エピローグ 十年後の約束
高校卒業後、最初のうちは連絡を取り合っていた。けれど、それぞれの生活が動き出すと、連絡の回数は少しずつ減っていった。
誰かが悪いわけではないのに、次は自分から送ろうと思うたび、少しずつ時間が空いた。
会おうと思えば会えたはずなのに、そうしなかった。
気づけば十年が過ぎていた。
わたしは写真家として、少しずつ名前が知られるようになっていた。主に風景写真を撮っていて、特に瀬戸内海の写真が評価されていた。
陽菜ちゃんは東京でスポーツインストラクターになって、ダンスが上手な先生として子どもたちに慕われていた。
時子ちゃんは小説家として、すでに二冊の本を出版していた。青春小説を書いていて、どこかわたしたちの思い出が反映されているような気がした。
「久しぶり!」
十年ぶりに、約束の場所で再会した。明石海峡大橋の下、あの日と同じ場所。
「変わったね」
「そっちこそ」
「みんな大人になったね」
でも、笑顔は変わらなかった。
「どう? 夢、叶えた?」
陽菜ちゃんが尋ねる。
「まあね。まだ途中だけど」
「うちも。スポーツインストラクターになったけど、まだまだ学ぶことばかり」
「私は、やっと作家と呼ばれるようになりました」
「すごいじゃん!」
近くのカフェで、積もる話をした。仕事のこと、恋愛のこと、家族のこと。十年分の時間を埋めるように。
「あの頃の写真、持ってきたんだ」
わたしはアルバムを開いた。入学式の日、花火大会、雪の日、卒業式。すべての写真が、鮮明に当時を思い起こさせた。
「懐かしい……」
「若かったね」
「今も若いよ」
笑い合って、昔の思い出話に花を咲かせた。
「あの約束、覚えてる?」
「十年後も友達でいるって」
「守れたね」
「これからも、ずっと」
また小指を絡める。十年経っても、わたしたちの友情は変わらなかった。
カフェを出て、海辺を歩いた。夕日が海を照らして、明石海峡大橋がオレンジ色に染まっていた。
「あの時と同じ景色」
「でも、私たちは変わった」
「成長したってことだね」
「次の十年も、頑張ろうね」
「うん」
「約束」
わたしはカメラを取り出して、セルフタイマーをセットした。三人で並んで、夕日をバックに写真を撮る。
カシャッ。
「完璧」
液晶画面を見ると、大人になったわたしたちの笑顔が映っていた。でも、目の輝きは、あの日のまま。
「また十年後にこの場所でね」
「絶対だよ」
「歩未のあかし、忘れない」
わたしたちの青春、わたしたちの友情、わたしたちの約束。すべてがこの街に刻まれている。
明石海峡大橋が、静かに見守っていた。
それが、わたしたちの「あゆみのあかし」だった。
【完】




