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煉獄に咲く、獣の誇りと魔の炎

「行くわよッ!」


 リュシアの瞳が燃え上がり、宙に並べた火球が一斉に閃光を放った。

 紅蓮の弾丸が尾を引き、一直線にラグナめがけて走る。

 同時に――砕牙のドルガが地を蹴った。巨体が岩盤を砕く勢いで前に出る。


「……ほう」


 心葬の仙翁ラグナは黒壇の杖を軽く一振り。

 操りの鎖に絡め取られた獣人兵を、盾のように前へ押し出した。


「嬢ちゃんがさっき教えてくれたぜ!」


 ドルガの口元に牙の笑みが浮かぶ。

 獣人の誇りを背に、喉奥から獣の力を解き放った。


「スキル――咆牙(ほうが)ッ!!」


 大地を揺らす咆哮。

 耳を劈く轟音が炸裂し、前に立ちはだかった獣人兵の身体が衝撃波で吹き飛んだ。

 その瞬間、彼らを絡めていた“操り”の糸がぷつりと千切れ、瞳に再び生気が宿る。


「ぐっ……!」


「……隊長!」


 解放された獣人兵たちが荒い呼吸で膝をつき、己の武器を握りしめ直す。


「すまねぇ……!」


 ドルガは短くそれだけを告げ、さらにラグナとの距離を詰める。

 だが、ラグナもただでは受けぬ。

 杖を突き出し、低く笑う。


「おお……なかなか面白い。だが、我が鈴を防げるか?」


 杖の先が地を打ち――チリン……


 冷たく響く鈴の音が、戦場のざわめきを呑み込む。

 再び操りの波が走り、ドルガの四肢に重苦しい鎖が絡みつこうとした。


「させるかよッ!」


 ドルガは歯を剥き、再び咆哮を解き放つ。


「――咆牙ッ!!」


 音と音がぶつかり合い、鈴の音は轟音にかき消された。

 操りの波は霧散し、ドルガの爪が振り下ろされる。


「おぉぉぉぉッ!!」


 鋭く伸びた爪が黒閃となり、ラグナの胸元を切り裂かんと迫る。


「ぬぅ……!」


 ラグナは杖を翻し、黒壇の堅牢で刃を受け流す。

 火花が散り、爪は石を抉るような軋みを上げた。

 次の瞬間、杖の先が再び地を突こうとする。


 ……チリン――。


「させないわよ!!」


 轟音と同時に、紅が弾けた。


 ――リュシアの火球だ。


 操られた獣人を盾にしようとしたラグナの背後、その隙間を縫うように潜り込んでいた炎が炸裂。

 爆炎の衝撃が、ラグナの身体を横に弾き飛ばす。


「ぐっ……!」


 黒衣の裾が焼け焦げ、結界の膜が弾けるように揺らめいた。


「今だァッ!」


 ドルガがさらに追撃。巨体が影を落とし、振り下ろす一撃は山をも断つ。

 だが、ラグナはフードの奥で笑った。


「……面白い。ならば――」


 黒壇の杖を強く地へ突き、鈴を鳴らす。

 その音は、もはや操りではない。


 ――音波。


 凶悪な衝撃の奔流となって放たれ、空気ごとドルガとリュシアを薙ぎ払う。


「ひょっひょっひょ……まさか、このわしが音葬衝波を使うことになるとはのう」


 漏れる笑声は、戦場の喧騒とは違う、不気味な弦を弾くような音色だった。

 黒壇の杖が微かに震え、余韻の波が地を這う。


「嬢ちゃん、無事か!」


 巨体で爆風を受け止めていたドルガが、肩越しに振り返る。

 背に焦げ跡が刻まれ、牙を食いしばってなお踏みとどまっていた。


「……ええ、なんとか」


 リュシアも肩を上下させ、呼吸を乱しながらも頷いた。

 額には汗が伝い、紫紺の瞳にはまだ戦意の光が揺れている。

 ふたりとも、すでに肩で息をしていた。

 息の熱が白く空へ散り、血の匂いに混じって戦場の鉄臭を濃くする。


「へっ……」


 ドルガは唇を吊り上げて笑った。

 巨体を支える脚が震えていようと、彼の瞳はまだ死んでいない。


「接近戦に持ち込めば、こっちに分がある……! さっきみてぇにな!」


「まかせない!」


 リュシアは火球を生み出した。

 掌の周囲に紅の灯が灯り、小さな太陽のようにいくつも揺れる。

