611②
【611】 宗 樹 の 拘 り 伝 説 (下)
▼昇造に散々虐められた宗樹。遂に隠し持った暗器を発動。そしてイントロ。「ボクは常々思うんだが是からの世界は間違いなく電気自動車に依る完全自動運転時代に進化する」
しかし現実の道路環境は増々複雑で安全性は最悪。こんな現状では自動運転車も動き様がなく頻繁に立往生。精々は高速道路限定レベルで足踏みするだろう。そ~為ると
最早日本は先進国を名乗る資格を失う。其の原因は先ず公共心と弱者目線の欠如。側道(歩道)には子連れも妊婦も幼児も老人も通る。乳母車や車椅子も通る。処が自転車は
其の狭い隙間を縫う様に平気で突っ込んで来る。是ではとても安心して通れない。自転車参入で歩道は忽ちデンジャラスゾーンに変貌して仕舞った。
▼歩道の状況も複雑だが車道は其れ以上。軽四から路線バス、大型トラックまでが混在。更にバイクと原チャリ。クルマの隙間を縫い追い越す。加速が段違いで容易く暴走。処が
些細な事で容易く転倒。是では幾ら自動運転のAIでも怖くてとても走れない。更に危ないのは交差点。左折車の内輪差で巻き込み事故。右折待ちは対向車と正面衝突のリスク極大で
マンマ捨て身。ユーターンは危険且つハタ迷惑。案外多い直進車の信号見落とし。ちなみに宗樹は左折車にクツを踏まれた。偶々安全靴で無事。会社の先輩は右折待ち中に後続車に
接触されて反対車線に押し出されサンドイッチで重傷‼、我が家の愛車は青で横断中に信号見落としのクルマが全速体当たりで哀れ全損。しかしながら奥様は幸運にも軽傷だった。
▼歩道でバイクに引き摺られた女性。なんとエンジンを掛けた儘でバイクを手押しで横断。すると何故かバイクが先に行こうとする。其の内にバイクは急発進。引き摺られて転倒。
其の原因。原チャリのオートマにはニュートラルポジションがない。そしてアクセルはハンドルの右手。驚いて強く握ると余計に開放。そして急発進。原チャリ免許は普通免許の付録。
知識ゼロでイキナリ乗れるのが事故の根本原因。次は中型の事例。交差点で前に一台。対向車線にも一台。青に為り発進、仕様としたら対向車がイキナリ右折で跳ね飛ばされた。
バイクは先行車の陰に為って居て見落とされた。バイクは全損。ヘルメットは変形。脳挫傷だが幸運にも生還。是は実は昇造の三女玲奈。そして現在は次男和樹の妻。重く辛い記憶。
▼宗樹は此の機会に自動運転車支援策として交差点改造案を披露。パソコンで作った或る図面を出して来た。「ボクは或る時道路工事現場で仮設用の右折立体交差ユニットを
目撃した。仮に是を統一規格で大量生産すればコストは下がり僅かな費用投下で右折事故はなくせると考えた。其れで図面を書いてみたんだ」其れが右左折とユーターン(転回)を
統合した階上テーブル型交差点。先ずは添付のパソコン図面をご参照下さい(印刷本のみ)。なお直進車は無関係です。左端の陸橋から上る。左折は即時、即右折は転回。右折は
テーブルを斜めに突っ切る。道路信号に関わりなく通過。是で道路は直進車だけ。但し全車全自動運転車。二輪車対象外(全て多段階右折)。交差点四隅に支柱。二階に屋根。
▼「設備のない細い路地へは左折のみ可能。大型車は対象外。然るべき交差点を使用。人間は間違いや違反をするので全車完全自動運転が大前提。仮設現場のレベルなので設置は
簡単コストはミニマム。「しかしま~実現はムリでしょう。提言段階で効果を誤解され或いは疑問視され無視されて即抹殺です」「悲観的ですね」「経験則に依る確信です」説明終了。
