第3話
大学のテスト怖いよテスト…
そんな恐怖を紛らわせつつ深夜の妙なテンションで書き上げたのでところどころ見苦しいかも知れませんが楽しんでいただければ幸いです
雲が一つも見つけられないぐらいの青い空。そして、その青い空の真上でさんさんと照りつけるまぶしい太陽。誰がどう見ても快晴というのがふさわしい天気である。
そして、そんな天気に見舞われている場所は森。ただの森ならば何の問題もない天気だがそこは熱帯ともいえるような暑さを誇る地域で飲み水がなければ数週間で干からびるほどである。
そんな森の中を走り続ける者が一人、そしてそのあとを追うものが多数いた。
「しつこい。本当にしつこいわ。なんなのよあいつらは!ただほんのすこーーし水と食料を頂戴しただけじゃないの。それだけの理由で必死に追いかけてくるとか信じられないわ」
ほんの少しと言ってはいるが、彼女の衣服の周りには大量の食糧袋、そしていくつもの水筒がぶら下がっていた。
他の人から見れば過剰といえるほどの量だと断言できるだろう。
そして、それほどの量を持っているのにかかわらず追いつかれずに逃げられているのはひとえに彼女の運動能力が他の者に比べて格段に優れているからだということが見て取れる。
「こんの女待ちやがれっ!!とっ捕まえたら調教して売りさばいてやらぁっ!!」
「誰が待つもんですかっ!そんなことされると分かればなおさらよっ!あなた達はおとなしく私が生きるための礎になって頂戴」
追いかけられる者と追いかける者達は木々や草、そして苔がところどころ生えたある程度形の整えられた石段や石柱で複雑に絡み合った自然と人工物で組み合わさった迷路駆け進んでいく。
追いかけられるものは時折後ろへと振り向いては相手の状態を確認し、そしてまた前を向いて走り続ける。
「へへっこの調子なら逃げきれるかな?」
徐々にではあるが追いかけられる者と追いかける者の差は広がりつつあった。
追いかける者達の表情にも疲れが見えてきている。それに比べて追いかけられる者はまだ少し息切れしている程度で疲れの色はみえない。それどころか少しばかりの余裕の表情が見られた。
「じゃあまたねー。お・じ・さ・ん・た・ちってきゃあっ?!」
これだけ離れれば逃げ切れる。そう判断した追いかけられる者は後ろを振り向いて宣言したその時、追いかけられる者は黒い何かにぶつかって倒れこんだ。
何にぶつかったのかをいち早く確かめるために追いかけられる者はぶつかった方向へと目を向ける。そこにいたのは黒い見なれない生地で出来た衣服を身に纏い、左腰に見なれない剣を身に付けた青年だった。
あの日から、白銀の腕の男に父さんと母さん、そして美那を殺されてからどれだけの時間が過ぎたのかは分からねぇ。気がついた時にはわけの分からねないカプセルの中で俺は真っ裸で放置されていた。
中から抜け出す方法が分からなかった俺は適当にカプセルの中で暴れていたんだが運よくカプセルが開いて脱出することはできた。
あたりを見渡してみるとどうやら古い研究所か何かみたいで俺が眠らされていたカプセルのようなものが幾数個放置されていた。机には何かの資料だったであろう紙が散らばっていたがインクが擦り切れてしまっていて何が書いてあったのかは分からなかった。
俺は今、どの国のどの位置にいるのかを確かめるべく、外に繰り出そうとした。が重要なことに気付いた。今までずっと体が妙にスースーするなとは思っていたが、まさか服を着ていなかったとは…
さすがに裸のままで外を練り歩くのは流石にわいせつ罪で捕まるよな。
俺はとりあえず復讐を果たすまでは警察にお世話になりたくないのですぐに服を探していたんだがなぜだか俺が通っていた学校指定の制服と下着まぁ、ありたいていに言えば学ランとパンツとシャツが丁寧にハンガーっぽいものに引っ掛かっていたのでそれを着込むことにした。俺のために用意していた。とか、そんなわけないよな。着こんでから気付いたが学ランのデザインがところどころ変わっていた。まぁあとで元通りに戻せばきっと問題はないだろう。
着る物は着たし、外に出てみようと一歩踏み出した。が、なぜか俺の本能が何かを忘れていると感じた。
今の俺に所持物はなんてこの服以外何もないはずなのにだ。
気のせいだろうと思いさらに一歩一歩前に進んでみるが前に進むたびにその本能が強く警告した。何かを忘れていると。
この妙な感覚をぬぐいきるために俺はこの施設内を自分ができる範囲でいろいろと物色してみたところ、真っ白い刀のような西洋剣を見つけた。
この剣を見つけた時、俺はなぜだかは分からないがこいつは俺のものだと思った。
