......ずっと帰って来れないかも知れない......」
「俺はずっと会えなくなるとか嫌だな......」
「帰るのは無理かもだけど......会えないわけじゃないよ?......」
少年はそう聞いて少し安心したからなのか、ある事をひらめいたようだ。
「そっか、じゃあここの紅葉にお願いしようか」
「お願い?」
「うん、絶対に会うって約束するためのお願い......」
「約束なのに......お願いなの?」
少女は疑問に思ったことを口にする。
「ほら、ここって四季祭で神様にお願いするだろ? だから念のため。絶対に会えますようにって」
「会う約束をして......その約束が叶うように、お願いするって......ことかな?」
「そうそう、そういうこと! それと、ちゃんと願いの内容も考えないとな」
少年は鋭い突っ込みに対してなんとか言い訳をして納得させる。
そして、少年は内容を考えてから約束を言う。
【紅く染まったこの場所で......】
「なんか......ロマンチックだね......」
少女は少し恥ずかしそうだ、夕陽で分からないが頬も赤くなっているのではないだろうか。
「だろ? 俺も言ってみてそう思った!」
そういう少年は、少女以上に恥ずかしそうにしている。
「約束絶対にまもるからね! ......」
すると、少女は途端に満面な笑顔になり元気よく返事を返す。
「絶対に会いに行くからね!」
「おう、お願いもしたんだ! 絶対に守ろうな! あ、あとこれ、約束を忘れないように」
少年はひときわ大きな紅葉を少女に手渡す。
「俺達の約束の証、絶対になくすなよ」
「うん、無くさずに大切にするね! ......」
少女は紅葉を大切に抱きしめる。
夕陽も完全に山々に隠れて辺りが暗くなり始めてきた。
「それじゃ、私そろそろ行くね......」
「おう、また明日!」
すると少女は境内の奥に消えていく。
少年はそれを見届けると階段を駆けて行った。
数日後、少女は町を離れるのだった。
プロローグ閲覧ありがとうございます!
小説などを書くのは初めてで、文法などがめちゃくちゃですが、もし良ければそういった点も指摘してもらえたら幸いです。
読者の皆様に楽しんでもらえるような小説にしていきたいと思うのでこれからよろしくお願いします!