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③風の誓い

 その夜。

 城の庭園で、二人は並んで立っていた。

 満月が、静かに水面を照らしている。


 「……信じられません。陛下が、あんなふうに笑うなんて」

 

 「父上も、昔は優しい人だったらしい。

  けれど王位を背負ううちに、笑わなくなった。

  君がその心を動かしたんだ」


 ミナは首を振る。


 「私は、ただ――香りを作っただけです」


 エリアスは微笑んだ。

 風が、香草の花を揺らす。


 「香りは、見えないけれど確かに届く。

  君の優しさも、きっとこの国に届くだろう」

 

 彼はポケットから、

 あの香草袋を取り出した。

 少し古びていたが、まだ香りは残っている。


 「これを、国の象徴にしたい。

  “リリィの香”として、城と町を結ぶ印に」


 ミナは驚いて目を見開いた。


 「それって……」

 

 「君の作る香りで、この国を包みたい。

  ――私の隣で、共に」


 胸の奥が熱くなった。

 涙があふれて、止まらなかった。


 風がふたりの間を通り抜け、

 花々がさわさわと鳴いた。


 「エリアス様……」


 「もう、二度と“様”はいらない」


  彼はそっと、ミナの手を握る。


 「私の名前を、呼んで」


 「……エリアス」


 その名を呼ぶ声が、

 夜空に溶けていった。

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