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Rain, Steam and Speed – The Great Western Railway

作者: 落葉愚人

 Rain, Steam and Speed – The Great Western Railway



 時刻は夕暮れ間近。

 黄金色を基調とした背景。

 旧時代の雨雲の中から、ものすごい速さで、蒸気を吐きながら汽罐車が飛び出してくる。

 空には晴れ間も垣間見え、この後で晴れが想像される。

 右側の線路とは別に左奥にアーチ状の橋が見える。

 蒸気汽罐車とともに、新しい時代が幕をあける。

 汽罐車が時代を変えるということ現在で言い換えれば、インターネット革命と言えるかもしれない。


 時代は常に新しいものを発明し、利用して発展する。

 1982年のTCP/IPの標準化されたとき、それが時代の変革を意味することを誰が想像しただろう。

 当時は、NIFTY、PC-VANが基調でネットワークを持ち運ぶということすら夢物語だった。

 思い出すと、携帯用として利用していたのは、カシオのワープロを使っていた。

 利用端末を検索すると、カシオのワープロでの利用は一人だけだった。

 殆どが、MACやPC9800だったのを覚えている。それらも時代の主流となることはなく、時代の歴史に埋もれ、そして消えた。

 今や世の中はインターネット無しでは誰も生きられなくなってきている。

 サーバー同士を一つのコンピュータのように利用する。その知識は膨大で、今まで人間がこれほどまで知識を共有したことはない。

 いずれ、脳にも補助ディスクとネットワークボードが装着され、そしてIPがふられ、膨大な記憶をサポートする日が来るだろう。


 周りは日曜の午前とあって、比較的空いていた。

 薄暗い美術館、若いカップル、中年夫婦、品のいい老人たちが黄金の水彩画を食い入るように観ている。

 どうやら一人で来ているのは、私だけのようだ。

 一通り見て回り、出口に向かうと、そこはターナーの販売グッツでいっぱいだ。

 キーホルダーにシールに絵葉書、タオルにバスタオルコップに皿、この展示会が終わったら、これらのグッツはどうなるんだろう。そう思いながら絵画集を手に取ろうとした。

 他の人と手が触れる。

「あらー落葉くん。」

 大学時代の同級生だ。

 何十年ぶりだろう。結構わかるもんだな。

 殆ど変わっていない。

 隣には、卒業してすぐに結婚したパートナーと一緒だ。

「変わらないね。少し太ったかしら。」

 そう言いながら、細身のパートナーを見ながら、お腹を触ってくる。

 そうそう、何も変わっちゃいないさ。考え方も、斜に構える話し方も。

 そして君もね。声にならない声で答える。

「それじゃ、これから観てくるね。」

 手を振りながら、会場へと消えていく。


 その後ろ姿を見送りながら、山下達郎の「ターナーの汽罐車」を小声で口ずさんだ。

 さほど人間の時代は変わっていないのかも。


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