 その熱気が髪を持ち上げ、戦場に焦げる匂いを広げる。

 ドルガが踏み込む。

 だがその瞬間、ラグナが杖を振り下ろした。


「ふふ……もう一度聞け。音葬衝波」


 轟、と見えぬ壁が襲う。空気の塊が打ち据えるように押し寄せ、ドルガの胸を揺さぶった。

 巨体が揺れる。だが獣人の隊長は脚を止めない。


「ぐっ……こ、こんなもん……!」


 牙を剥き、喉から再び雄叫びを迸らせた。


「――スキル、咆牙ッ!!」


 轟音と轟音が正面からぶつかる。

 目に見えぬ衝撃が火花のように弾け合い、地を揺らし、周囲の土を抉った。

 互いの音が相殺され、瞬間、戦場のざわめきが押し黙る。


 だが――


 チリン……


 鈴の澄んだ音が紛れ込んだ。

 ラグナが次の術を仕込んでいたのだ。


「……ッ!」


 その音を合図に、数人の獣人兵が目を白濁させ、ぎこちない動きでドルガへと殺到する。


「くそっ!」


 ドルガは咆哮をさらに重ねた。

 喉の奥が裂けるほどの音圧が走り、迫る部下たちを弾き飛ばす。

 だが、弾き飛ばした直後の空白をラグナは逃さない。

 リュシアの火球が放たれた。

 軌跡を描く赤光が一直線に走る。


「ちぃ……!」


 ラグナは黒壇の杖を突き出し、再び操りに囚われた獣人兵を前へと押し出す。


「また仲間を盾にッ!」


 リュシアの眉が吊り上がり、舌打ちが唇から零れる。

 だが彼女は手を緩めない。


「――操れる数にも限りはあるはずよ!」


 火球は軌道を変え、操られた獣人兵を避けるようにラグナを狙う。

 だが、ラグナも余裕を見せる。


「ほう……器用になものだのぉ」


 次々と獣人兵が盾として前に出される。

 リュシアは火球を操っては避けさせる。

 だが、数が多すぎた。


「くっ……!」


 火球と火球が軌道を乱され、互いにぶつかり合う。

 紅の弾が破裂し、爆風が戦場を覆った。

 爆炎の光が影を引き裂き、砂塵と煙が視界を埋め尽くす。

 その中で、ラグナの笑声だけが不気味に響いた。


「ひょっひょっひょ……まだまだのぅ。焦りは術を乱すぞ、じゃじゃ馬娘よ」


 リュシアは歯を食いしばった。


 「ひょっひょっひょ……無駄じゃよ。お主らがどれほど仲間を戻そうとも――ほれ、この通り」


 ラグナが杖を地に突く。黒壇の杖の鈴が澄んだ音をひとつ響かせた。

 その瞬間、操りから解放されたはずの獣人兵が、再び虚ろな目でリュシアとドルガの前に立ち塞がる。


「くっ……!」


 リュシアの眉間に皺が刻まれる。先ほど細やかに操った火球で魔力を大きく消耗していた。

 額に玉の汗が滲み、肩は呼吸のたび上下している。

 隣のドルガも同じだった。巨体に刻まれた傷は数知れず、咆牙を連発したせいで喉は枯れ、呼吸は荒い。

 それでもその眼光は死んでいない。だが確かに、ふたりの体力は限界に近づいていた。

 ラグナはそれを見抜いたように、にやりと口角を吊り上げる。


「ほれ見ろ。お主らも既に限界よ。それに……」


 黒い瞳が周囲をゆっくりと舐める。

 操られた獣人兵と黒の勇者の兵たちが、じりじりと前進を続けていた。

 戦況は刻一刻と押し潰されていく。


「ほれ、娘よ、その顔――実にいい。悔しさと情けなさで歪んでおる」


「……っ!」


 リュシアは唇を噛んだ。

 自分はまだ拙い。

 せっかくバニッシュやセレスティナに教えてもらったのに、戦場で役立てられない。

 無様な自分に腹が立ち、どうしようもなく情けなさが込み上げる。視線が地へ落ちる。

 そのとき――


「目を伏せるんじゃねぇ」


 荒い呼吸の合間に、ドルガが獣のように低く吼えた。

 血に濡れた牙を見せながら、ラグナではなくリュシアに向けて言葉を叩きつける。


「俺達獣人は諦めが悪い。たとえ最後の一人になっても、相手の喉笛に噛みついてでも倒す。それが俺達の意地だ。嬢ちゃん、お前にも――お前なりの意地ってもんがあるんだろうが!」