次は宗樹のカプセル道路イメージの切っ掛け。其れはポートライナー。踏切事故とホーム転落事故を根絶する理想形。其れがモノレール駅。初めからホームも昇降口もカプセルの中。
開口部も停車時のみ其の都度開閉型。先んじて最も理想的な形態を実現。ガソリン車消滅で車道もカプセル化実現。鉄道は今スグ可能。是が現在の理想形イメージ。
▼カプセルで覆えば風雨、凍結、雷、風水害や台風からも道路を護れる。飛び出し事故も完璧に防止。適度な風の流れを作り、空気の反作用を打ち消す事も可能。次は自動運転の限界。
自動運転にも決断の問題は残る。若しも急な飛び出しがあれば急ブレーキ。しかし乗員に幼児や老人や妊婦が居たら、急ブレーキは彼らに危機を招く。なのでヤッパし隔壁カプセル‼。
「結局クルマは自動運転、道路はカプセルで隔絶と言う事です」「お前のイメージは見事だがコスト的には余りにも非現実的だよ」だから多分、21世紀の現実世界では
此のレベルのインフラは無理だと思って居るよ。経済原理や競争原理、闘争本能や欲望を制御出来ない限りは到底不可能。殆ど妄想だね」「でも目標としてはアリだよ」
▼宗樹のハナシを概ね好意的に聞いて居た昇造だが、何気ない質問からまたまた春秋戦国時代が展開?。「でも二輪車の多段階右折は残念だな」「ウン、右折だと
二段階で転回なら三段階に為る」「ゲゲゲ、其れは可哀想だな。何とか為らないのか?」「実はボクも二輪車の扱いに関しては本当に困って居るんだ」「テーブルには
絶対に乗せられないのか?」「二輪車には完全自動運転は不可能だからね。其れに二輪車は何かあると容易く転倒する。忽ち現場は阿鼻叫喚の巷と化する」
「すると此処で智有から或る提案。「登り口から出終わるまではキャリアに収容と言うのはどうでしょう?。二輪車専用の昇降専用キャリアです」
▼智有の説明。キャリアは横幅1メートル、縦2メートル。管制の指示のもとに自動運転で移動。運転者は只の乗客。使用後のキャリアは赤信号の時に向かい側に移動。是で回るハズ。
「其れは素晴らしいアイディアだよ」しかし宗樹は何故か浮かぬ顔。「お前まだなにか問題があるのか?」「いや全車電動バイクなら取り合えずは大丈夫」「ガソリン車は
ダメなのか?」「此のテーブルの想定するのは全車電気自動車で完全自動運転の世界なんだ。其の頃にはバイクも当然電動タイプしか公道は走れない。其れが大前提」
すると意外に鋭い昇造。「お前本当は自動運転社会では二輪車は抹殺したいんだろ?」「ウ~ン。実は其れが理想的なんだけどね」
▼「実はボクの本音ではガソリンエンジンは四輪二輪を問わず残すならサーキット限定。更に二輪車が公道から撤退すれば交通社会は画期的に単純化出来る」
「すると原チャリもサーキット限定か?」「遊園地で電動原チャリが走るかな?」「お前はバイクの魅力を知らないからそんな冷たいことが言えるんだよ‼」
ちなみに昇造は中型免許を所持。「いやボクも趣味としてなら二輪車は大好きだよ。自分は小型限定しか持って居ないけど娘は中型を持って居る。三恵子のお兄さんは
ナナハン免許を持って居る」「二輪の魅力は知って居るんだな?」「其れでも世界中で死傷事故ゼロを目指す為には二輪車の公道走行は容認出来ない」
▼「何故そんなに二輪車を拒絶するんだ?」「完全な自動運転が達成出来ないからだよ。なにかあると容易く転ぶ弱点がある限り未来の交通社会には適応出来ない」
