#1/0 事件解決数0の迷探偵
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推理小説は初挑戦と言うこともあり、所々穴がありますが、暖かい目で見守ってください!
それではどうぞ!
1998-05-13-23:37
気が付くと、私は橋の手すりに座り、夜の街を眺めていた。朝から降り続ける雨によって手すりはびしょ濡れで滑りやすい。少しでもバランスを崩したら落ちてしまいそうだ。ふと橋の下を覗き込む。夜の街に照らされた川は、クリスマスの日のイルミネーションのようにキラキラ光っている。美しい見た目とは裏腹に、雨によっていつもよりも流れが激しくなっている。ここに落ちたら確実に死ぬだろう。死ねるならそれでいい。なぜなら私は死ぬために来たのだから。
「幸子……」
もうこの世にはいない親友の名を呟く。だけどその声は雨音にかき消される。親友の名を喋る事すら許されないのだろうか。
この三か月で、私は全てを立て続けに失った。
幸子とは同居するほどの仲だったのだが、ある日私が家に帰ると、何者かに殺されていた。これからも一緒に過ごしていくと約束した場所で、幸子は変わり果てた姿となっていた。幸子の苦悶に満ちた顔が今でも瞼の裏に浮かぶ。時々、彼女の死体を見た時の夢を見て飛び起きる。おかげで、今日まで満足に眠れたためしは無い。幸子は誰かに恨まれるような人間ではなかった。犯人は未だに捕まっていない。幸子の死から立ち直る時間もないまま、今度は母が死んだ。父もきょうだいも居なかった私の最後の肉親だった。数年前から患っていた病気によって苦しみぬいた末、母は死んだ。その時はまだ幸子の葬式すらも済んでいなかった。母の死は少し前から覚悟はしていたものの、幸子の死によって傷ついた私の心を完膚なきまでに壊すには十分すぎた。
それからというもの、私は仕事も手に着かなくなり、仕事をクビになった。幸子の他にも友人が数名いたが、事件の後からは疎遠になってしまい、一度も連絡を取っていない。
もう私には失うものはない。彼氏はもういないし、友達も、肉親も。他にあるとすれば、この、ぼろぼろにひび割れた命だけだ。最後に残された命を、今捨てようとしている。
私は手すりの上に立ち上がる。
なぜだろう。雨の寒さのせいだろうか。恐怖のせいだろうか。足が震える。失うものなんてないのに、何を躊躇っている。遺書も書いて、身の回りの整理もした。もうこの世界にやり残したことなんてない。
そのまま手すりの上で十分ほど悩んで、悩んで、悩んだ後、ようやくこの世界から別れる決心がついた。
「……さよなら」
小さく呟くと、私の身体は橋から飛び出し、身を躍らせる——「待って!」
背後から誰かに掴まれ、身を躍らそうとした私の身体は歩道に倒れ込んだ。
「……どうして」
私は手足を投げ出して仰向けになる。仰向けになったことで、冷たい雨が顔に打ち付ける。死ねなかった悔しさからか、それとも死ななかった安堵からか、涙が溢れた。まるで幼い子どものように嗚咽を漏らす。
「どうして、死なせてくれないんですか」
私を助け出した偽善者に問う。
「……まだ生きていたそうな顔をしていたからです」
偽善者は悲しそうな笑顔をする。
「私は卯月と申します。あなたのお名前は?」
卯月と名乗った男は、手を差し伸べる。その手を掴み、私は起き上がる。背中が雨でびしょびしょだ。寒さのせいか、覆わずくしゃみをする。
「私は、大得瑠美といいます」
「瑠美さん、こんな所では風邪をひいてしまいます。どこか雨をしのげる場所に移動しましょう」
「そうですね、そうさせていただきます……」
なんだかもう、死ぬ気にはなれなかった。それに、忘れていた寒さがやってきて、早く暖かい所に行きたい。人の温かさを感じたい。
「近くに私の車があります。ひとまずそこに行きましょう」
卯月さんに連れられ、近くに止めてあった車に入る。
車内のライトに照らされ、卯月さんの顔が見える。さっきまでは夜の暗さで顔が見えなかった。近くで見てみると、なかなかのイケメンだった。だけどなんだか女を殴っていそうな顔をしてる。怪しげで、危険な香りだ。
「いやぁ、寒いですね。いったい、どれくらいあそこにいたのですか?」
卯月さんは「はい」と、どこからか缶コーヒーを取り出し、渡してくれた。暖かい缶に触れると、無くなりかけていた指の感覚がじんわりと戻ってくる。
「ありがとうございます……」
震える手でプルタブを捻ると、子気味いい音と共に缶コーヒーが開く。暖かいものを欲していた私の身体はすぐさま缶コーヒーを呷る。コーヒーは微糖だった。私は甘い方が好きだが、そんな事はどうでもよかった。
「……ぷはぁ」
「……すごいね、一気に飲んじゃった。相当長い間、あそこにいたんだね」
卯月さんはにっこり笑う。
「買ってきてよかったよ」
そう言いながら自分の分の缶コーヒーを開ける。卯月さんのコーヒーはブラックだった。
「それで、どうして死のうと思ったの?」
笑みを一切崩さず、口調も優し気だったが、目だけは氷のように冷たかった。こんな顔をする人なんて初めて見た。卯月さんからは一般人のような雰囲気を感じられず、どこか裏側の仕事、裏社会の人間のような雰囲気が感じられる。
「……その……一番の友達が……殺されて……」
私はこの三か月で起きた事を包み隠さず話した。たとえ卯月さんが裏社会の人間だったとしても、この状況をどうにかしてくれるといった確信があった。