 真っ直ぐな瞳だった。血走ってはいても、そこに嘘は一片もない。

 その言葉に、リュシアの胸が揺さぶられる。

 彼女の脳裏に、バニッシュとセレスティナの言葉が蘇る。


 リュシアは、爆炎の残り香がまだ肌に刺さる東の戦場で、ふいに胸の奥が温かくなるのを感じた。思い出す。

 拠点のかまどの火が小さくはぜ、夜番の鈴が遠くでちりんと鳴っていた頃――あの夜のことを。


「はぁ? 魔法を教えてほしい?」


 拍子抜けしたように、バニッシュが眉を上げた。

 粗末な卓の上には地図と石の駒。

 鉄鍋では根菜のスープがくつくつと泡を立てている。

 火の明かりに照らされて、彼の頬に柔らかい影が揺れた。

 リュシアは、なぜだか耳まで熱くなっていた。

 あの彼女が、である。

 ぷい、と横を向きながら、しかし真正面から言葉をぶつける。


「そ、そうよ! 悪い?」


 少し離れた椅子に腰掛けていたセレスティナが長い睫毛の陰で、琥珀の瞳がやわらかく笑う。


「でも、リュシアはもう十分魔法を使えていると思いますけど」


「そうだな。今でも何度も助けられてる。急にどうしたんだ?」


 バニッシュの問いかけに、リュシアは言いよどんだ。

 言葉が喉につかえる。熱が胸から頬へ上がってきて、心臓の拍が目に見えるほど暴れている気がした。

 けれど、黙っているわけにはいかない。

 彼女は拳を握り、ゆっくり吐息を落とす。


「わ、私も……あんたたちみたいに、繊細に魔法を使いたいの」


 魔族にとって、魔素は呼吸であり、気分であり、心拍だった。

 怒れば燃え、喜べば灯り、悲しければ燻る。

 それで十分、そう信じていた。


「なるほどな」


 バニッシュが目元を和らげる。肩肘張った皮鎧の上から、焚き火の明かりが影を落とした。


「だが、魔族の魔法は魔素を使い、感情や環境で変わる。俺たちのように理論立てて使っているわけじゃないからなぁ」


「そう! それよ!」


 リュシアは身を乗り出した。椅子の足がぎしりと鳴る。


「その“理論”ってやつを教えてちょうだい!」


 セレスティナはそっと首をかしげる。


「教えるのはいいですけれど……大丈夫でしょうか?」


「だ、大丈夫! 任せなさい!」


 胸を張ってみせる。

 だが、次の瞬間から彼女の自信は、鮮やかに砕かれていくことになる。


 ――講義は、夜半まで続いた。