宗樹の苦渋の表情.確かに悪意はカケラもないらしい。「そんなに人間の運転はキケンなのか?」「交通事故の死傷者は今や第二次世界大戦の戦死者よりも遥かに多く為って居る。
先ずは全車電気自動車の完全自動運転を実現。更に交通環境を整備してクルマと人間社会を隔絶。そ~為れば世界中で死傷事故ゼロも夢ではない」此処でようやく
昇造は宗樹の思い描く近未来交通社会のビジョンの存在に思い当たった。「では此の辺でお前の持って居るイメージを聞こうかな?」
▼「ボクのイメージの原点はモノレールだよ。此処では故障は発生しても交通事故は原理的にあり得ない。走って居る場所は地上とは隔絶した天空。駅もカプセルで覆われ
昇降口は乗り降りの時だけ開閉。是では飛び込み自殺も到底不可能。此の原理を交通機関にも車道にも適用する」「すると~為る?」「交通機関は人間社会と
完全に隔絶する。電動エンジンなので排気ガスは一切出ない。鉄道軌道も車道もみんなカプセルで覆う。人間も鳥も動物ももう絶対に事故に遭わない。悪天候にも強く為り
設備の劣化も激減。騒音も減少」「何処を走るんだ?」「基本的にステージを車道、鉄道軌道、歩道の三階層に分ける」ま~其れはなんとも壮大為るビジョン。
▼「費用はどうするんだ?」「現在の世界中の事故がゼロに近づけば十分以上に費用は賄える。是は必要不可欠な先行投資だよ。でも今の世界の現状では当分は
実現不可能だろうね」「ど~すれば実現するんだ?」「人類全体が意思を統一することが肝心だね。少なくとも世界は完全にグローバルで紛争も差別も貧困もなくなる状況が
大前提として必要だよ」「でもハナシが其処まで行くと完全にSFか夢物語だな」「ウン、悔しいけど其の通りだね」すると智有が発言。「でも人類が向かうべき目標は
確かに其処にあると思いますよ。先程の”階上テーブル型交差点”も交通社会の複雑さを解消する第一歩として魅力を感じます」「だれか発信してくれないかな?」
▼ハナシは終わったが依然として昇造は人間の運転に潜む危険性がピンと来ないらしい。其処で宗樹は全自動運転車と人間の仮想ガチンコ対決を提案。先ずクルマの持つ
安全装備。複数ポイントに備わったカメラ、超音波レーダー、探査用レーザー等々。クルマは常にこれらの情報を集積し常時総合判断。若しもナニかの異変を察知または
予測すれば直ちに減速、停止、後退、待機、離脱。早いハナシが絶対に安全と判断しない限りは迂闊に動かない。しかし是が人間にはなかなか難しい。元々人間は動物。
ナニかあればスグに興奮して足掻く。そして余計にヤバい状況に落ち込む。反応が電脳とは正反対。冷静さと抑制が置き去り。更にヤバいのは心理的亢進作用。
▼運転をすると人間はまるで戦車に乗った様な気分に為って途端に傲慢に為り、弱者目線の感覚が忽ち麻痺。是が『走る凶器変化』其れに加えて頼るのは案外不安定で
貧弱な五感と勘。中でも一番厄介なのは情報不足な儘で突っ込む出たトコ勝負な無謀さと先入観と思い込み。屡平気でルールを逸脱。一旦なにかあると忽ち自己弁護に走る。
是では到底事故は減らない。話す内に宗樹は改めて人間の運転に対する不信の深さを再認識。しかし其れは人間を愛すればこその結論。人間の運転では交通事故は減らない。
更に人間は電脳の警告を聞かない、なので完全自動運転。其の論理的帰結所以なので至極当然。(ダベリ会って何時もこんなにアカデミックなの?。偶々のレアケースです)。
▼今日のダベリ会には別段緊急のテーマーはない。(元々何時も有馬船)。昇造は宗樹の少年時代をネタにオチョクリを開始。すると素直に答える宗樹くん。幼稚園途中からの
