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#3/0 容疑者№2下日誠二

調査ついでにちゃっかり髪を切ったへっぽこ助手大得瑠美と、変人度合いだけが高まっていく探偵久我結士郎が繰り広げるSF劇 第三話!

1998-05-15-10:23


容疑者№2 下日 誠二

○年齢 24歳

○性別 男性

○職業 会社員

○被害者との関係 友人 大学のサークル仲間

○事件発生時の同行 酔った金和大輔を家まで連れて帰る

○殺害の動機 不明


 二人目の容疑者、下日誠二の会社に行く道を運転していると、久我先生が話しかけてきた。

「どうした? 下日誠二の元に行くのが嫌そうだな」

 久我先生は資料に目をやったまま問う。

「事務所から神木立夏の元に行く時よりも速度が遅いし、途中余計な道を通っている。隠し事は辞めろ。調査の妨げになる」

「ばれてましたか……」

「一見、事件に関係なさそうな事でも実際は関係していたなんて、よくある事だ。馬締幸子を助けたくば、なぜ嫌なのか教えてもらおう」

 久我先生に隠し事は出来ないな。このまま隠し続けても埒が明かなそうなので、話すことにした。

「……実は、誠二とは以前に僅かな間、お付き合いをしていたんです。その時はとっても嬉しくて、幸せの絶頂に向かっているな、って思っていたんです。だけど、だんだんと、この人とは相性が悪いなって感じてきて、一か月ちょっとで別れちゃったんです。でも完全に関係が断たれたって訳ではなくて、友達に戻ったって感じで飲み会にも誘ってもらって。だけど、一度付き合っていたって事もあり、やっぱり気まずいくて……」

「どうして相性が悪いと感じたんだ?」

 久我先生はズバズバと切り込む。いくら調査の為とはいえ、この人にはデリカシーというものがないのだろか。これはなんとかハラスメントとかに当たらないのだろうか。そもそも私と誠二の関係なんてどうでもいいだろう。

「その……なんていうか、誠二は自己中というか、束縛的というか、とにかく相性が悪かったんです! ……学生時代は優しかったのに」

「成程」

 それだけ言うと再び黙りこくってしまった。

 やっぱり誠二と会うのが気まずい。振ったのは私だし、友達に戻ったと言っても別れた後に会ったのは飲み会だけだ。それ以外は話すこともないし、連絡を取るということも無い。

 昨日、葬式以来、初めて連絡を取った。いや、その前に連絡が来た気がする。とにかく、連絡をすると誠二は嬉しそうな声で「いいよ」と言ってくれた。付き合っていた頃とは違う、学生時代の優し気な彼が戻っていた。誠二も忙しいだろうに、仕事の合間に休憩をもらってわざわざ会ってくれるらしい。

 そんな事を考えていると待ち合わせの場所についた。場所は誠二の職場からほど近い喫茶店だ。この喫茶店は誠二が予約してくれた。

 外観は事務所と争えるぐらいのおしゃれさだ。いや、喫茶店と争えるぐらいの事務所がおかしいのか。

 中に入り、誠二の名を伝えると、窓際の席に案内された。誠二の手元にはアイスコーヒーが置かれていた。

「お待たせ」

「久しぶり」

 誠二は仕事の合間に抜けて来たということもあり、ぴっしりとしたスーツ姿だ。誠二のスーツ姿は初めて見たが、違和感がすごい。学生時代の誠二はピアスをバチバチに開けて、チャラい見た目だった。舌にまで開けたピアスには少し引いた。だけど今は社会人ということもあってか、ピアスは外されている。

「その人は?」

 誠二は少し荒っぽく久我先生を見つめる。久我先生からは探偵の調査と言うことは隠してほしいと頼まれていたので、久我先生の事は伝えていなかった。久我先生曰く、口裏合わせされるのが一番面倒だから、だそうだ。

「はじめまして。久我探偵事務所の久我結士郎と申します。本日は馬締幸子さん殺人事件についてお話を伺いにきました」

「そうか、遠慮なく聞いてくれ、なんでも答える。ただし、この後仕事がある。なるべく早めに頼む」

 誠二は足を組むと、コーヒーをちびりと飲んだ。

 久我先生は私の横に、誠二は私の向かいに座る。

「ではまず初めに、事件当日の同行を教えてください」

 誠二は考え込む素振りを見せ、話始めた。

「……俺はあの日、18時頃まで会社にいて、その後飲み会に行った。そこの所は瑠美が話しただろう。瑠美が21時ぐらいに病院に呼び出されて、その後は他の皆と同じく22時まであの店にいた。そこは他の参加者や、店員に聞けば嘘じゃないとわかるだろう。解散した後に、瑠美の事が心配になって、一度電話をかけた。瑠美、覚えているよな?」

「そっそういえば……そんなこともあったような……」

 次の瞬間、横から凄まじい敵意を感じた。恐る恐る見てみると、久我先生が氷のように冷たい視線を送っていた。

「ひっ」

 小さな悲鳴が漏れる。言わなかったのは、ただ忘れていただけだもん。三か月前の事なんて、そこまで詳細に覚えていないって!