その剣を手に取り、切れ味を確かめるべく剣の刃部分を指でなぞって試してみたところ全く切れ味がない剣だった。刃物なら少しばかり皮膚が斬れるものだ。俺はなまくらだと思いその場でその剣をたたき折ろうと近場の障害物にたたきつけた。が、こいつはなまくらなんてものじゃなかった。
叩きつけた障害物がまるでやわらかいバターのようにスパッと斬り崩したのだ。
正直、呆然とするしかなかった。俺がやつあたりにと叩きつけたのは金属製のよくわからない台座のようなもので簡単に切り崩せるような代物ではなかったからだ。
切り口を見てみたところ、なめらかな一直線の面でとてもじゃないがこれが切り崩した断面だと到底は思えなかった。
これほどの技物ならば名前もあるのだろう。そう思った俺の脳裏には一つの言葉が浮かんだ。
――8月の剣
なぜそんな言葉が浮かんできたのかさっぱりだったがきっとこの剣の名前なのだろうと俺は納得しておくことにした。
俺の記憶にない忘れ物はきっともうないはずだ。この施設内はくまなく探したつもりだしな。
俺はこの施設の出口目指して歩き始めた。
そもそも、俺はなぜこんな場所で放置されていたのだろうか?非人道的な実験を行われていたと仮定しても今現在の俺の体は絶好調なのでそれはないと思われる。
まぁ、以前よりも体が軽く感じるのが妙だがきっと気のせいだろう。うん、気のせいだ。
他にもいろいろと考えていてふと思い出したが、鈴音は今どうしているのだろうか…
父さんと母さんが殺されて、俺は拉致。きっとものすごく辛く寂しい生活を送っていることだろう。
一刻も早くこの施設からでなくてはと俺は早足になった。
長く複雑に入れ込んだ道を進んでいく。そしてある程度歩いた時点で気がついた。
「ここってさっきも通ったような気がするんだが…」
念のため8月の剣で壁を薄く切りつけて印をつけ、先へと進んで視ることにした。そしてしばらく歩き続けているとまた見なれた道にでた。念のために壁を探してみると案の定印を発見した。どうやら同じところをグルグルと回り続けていたようだ。
「この年になって迷子になったのか俺は…」
俺は深くため息を吐いて落胆した。俺ってバカだけども方向音痴になるほどではなかったつもりだったんだが……さて、落ちこんでる場合じゃないので鬱な気分になるのはここまでにしてと、問題はどうやってこの施設から脱出するかだな。かといってまともに進んでも出口にたどりつく自信は今の俺にはミジンコの体組織ほどにもなかった。
ある程度どうするか考えるが解決策は見つからない。
「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!面倒だ。壁を切って前に進んでりゃそのうち外に出られるだろっ!!」
やけになった俺は壁を切り崩しては前へ前へと進んでいくことにした。
最初からこうしてればよかったな。うん。
何度も壁を切り崩して直進しつづけ、俺はようやっと施設の外へと出ることに成功した。久しぶりに吸った外の空気が妙においしく感じた。
あの施設内が妙にほこりっぽくてジメジメしていたのが原因だろうと俺は思ったんだがそれはすぐに勘違いだと気がついた。
施設の外はジャングルで囲まれていたからだ。どうやら俺は相当ヤバイとこにいるらしい。試しに施設周りをぐるりと一周してみたが人が手を加えた道のようなものはみえず、あるのは少し分かり辛いけもの道だけだ。
ただここにいてじっとしていても、誰かが来るわけではないのでとりあえずジャングルをまっすぐ進んでればいつか町なり集落なり見つかるだろうという軽い気持ちで奥へ奥へと進んでいくことにした。
まっすぐにまっすぐにと考えて進んでからはや数時間が経過した。
太陽の光は真上に出ていて虫暑苦しいジャングルの気候をさらに暑くするべく照らし続けていた。
そのころには俺は腹が減って腹が減って、本当にどうしようもないほどに腹が減っていた。
なにか食べれるものが自生していないかとあたりを見渡すが全くそれらしいものは見られない。むしろ全部が毒物に見えてとてもじゃないが食べたいという気持ちが湧かなかった。
そういえば俺ってどれだけの時間飲み食いしてなかったのだろうか?いや、止そう。食べ物関連のことを考えてたらさらに腹が減って虚しくなるだけだ。
俺は方を落とし、猫背になって前へと進んだ。しばらく無我夢中で進むとかなり早く進む何かとぶつかって倒れこんだ。
なんてスピードで突っ込んできやがるんだ。文句の一つでも言ってやらないと気がすまねぇ。
「いててて……ちょっとなによ!!前ぐらいちゃんと見て進みなさいよねっ!」
「うるせぇっ!それはこっちのセリフだ!!なんて早さでつっこんで…きや…がる?」