嵐の引っ越し三連弾に翻弄された挙句に一年生の三学期から西に遠く離れた上戸部市営住宅に流れ着いた。しかし一家は狭いながらも初めての庭付き戸建て住宅に巡り合い
ようやく落ち着きを取り戻した。「小学生時代はラジオで歌にハマり、手塚治虫のトリガーでマンガにハマり、日本中の歌とマンガを知り尽くすと言う野望に燃えて居た」
是は或る意味究極の内面宇宙志向。元々宗樹は外の世界にも学校社会や成績にも全く関心はなかった。典型的なダメ人間コースだがそんな意識も当時全くなかった。(今もだね)。
▼NHKの放送だと思うがウン千万の地球(数は忘れた)と言うSFが印象に残って居る。特徴はなんと言ってもスケールの雄大さ。と言う依り最早荒唐無稽だがとにかく
ヒジョ~に面白かった。要するに未来の世界で太陽のご臨終に際し、地球の難局に立ち向かう為に南極地点に超大型ロケットエンジンを取り付けて新たな太陽を求めて
何処かへお引越しと言うメチャクチャなハナシ。他にも似たようなお仲間が数多居る事を知り、みんなで協力して技術面其の他の問題を克服。最後の場面では
各々が存続出来る太陽系を求めて旅立つ。そして其の数がウン千万てな訳。今こ~言う構想でハナシを成立させるとしたら、其れはもうどえらいことに為るでしょね。
▼当然ながら一旦地球の水も空気も凍結圧縮してマントル内部に分散備蓄。人類も動植物もマントルの奥深くへ移住。しかしロケットの推進エナジーは何処から調達するのか?。
現在のイメージの数多のロケットで移住と比べると非効率で実現性もない?。こ~考えるとSFは其の時代の科学的知見に依って成立。若しくは影響されて居ることが良く分かる。
も~二度と復活しない名作かも。10年後の学生寮時代に歌とマンガを矢鱈に知って居るので注目されて妙な人間関係が発生したのは予期せぬ副次効果。自然に友人の輪が形成。
気が付くと孤高タイプではなく、不器用だが矢鱈人懐っこい人間に為って居たらしい。是を称して「芸は身を助ける」とか言うのです。イイ趣味を持って居てよかったね。
▼小学校時代の思い出話を語る宗樹だが、此処で不意に時系列感覚に異変?。今度はイキナリハナシが幼少期にワープ、混乱する昇造‼。「ボクは左耳が電話も聞こえない
所謂片耳難聴で原因は生後スグの中耳炎。更に右耳は中学時代の乱闘騒ぎで鼓膜が吹っ飛び、其の後も色々あって耳鳴りが常態化して補聴器は使えない。目は末期緑内障で、
三回手術したがも~パソコンは霞む右目だけで打って居る。左目はすでに視野が残り僅かで更に斜視に依る複視で物が二重に見える。其れでも毎日打って居るが、キーボードが
十分には見えず液晶画面に出た文字で確認しながら打って居る」「目には悪いんじゃないのか?」「使わないと余計にアタマと視神経が劣化すると思うんだ」
▼「其れは凄く前向きな考え方だよ」「処が人間は後ろ向きで人間界に殆どキョ~ミがない。空襲で家が焼失して母の実家のお寺で幼稚園まで暮したのが原因だと思うんだけど、
入園する前にすっかり浮世離れして仕舞った。そして幼稚園で悪夢の引っ越し三連弾。こ~して友人は悉く時の流れの中に消えた。凄く寂しかったよ。最後は一年生の三学期から
また見知らぬ土地に移った。愈々浮世離れが酷く為って現実世界に関心もなく為り学校社会にもキョ~ミが持てない。其の頃に偶々マンガと歌の魅力にすっかり嵌り、
”よお~し、日本中のマンガと歌を制覇するぞお~”とこ~為って、成績もど~でも良くなった。其れで逆に毎日の生活は意外と楽しかった」(アレ?。小学時代に戻ったぞ?)。