「おい」

 荒い声が店に響く。見ると誠二が目に角立てて久我先生を睨んでいた。

「瑠美が怖がっているじゃないか。あんた、瑠美の何なんだ」

「誠二……この人は……」

 ああ、そうだ。私はこの人の怒った時が怖くて怖くて、いつの間にか怒らせないように必死になっていたから別れたんだ。久我先生はただの事件を解決してもらうだけの関係だ。そう言おうとした直前、久我先生が言う。

「大得瑠美は、私の助手です。それ以上でもそれ以下でもありません。お互いに利用し合うそれだけの関係です」

「そうか……それは失礼した」

 その言葉に納得したのか、誠二はコーヒーを一口飲む。

 少しの沈黙の後、久我先生が口を開く。

「それで、電話をかけた後は?」

「……その後は、金和の奴が立てなくなるぐらい酔っ払っていたんで、送って行ったんだよ。あいつ、酔うと手に負えないからね。あの野郎やけに重かったから、金和の家に着いたのが23時前 、俺の家に着いたのが23時半かそこらだな。普段は30分もかからなかったのに1時間近くかかっちまった。その日は疲れてたんですぐに寝て、次の日起きたら幸子が死んだって、瑠美に連絡を貰った。そんな感じだ」

 誠二の家から考えると、誠二には犯行は不可能だな。この辺りは坂がある関係で、徒歩ではどうしても時間がかかってしまう。

「成程。では次に神木立夏さんと、金和大輔さんに馬締幸子さんを殺害する動機の心当たりがあれば教えてください」

「いいけど、この質問を答えたら帰ってもいいか? いつ上司から連絡来てもおかしくないんだ」

 時計を見ながら言う。

「いいでしょう」

「……立夏は、もしあいつに殺す理由があるとするなら、昭だな」

「昭とは?」

「おととしの夏ごろまで、立夏に昭っていう彼氏がいたんだ。だけど別の友達から昭が別の女と一緒に居る所を何度も見たって話が出てきて、結局昭は浮気していたんだ。それで

立夏は別れたんだが、浮気相手は誰だって話になり、幸子が疑われたんだ。そのせいで立夏はサークルをやめるだなんて言い出してな。だが結局誰が浮気相手かは最後まではっきりしなかった。昭ってやつ今では超有名企業に就職して、そこそこな金持ちになったって噂で、この前の飲み会でも立夏の奴『あのイケメンゲットしていたら今頃私、豪邸で毎日幸せに過ごしていたんだろうなぁ』ってぼやいてたんだ。まあ殺す理由があればそれだろうな。あいつ虫も殺さなそうな顔して、ヤバいぐらい根に持つタイプだし。幸子を殺したっておかしくねぇ」

「金和大輔さんは?」

「あいつはやっぱりあれだろ、ヤクザの口封じ」

「その話、詳しく聞かせていただけますか?」

「まあいいだろう」

 誠二は薄ら笑いを浮かべる。

「金和の奴、ギャンブルが好きでさ、それこそ借金するぐらい。それで前々から金遣いが荒くて、数年前に、とうとう闇金に手を出したって幸子が言っていたんだ。幸子が言うには怖そうな人たちと金和君が話をしていた。そんな話だ。それで金和の奴かなりビビってて、俺達に土下座までして誰にも言わないでくれって頼んできたんだよ。まあその話、本当かどうかわからないんだけどな」

「わかりました。これにて質問は終了します」

「それじゃあ、俺は戻るぞ」

「どうぞ。お代は私が払っておきます」

「そうか、ありがとな」

 久我先生は伝票を手に会計を済ませに行った。私達は二人残された。あれほど帰りたいと言っていた誠二が帰ろうとしない。何か嫌な予感がするな、と思った矢先、誠二が籾内してきた。

「瑠美、もしよければ今度会わないか? また……」

「ごめんなさい。今はそういう気持ちにはなれなくて……」

「そうか。それは仕方ないな」

 誠二は舌を出して「ちぇ」という。誠二の舌にちろりと光るものが見えた。

「何をしている。行くぞ」

 会計を済ませた久我先生が私を呼ぶ。

「今行きます」

 私は足早に店を去る。

まさか瑠美に元カレがいたとは……Σ(・□・;)

ちなみに大得瑠美の名前の元ネタはOL→おおえる→おおえるみって感じ

自分も彼氏彼女が欲しいって人は Σ(・□・;)オドロキって感想に書いてね!

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