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あゆみのあかし  作者: 明石竜


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11/11

エピローグ 十年後の約束

 高校卒業後、最初のうちは連絡を取り合っていた。けれど、それぞれの生活が動き出すと、連絡の回数は少しずつ減っていった。

誰かが悪いわけではないのに、次は自分から送ろうと思うたび、少しずつ時間が空いた。

 会おうと思えば会えたはずなのに、そうしなかった。


 気づけば十年が過ぎていた。


 わたしは写真家として、少しずつ名前が知られるようになっていた。主に風景写真を撮っていて、特に瀬戸内海の写真が評価されていた。

 陽菜ちゃんは東京でスポーツインストラクターになって、ダンスが上手な先生として子どもたちに慕われていた。

 時子ちゃんは小説家として、すでに二冊の本を出版していた。青春小説を書いていて、どこかわたしたちの思い出が反映されているような気がした。


「久しぶり!」

十年ぶりに、約束の場所で再会した。明石海峡大橋の下、あの日と同じ場所。

「変わったね」

「そっちこそ」

「みんな大人になったね」

でも、笑顔は変わらなかった。

「どう? 夢、叶えた?」

 陽菜ちゃんが尋ねる。

「まあね。まだ途中だけど」

「うちも。スポーツインストラクターになったけど、まだまだ学ぶことばかり」

「私は、やっと作家と呼ばれるようになりました」

「すごいじゃん!」

近くのカフェで、積もる話をした。仕事のこと、恋愛のこと、家族のこと。十年分の時間を埋めるように。

「あの頃の写真、持ってきたんだ」

わたしはアルバムを開いた。入学式の日、花火大会、雪の日、卒業式。すべての写真が、鮮明に当時を思い起こさせた。


「懐かしい……」

「若かったね」

「今も若いよ」

笑い合って、昔の思い出話に花を咲かせた。

「あの約束、覚えてる?」

「十年後も友達でいるって」

「守れたね」

「これからも、ずっと」

また小指を絡める。十年経っても、わたしたちの友情は変わらなかった。


カフェを出て、海辺を歩いた。夕日が海を照らして、明石海峡大橋がオレンジ色に染まっていた。

「あの時と同じ景色」

「でも、私たちは変わった」

「成長したってことだね」

「次の十年も、頑張ろうね」

「うん」

「約束」

わたしはカメラを取り出して、セルフタイマーをセットした。三人で並んで、夕日をバックに写真を撮る。

カシャッ。

「完璧」

液晶画面を見ると、大人になったわたしたちの笑顔が映っていた。でも、目の輝きは、あの日のまま。

「また十年後にこの場所でね」

「絶対だよ」

「歩未のあかし、忘れない」

わたしたちの青春、わたしたちの友情、わたしたちの約束。すべてがこの街に刻まれている。


明石海峡大橋が、静かに見守っていた。

それが、わたしたちの「あゆみのあかし」だった。

【完】

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