▼「でも学校は更に退屈な時空間に為った。宛ら学校は義務教育と言う名の理不尽な牢獄で、只只管じっと釈放の時を待って居た」「友人は居なかったのか?」
「居たけど人に頼れない性分で、気兼ねや気遣いばっかりでやがて悉く途絶えた。一人っ子で何でも自己完結タイプで、今から考えると適応障害のデパートだったのかも知れない」
意外な宗樹の述懐。彼は子供時代に大きなトラウマを抱えて居たのか?。しかし大学時代に出会った可愛い宗樹からは想像もつかないハナシに昇造は顕著に混乱気味。
多分中学、高校時代で彼の内面が大きく変化したのだろうと思った。「じゃあ中学校はど~だった?」、「牢獄に体罰がアドオンでマンマ地獄だったよ」
▼「では高校はど~だった?」「そ~だねえ。言わば中学地獄で高校極楽かな?」ヤッパしコイツを変えたのは高校生活だな?。と昇造は思った。「何処がそんなに良かったんだ?」
「暴力と差別が一気に消滅した。教師は対等に話してくれて、其の上此方の意見をよく聞き然も尊重してくれた。やっと初めて人間扱いされたようで嬉しかったよ」
「其れから科学の魅力に嵌ったんだな?」「ハイ其の通り」「ヤレヤレ、やっとお前のイメージが繋がったよ」「ようやく此処まで戻って来ました」
「お前今の時系列スクランブルは態とか?」「イヤ只思い付いた儘に喋っただけだよ」「愈々呆けたのかと思って怖かったよ」「ウン、ゴメンね」
▼大学卒業後に宗樹は実家から自転車で約7分の三星電気販売に就職したが決まったのは11月以降。随分遅い決着だが其処にはどんな経緯があったのかな?。此の機会に
昇造は改めて確認。「自分は一人息子で両親はボクを溺愛して居た。なのでボクも卒業後は必ず実家から通勤出来る会社に就職しようと考えて居た」其処で父が見つけて来たのが
JR三田線の三星電機新見製作所。宗樹も受験する心算だった。処が或る日母から電話が入り、父が急に製作所はイヤだと言い始めたと言う。其の訳はど~やら
幹部候補の社員には全国の製作所を経験させると言う仕来りがあるらしいと言う噂。4年間の別居を耐え抜いた父はもう息子と離れて暮らすのはイヤだと本音がバクハツ。
▼其の上に今度は通勤圏内の京阪神地区処か日辻市内で就職してくれと言う。さ~是で就職問題は一気に暗礁に乗り上げた。不運なことに父が一番アテにして居た自分の就職先の
日辻製作所では偶々今年は募集がなかった。此処なら其れこそ歩いて数分の超至近距離だったのだがまあ仕方がない。別に仕事には拘らない宗樹は市内で募集のある企業を
テキト~に歴訪したのだが全て不合格。父の判断では「お前は儂と同じアホ顔だから面接で落とされたんだ」まあ確かに間の抜けた顔だがそんなこと言われても仕様が有馬船。
処が偶然にも三星電気販売の社長が偶々従姉の料亭の常連だった。社長はハナシが出るなり、「其れなら俺んとこへ来い」劃して一瞬で奇跡の就職決定‼。
▼すると出勤日は期の初めの3月1日。止む無く同日の卒論発表会を昇造に丸投げして出勤。処が国立大卒業生は宗樹が関西初で異様に目立って居た。更に社長は宗樹の人物を
全く知らないうえになんと一面識もなかった。其れで宗樹は運転免許を取ってセールス。ではなく直接自分の秘書に仕様と考えた。処が従姉の料亭でじっくり会ってみると宗樹は
余りにも可愛く幼く権謀術数には如何にもそぐわない純朴なサイエンスタイプ、「あ~是ではとても自分の秘書には使えんなあ」と、言うことで取り敢えずは商品の仕入れ係に就任。