 セレスティナは白木の弓を膝にのせ、弦をはじきながら説明した。矢が空気を押す角度、羽根のわずかな捻れが作る渦、そしてその渦に“光”を通す手順。

 古い語で紋を開き、風の層を「面」として認識する練習。彼女の声はやわらかく、図も美しい。

 しかし、情報は雪崩のように降り注いだ。


「も、もうダメ! やっぱり私にはわかんない!」


 拠点での訓練。

 リュシアは頭を抱え、床に突っ伏すように叫んでいた。

 魔法理論を教わって数日。

 感覚で魔法を扱ってきた彼女にとって、理論の積み重ねはまるで見えない迷路だった。


「どうしましょう……彼女、本当に投げ出してしまいそうです」


 困ったようにセレスティナが呟く。

 対して、バニッシュは顎に手を当てて少し考え込んだ。

 そして、不意に問いを投げた。


「なあリュシア。お前の好きなものはなんだ?」


「はぁ? なによ急に……」


 赤面しながら顔を上げるリュシア。

 だがバニッシュは真剣な目で促す。


「いいから答えてみろ」


「う、うーん……そうねぇ……あっ! この前メイラが作ってくれたお菓子! はちみつに果物をすりおろしたやつを混ぜ込んで、ふわふわのパンにたっぷりかけて焼いたやつ! 焼けた香ばしい香りのはちみつと果物のソースがカリッとして……甘みが口いっぱいに広がってすっごく美味しかった!」


 思い出しただけで頬が緩むリュシア。

 バニッシュは笑って頷いた。


「……ああ、あれは確かにうまかった」


 しかしリュシアはすぐに我に返り、目を丸くする。


「ちょ、ちょっと! それが魔法と何の関係があるのよ!」


「もちろん関係あるさ」


 バニッシュの声は優しいが、芯があった。


「料理も魔法も根は同じだ。リュシア、お前はなぜメイラがあんなに美味しいお菓子を作れると思う?」


「そ、それは……料理が上手だから?」


「それもある。でも、それだけじゃない」


 バニッシュは穏やかな声で続ける。

「既存のレシピに、自分の経験や知識を織り交ぜるからだ。織り交ぜて、自分だけの味を作り出す。そしてなにより、メイラはいつも“誰かのために”作ってる。子供たちのため、俺たちのためにな」


「……誰かのために」


「そうだ。リュシア。お前にだって経験はある。お前は俺たちを知ろうとして、学ぼうとしてる。それは立派な経験だ。全部を理解しなくていい。少しでいいんだ。お前が分かることをお前自身の魔法に織り交ぜろ。そして、それを――何のために使うのか、思い出せ」


