第二章 明石焼きと友情
五月の連休が明けた頃、わたしたちはすっかり仲良しになっていた。
「ねえねえ、今日学校終わったらどこか行かない?」
昼休み、陽菜ちゃんが提案した。
「どこか……明石の名所とか?」
時子ちゃんが控えめに言う。
「あの、わたし、明石焼き食べてみたいな。本場の味、まだ食べたことなかったから」
「じゃあ決まり! 時子ちゃんも付き合ってよ」
「はい、私も行きます」
放課後、わたしたちは明石駅近くの、評判の明石焼きの店に向かった。魚の棚商店街を抜けて、老舗の暖簾をくぐる。
「いらっしゃい!」
威勢のいい声が迎えてくれた。
「明石焼き、三人前お願いします」
陽菜ちゃんが慣れた様子で注文する。
待っている間、店内を見回す。壁には明石海峡大橋や明石城跡の写真が飾られていた。この街の人たちは、自分たちの街を誇りに思っているんだなと感じた。
「お待たせ!」
熱々の明石焼きが運ばれてきた。ふわふわの生地から湯気が立ち上る。
「出汁につけて食べるんだよ」
陽菜ちゃんが教えてくれて、わたしは恐る恐る一つ箸でつまんで出汁につけた。口に入れると、ふわっとした食感と優しい味が広がる。
「美味しい……!」
「でしょ! これが本場の味よ」
陽菜ちゃんが得意げに言う。
「たこ焼きとはまた違った味でしょ」
時子ちゃんも目を細めて味わっている。
「明石焼きは玉子焼きって呼ぶのが正式なんだよね。地元の人はみんなそう呼ぶの」
「へえ、知らなかった」
この街のこと、まだまだ知らないことばかりだ。でも、こうして二人と一緒なら、少しずつこの街に馴染んでいけそうな気がした。
食べ終わって外に出ると、夕日が明石海峡を赤く染めていた。
「写真撮ろう!」
陽菜ちゃんが提案して、わたしたちは海岸沿いに移動した。明石海峡大橋を背景に、三人で自撮りをする。陽菜ちゃんが一番前で笑顔を作り、時子ちゃんは少し恥ずかしそうに微笑み、わたしは二人の間でカメラを持つ。
「はい、チーズ!」
カシャッとシャッターを切る。液晶画面を見ると、夕日に照らされたわたしたちの笑顔が映っていた。
「いい写真!」
「これ、プリントして三人で持っておこうよ」
時子ちゃんの提案に、みんなで頷いた。
その日の写真は、今でもわたしの宝物だ。三人の友情が始まった記念の一枚。