やがて時代の趨勢で電算室長に為った。劃して『コンピューターに囲まれた、電算室で欠伸する、超ユルユル社員、寝ぼけ宗樹(元歌はバビル二世)』が形成した。目出度し目出度し。
▼「ちなみに仕事はど~だった?」「アレは只の社会人の義務で便利な隠れ蓑で同時に生活手段。会社が潰れなかったのはラッキーだった。目出度く隠居してからは
毎日が竜宮城みたいな生活だよ」「結婚願望はチャンとあったのか?」「自分にはムリだと思ったけど一人息子なので親孝行はしたかった」「三恵子と結婚出来て良かったな」
「ウン、ウルトララッキー‼」「じゃあ当然今は楽しいだろう?」「趣味で時間が足りない状態だよ」最後に宗樹自身のコメント。「要するにど~やら自分は幼少期からすでに
人間社会から食み出して居たらしい。導く者も居らず、悩みも持たず、あっても何気にスルー。只家族愛は強かったらしい」「結婚運も良かったよ」「ウン‼。ホントにね」
▼次はイキナリ宗樹の奥様奉仕哲学。「亭主殺すにゃ刃物は要らぬ。断絶三日もあれば良い」仰る通り‼(そのまんま引用)。奥様に構って貰えないと忽ち生気を失う宗樹くん。
先ず距離感の取り方について持論を展開。人間関係の根幹を為すものは何と言っても先ず信頼関係だが、運営上のキモは距離感の設定に在ると考える。何事に於いても
適切なるTPO(時場所目的)への配慮はヒジョ~に大切。『此の世で一番肝心なのはステキなタイミング(坂元九)』全く其の通り。其れを忘れてはイケません。そ~でなくても
オトコは元々単純で無神経でニブくて勢い任せで単細胞な生き物。奥様のデリケートで崇高なココロの内を推し量る術は所詮ない。結婚に際し、此の心掛けは必要不可欠。
▼宗樹の場合は叱られる度に深く反省。そして益々奥様を頼りにし、徐々に成長して行った。初めは一室で布団を並べて寝て居たが次男が大学に進学し下宿すると其の部屋は
次男の帰省時以外は奥様のベッドルームに変貌。元々耳が悪い宗樹に耳の鋭敏な奥様は少なからず閉口して居たらしい。其れでテレビも出来るだけヘッドホンで賄う様に為った。
隠居に為ってからは朝飯と昼飯は自炊で晩飯だけ奥様に作って貰って居る。なるべく圧迫感を与えないよ~に遠慮して配慮。優しい奥様は運転免許も返還して仕舞った宗樹を
心掛けて買い物や銀行や時偶モーニングに誘って下さる。おまけにボケ防止の為に花の水やりや物干し。水汲みやお風呂洗いなどの軽作業を与えてくれる。中々見事な配慮です。
▼更に時々は飲みさしのコーヒーやビールも回って来る。正に竜宮城の様な生活。年金が減らないように頑張って長生きするのよと言ってくれる。でも介護状態に為ったらど~するの?。
其れでも死なれる依りはマシなんだって。嬉しいなあ~。再び生きるチカラが湧いて来た。とにかくなるべく顔を合わせる機会が増えないように気を遣って居る。娘が今も同居して居るので
其の世話で奥様は忙しい。奥様のバイトはお昼からで、夕方までは宗樹が二階、下がニャンコのライちゃんで分担して留守番。今では気が向いた時の何でも話せる茶飲み友達としての
レーゾンデーテルが徐々に確立して来た様で益々嬉しい。ホントはあの時に「死なれたらホントは寂しい」。と言って欲しかったけどね。
▼でも奥様は恥ずかしがりなので其れはムリなんです。結婚以来自分は世界一の幸せ者だと日々実感して来たが、こんな亭主は客観的に見てど~なんでしょう?。ま~今更