相手を見て俺は自分の目を疑った。俺にもとうとう知一のように動物に対しての変態じみた欲みたいなのが具現化してしまったのかと。
「な、なによ…私の顔に何かついてる?」
きっと俺は幻覚を見ているに違いない。念のために眼をこすって視界を正常に戻すように試みたがどうやら幻覚ではないらしい。頭の上で時たまにぴょこぴょこ動く耳。そしてそいつの背中のほうでにょろにょろと動く長い尻尾が俺の幻覚ではなく現実で映っていた。
「そ、その耳と尻尾は本物なのか?」
「当り前でしょ!!本物じゃなかったらなんだってのよ!!」
現実に映っていることがまだどうしても本物に見えなくて俺は相手の両耳を触ってみた。暖かくてとてもさわり心地がよくとてもじゃないが作り物ではないことがよくわかる。
「い、いつまで人の耳を触ってるのよこの変態っ!!」
「わ、悪い。どう見ても本物には見えなかったんで」
「私の耳が偽物だって言うのっ!」
「いや、そんなことはなかったぞ?!とてもさわり心地のいい可愛い耳でしたっ!!」
「にゃっ?!そ、そんなこと言ったってゆ、ゆるしてなんか…」
耳をほめて照れるってヤツはじめてみたな…いや、論点がかなりずれたな。
とにかく、あんな速度で突っ込んできた理由でも聞いてみますか。
「それで?なんであんな早さで走ってたんだ?」
「そうだった。早くここから逃げないと…あんたも早く!」
猫少女が急いで荷物の袋と何かの筒を拾い集めようと行動に移る。なんで逃げないといけないのか分からんが、とにかく逃げないといけないということだけは伝わった。
「わかった。んじゃ俺は先に逃げさせてもらうわ」
「ちょっと待ちなさいよ!!」
「あぁ?逃げろって言ったり待てって言ったり俺にどうして欲しいんだお前は」
「私のようないたいけな少女を置いて行くなんてどういう量見よっ!」
「いや、そんな大量の荷物引っ提げて普通に立ち上がった奴にいたいけな少女とか言われても…」
普通、4、5人がかりで背負えると思われる量を軽いバーベルを持つかのようにテキパキ動く奴に言われてもいたいけな少女って感じにはみえないよな。むしろ怪力系少女だよな。
「早くこっちにきて!あいつらが追ってきてるから」
「あいつら?例えばどんな奴だ」
「ワニ男と蛇男と鳥男。あと、河馬みたいなみたいなやつだったわ」
「それってあいつらのことか?」
そう言って俺は猫少女の後方を指さす。猫少女はまるでグリスの切れたぜんまいのようにガタガタと震えながら後ろを振り向く。振り向いて確認しきった途端に急いで俺の後ろのほうへと隠れた。
それにしても本当にいるもんだな。ワニ男と蛇男と鳥男と河馬男だったっけか?ワニ男はそのまんま顔がワニで皮膚がワニ特有の青さをもっていた。いや、正直、ワニ男っていうよりリザードマンって感じだな。
蛇男のほうは人と蛇が混合したような何とも言えない顔に鱗の付いた皮膚をしていた。鳥男は…まんま鳥の顔で体毛がものすごくもさもさしている。すごくさわり心地がよさそうだ。河馬男はまんま河馬みたいな顔で皮膚にはこれといった特徴はなかった。強いて言うならば黒人っぽい色をしているぐらいだ。そして全員の共通点が全員二足歩行で人のような体型をしていたことだ。尻のあたりから尻尾が生えていたが。
それにしても、全員人相が悪そうだなぁ。
「ようやく追いついたぞこの女!!覚悟するんだな」
「俺たちの食糧と水を持っていったことは万死に値する」
なん…だと?
食糧と水だ?
「さて、悪いがそこの男。その娘をこちらに渡してもらおうか」
猫少女のほうへと振り向くと瞳には涙がたまっており少しばかり表情が青ざめていた。あぁ、なるほどね。
「お前、食糧盗ったのか」
「そ、そうよ…」
「人のモン盗るのは悪ぃことだな。それはわかってんのか?」
「分かってるけど…分かってるけどもこうでもしなくちゃ…」
「ふーん」
俺にとっちゃどうでもいいことだが、まぁ困ってる人を見捨てるってのも後味悪いし仕方がねぇな。
「あー…腹減ったなぁ…」
「いきなり何言ってんのよあんた?」
「俺はいま腹が減って腹が減って仕方がなくてな。誰か飯おごってくれるやついねぇかなぁ…」
「……!っわかったわよ。後でちゃんと食べさせてあげる!!」
「商談成立だな」
俺は腰にぶら下げた8月の剣を手に持って構える。飯GETのついでにこいつらには俺のレベルUPに付き合ってもらうとするか。あいつを…白銀の腕の男を殺そうにも今の俺には無理だろう。あいつはかなり強かったからな。
「おめぇ…」
「悪いな。俺の進む道のための糧になってくれ」
その言葉と同時に戦闘は開始された。
誤字脱字表現方法の誤り、感想等ございましたらよろしくお願いします