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手を握ってくれる箱。

作者: 烏木真

手を握ってくれる箱。


 彼女には魔法の箱がある。いつ手に入れたかもわからない。物心ついた時にはもう側にあったような気がする。手のひらほどの小さな箱は、開けても何も入ってない。ひっくり返しても何もない。

 だがその箱は何時だって、指先を入れると誰かがそっと握り返してくれるのだ。


 苦しい時、悲しい時、喜びを分かち合いたい時。

彼女は何時でも箱に指を入れ、その誰かに向かって話しかけた。

テストの成績、クラスのイジメ、今日のお天気、好きな人のこと、

返事はなくとも彼女にとって箱が一番の理解者だった。彼女は幸せだった。


ある日彼女はずっと支えてくれた箱に指を入れ、彼女の理解者にこれまでの人生で最高の報告をした。


「私、彼と結婚するの」


差し入れた指先には指輪がはまっている。


「見て、ね。彼がくれたの。夢みたい」


 途端に指先にかかる力が強くなり、彼女の指をぐいと引っ張った。

彼女は困惑した。こんなこと今まで一度も無かったのに。


「ねえ、痛いよ。離して」


それでも手は離れない。唐突に彼女は思った。







この先に居るものは何だ?




 氷のように冷たい手が、彼女の指を引っ張ってくる。痛い痛いと泣く彼女など御構い無しに。

そして箱は猛烈な勢いで彼女の指を手を飲み込み始めた。


「嫌だ嫌だやめて」


彼女は反射的に反対の腕を机について突っ張った。それでも力は緩まない。どころか箱は、入り口の大きささえ無視して彼女の手を、腕を、肩を、飲み込み始めたではないか。

彼女は箱を叩いた。叫んだ。でも全て無意味だった。


暫くして。箱はまるでげっぷでもするように、けぷりと一つ指輪を吐き出した。そうしてそのまま沈黙した。

何書いてもほのぼのになる……っと言う悩みを解消すべく頑張りました。

でも最後まで「今度からは彼に握ってもらいなさい」って手が二度とあらわれなくなるオチ。にしようか最後まで迷いました。

あと特に考えずにがーっと書いたけど、異類婚姻譚好きとしては箱の怖がる彼女と箱の向こうの何かの恋愛話読みたいです(正体決めてないし書く予定もないけど


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