彼是言われてもも~何とも思わないけどね(結局自画自賛に終わった)。あ~そうそう、肝心の距離感設定について一言アドバイス。頼られて居る時には誠心誠意共感しよう。
しかし一旦離れれば極力距離を置きましょう。『逢えない時間が愛、育てるのさ(ヨロシク哀愁)』顔を見せないので寂しいと奥様に思わせるくらいが夫婦には丁度適正なんです。
元々亭主は奥様の僕でバックアップツールなもの。決して自分本位を押し付けてはイケません。徹底的に人生を丸投げすれば奥様の母性本能は自然に活性化するでしょう。
▼昇造と智有は此のハナシは無意識の強烈なお惚気だと思ったが、激流の様な奔流の様な宗樹のエナジーを制止する術がなかった。是でホントに76歳?。此処で最後に出るのは
宗樹の持つ拘りの正体てか本質。昇造にはかって其れを垣間見た記憶がある。其れは三女玲奈がようやく就職して半年後のハナシ。玲奈は職場にも仕事にも十分に順応。
「自分の趣味が其の儘仕事に為ってシアワセ‼」と嬉しいメールを昇造に送って来た。処が上機嫌の昇造が宗樹に其のハナシを披露すると宗樹は、「仕事と趣味を混同すると
早晩大きな壁に突き当たるよ」と意外な反応。一瞬ムっとした昇造。「其れはど~言うことなんだ?」「趣味は何処までも自分の価値観で突っ走れるが其れは仕事では通用しない」
▼「仕事で自分の価値観に拘れば其れは必ず対立と孤立を招く」と意外なお言葉。増々訳わかめな昇造。「職場には職場の伝統と価値観がある。仲間にも一人一人に夫々の
価値観が存在する。其の基本を理解しないと忽ち人間関係もチームワークも崩壊する。互いの意思を尊重して自分の価値観は飽く迄も自分の内面に留めることが大切だよ」
「すると自分の価値観で仕事をしてはイケないのか?」「そんなことは決してない。自分の価値観は勤労意欲の大切な原動力だよ。でも仕事で先ず肝心なのは協調と融和だからね。
大切なのは周囲に自分の意思を理解させる調整努力だ。孤立してまで自分の意見に拘っては其れこそサイアクだよ」
▼「すると自分の価値観はヤル気の根源で個人の趣味で出すのなら大いに結構だが仕事では出せない?」「イヤ勿論大切だし出せるけどチームワークとぶつかってはイケない。
上手に出すには其れなりの配慮が必要だよ。時には一旦引っ込めて意見が通る状況が来るのを待つ。或いは時間をかけてそう言う状況を作り上げる。そんな感じ」「ナルホドな。
趣味は個人の世界で仕事は社会活動と言うことだな」一見理論的でも元々宗樹は根本的に感覚でものを言うタイプ。なので昇造も感覚的に理解した。すると此処で智有が質問。
「其れで其の後ど~為ったんですか?」「間もなく玲奈が其のような悩みを言い始めたので感覚的に答えたよ」ど~やら参考には為ったみたいですね。
▼劃して『宗樹の拘り哲学』考察終了。内に秘めた拘りは凄まじく念入りにマニアック。其の代わり通常は絶対に表に出さない。ど~やら趣味仲間も居ない。家族にも世間にも
一切迷惑は掛けて居ない。自分の趣味のことも人には一切話さない。要するに究極の孤独世界?。「立派な見識だが、費用は足りて居るのかな?」「ステレオもビデオもカメラも
今は全部中古だよ」「音が煩いとか言われないのか?」「今はテレビもステレオもみんなヘッドホンで聞いて居る」「すると自慢のタンノイのスピーカーは放置見んか?」
「三恵子と友里の外出中にこっそり聞いて居る」なんと宗樹は趣味でも周囲に配慮して居た。そ~言うことで宗樹の拘り三原則は「孤独、倹約、遠慮」と定義されました。ご苦労様‼。