 その声は、確かに背を押すものだった。


「……バニッシュ、あんたもいつもそう思ってるの?」


「そうだな」


バニッシュは照れくさそうに頭をかき、空を見上げた。


「まあ、俺の場合は意地も混ざってるけどな」


 その笑顔を見て、リュシアの胸に熱が灯った。

 伏せていた目が、再び光を宿す。

 リュシアは顔を上げた。

 その瞳がまっすぐラグナを射抜く。


「……そうね。私にもあるわ。意地が」


 握った拳が震え、再び魔力の火花が灯る。

 それは拙さでも未熟さでもなく、彼女自身が織り交ぜた想いの炎。

 ドルガはそんなリュシアを横目に見て、へっと笑った。


「そうこなくちゃな、嬢ちゃん」


 「これが最後の攻撃だァァッ!」


 喉を裂くように吼えるドルガ。

 その声は戦場に轟き渡り、耳にした者すべての血を沸き立たせる。

 対するラグナは黒壇の杖を構え、口端を吊り上げて冷笑した。


「無駄じゃ、獣ごときがァ――音葬衝波!」


 地を叩き割るような衝撃が走る。

 鈴の音から放たれた音波は稲妻のように広がり、押し寄せるすべてを呑み込もうとした。


「舐めんなッ!」


 ドルガは咆哮とともに、己のスキルを解き放つ。


「咆牙――ッ!」


 咆哮と衝撃音がぶつかり合い、天地そのものが震えるような轟音が鳴り響いた。

 互いの音がぶつかり合い、衝撃波が相殺される。

 だが、隙はそこにあった。


「……嬢ちゃん!」


「分かってるわ!」


 リュシアが両腕を広げ、残された魔力をすべて込めた火球を生み出す。

 紅蓮の光が彼女の細い体を照らし、その瞳に力強い意志を宿す。

 ラグナはすぐさま獣人兵を盾に前へ押し出した。

 黒壇の杖を叩きつけ、操られた彼らが壁となって立ち塞がる。


「フン、そんなもの……ッ!」


 リュシアの脳裏に、バニッシュの言葉が甦る。


『魔法は力じゃない。――“何のために使うのか”、それを忘れるな』


 そしてセレスティナの、澄んだ声。


『狙うのは点ではなく“流れ”です。流れを見て、導くように』


 リュシアの胸に熱が灯る。


「私は……守るために!」


 火球が軌跡を描き、まるで意志を持つかのように獣人兵の隙間を縫っていく。

 盾にされようとした兵の背後で急速に進路を変え、ラグナめがけて迫った。


「なにィッ――!?」


 直撃。轟音と爆炎がラグナを包み込み、その身体を吹き飛ばした。

 煙の向こう、倒れた影は――ドルガの正面に落ちてきた。


「待ってたぜッ!」


 ドルガが地を蹴り、裂帛の気合とともに腕を振り上げる。

 鋭い爪が空を切り裂き、ラグナへ迫る。

 ラグナは杖を構え、必死に受け流す。しかし次の瞬間――

 背後で火球が炸裂!爆風がラグナの体勢を崩す。


「ぐうぅッ!」


 吹き飛んだ身体は、再びドルガの懐へ。


「こいつは嬢ちゃんと俺の連携攻撃だ!」


 ドルガの爪が容赦なく叩き込まれる。

 ラグナは黒壇の杖を必死に支えにするが――その時、


「――なめるなぁぁぁぁッ!」


 怒りと焦燥を滲ませたラグナが、黒壇の杖を地面に突き立てる。


「音葬衝波・絶界!!」


 これまでにない規模の音波が爆ぜ、爆炎と衝撃で辺り一帯が吹き飛ぶ。

 樹々はなぎ倒され、土塊は砕け、空気そのものが揺さぶられる。

 リュシアは衝撃に耐えきれず吹き飛ばされ、地を転がった。視界が揺れる。

 だが、前方には立ち続ける影――


 ドルガだった。


 全身血に塗れ、毛並みも乱れ、膝は震えている。

 それでも彼はその場に踏み止まり、ラグナを睨みつけていた。


「ば……馬鹿な……音葬衝波を……耐えおっただと……」


 ラグナの顔に、初めて狼狽が走った。

 ドルガは血の滲む牙を見せ、笑った。


「言ったろう……俺たち獣人は……あきらめが悪いんだよッ!」


 雄叫びとともに、渾身の一撃を振り下ろす。

 黒壇の杖が折れ、ラグナの胸元が裂け、鮮血が飛び散る。


「今だ――嬢ちゃんッ!!」


 ドルガが吼え、後方へと跳び退いた。

 リュシアは震える膝で立ち上がり、残された魔力の最後の一滴を燃やす。

 唇が吊り上がる。


「どっちかっていうと……こっちのほうが得意なのよ!」


 紅蓮の魔法陣が展開し、空気が灼熱に変わる。

 その光は、燃え尽きかけた彼女の全霊の証だった。


「――煉獄爆華陣インフェルノ・ブルーム!!」


 天を裂くような爆炎が生まれ、戦場を覆い尽くす。

 燃え盛る紅蓮の渦がラグナを包み、轟音が天地を揺るがす。

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