話し終えると、卯月さんは暫く考え込むようなそぶりを見せる。コーヒーを全て飲み干した頃、ようやく口を開いた。
「……俺は一種の情報屋のような仕事をしているんだ。その様子じゃ、気が付いているようだが、所謂裏社会と呼ばれる所の情報を専門としている。もちろん、君の言ったような殺人事件の情報もいくつか知っている」
「それじゃあ……」
「悪いが、君の親友が殺された事件についての情報は無い。表の出来事には首を突っ込みたくは無くてね。ただ、これだけは言える。裏の人間……例えばヤクザ、異常者の類が犯人では無いと。もしそいつらが犯人なら、俺が見逃すはずが無いからね」
犯人が分かると思ったのに……。警察はおろか、この人ですら知りえない犯人とは一体どのような人物なのだろうか。
「ただ」
卯月さんは言う。
「君のような、全てを失った人の為の希望がこの街にはある」
「希望……?」
「明日になったらこの場所を訪ねてみるといい。きっと君と親友を助けてくれる」
そう言うと懐から名刺のようなものを取り出し、私の手のひらに置く。
そこには住所と共にこんな事が書かれていた。
『失った人を助けたい。そんな人の為の最後の希望、久我探偵事務所』
1998-05-14-11:36
次の日の朝、私は名刺に書いてあった住所に向かっていた。仕事はクビになっていたので、時間だけはたっぷりとあった。まともに外に出たのは数か月ぶりだった。おかげで身だしなみを整えるのに随分時間を取ってしまった。特に肩甲骨の辺りまで伸びきっていた髪を整えるのに苦労した。
久我探偵事務所について少しでも調べようと試みたが、事務所に関する情報は一切出てこなかった。それどころか存在するかも定かでは無かった。卯月さんは嘘を言っていたのだろうか。女を殴っていそうな顔をしてたし、女をからかうのが好きなのだろうか。まあ嘘だったとしても構わない。幸子の為に、出来る事は何でもしたい。たとえそれが何の役に立たなかったとしても。
「ここか」
大通りから少し離れた、ビルで囲まれた路地に事務所があった。奥まった場所にあったので探すのに随分時間がかかってしまった。そこには十九世紀のロンドンからそのまま切り取って来たような、おしゃれな事務所が佇んでいた。どうやら一軒家を改造したようで、その名残がそこかしこに見受けられる。探偵事務所というよりはおしゃれな喫茶店といった方が近い。コーヒーでも出してもらえそうだ。
なんだか事務所に相談というより、友達の家に遊びに行くといった感じがした。正面の扉からそのまま入っていいのかと不安になったが、近くにインターホンがあったので押してみる。
「すみません、卯月さんという方に紹介されて調査を依頼したいのですが……」
少し時間がたって、声が聞こえた。
『はい。少しお待ちください』
落ち着いた男性の声だった。若々しくもあり、老人の様な落ち着いた声だ。
中で少し慌ただしく音が鳴ったかと思うと、玄関の扉が開いた。
「お待たせしました。久我探偵事務所へようこそ。所長の久我結士郎です」
出てきたのは二十代後半といった若い男性だった。癖のついた黒髪に、シルバーの丸眼鏡。柔らかで優し気な口元とは裏腹に、目元は鋭く、真実を見通す目をしていた。黒のベストに白のワイシャツと臙脂色のネクタイに白の手袋、黒のスラックスと、顔以外肌を露出させない、ある種の不気味さを感じる反面、上品な印象を受けた。今までにいくつもの難事件を解決してきた、そういった雰囲気がある。第一印象はそんな感じだった。
「どうも。私は大得瑠美です。あの……」
「話は中で聞きます。お入りください」
言われるがままに中に入る。
事務所の中は、アンティーク風の一軒家といったような感じだった。おしゃれな花におしゃれな傘立て、壁には黒のソフト帽といったものがあった。だがそこかしこに生活感のあるものが散らばっていた。一番驚いたのは靴を脱ぐときに、子ども用の長靴が置いてあるのが見えた事だ。まさか結婚して、子どもまでいるのか。そんな印象は全く見受けられなかった。
応接間に案内され、二人掛けのソファに腰かける。革張りのソファは優しく私の体重を受け入れる。応接間にもこういったアンティークな家具で埋め尽くされていた。
久我さんは「少しお待ちください」と言って部屋を出て行ってしまった。待っている間、部屋を眺めていた。おしゃれなものが多いな、そう思いながら見渡していると、ひときわ目を引く物があった。それは『事件解決数0』と書かれた小さな黒板がだった。
「お待たせしました」
どういう意味だろうと考える間も無く、久我さんが戻ってきた。手にトレイを持っていて中身を私の前に次々と並べていく。美しいカップに注がれたコーヒ―に、角砂糖の詰まったシュガーポッドにミルクピッチャーまで出てきて、とうとう喫茶店のようになってきた。
「サービスです」
「どうも」
私は礼を言い、角砂糖を二つ、ミルクを二周ほど入れかき混ぜる。やっぱり甘い方が好きだ。一口飲んでみると、甘さとともにコーヒーの優しい渋みで心が落ち着いた。
「……現在は助手が都合により事務所を空けてまして、本来ならば休業中なのですが、卯月さんの紹介とならば特別です。……ついでながら入り口に休業中と書いてあったのですが」
幸子の事で頭がいっぱいで気が付かなかった。耳が火照っていくのが感じる。
というか、やっぱり卯月さんと久我さんは知り合いだったのか。なんだか二人は似たような雰囲気だ。卯月さんと同じ、どちらかと言えば裏側の社会の雰囲気。そう考えれば事務所について調べても出てこない事の説明がつく。思わず身構えてしまう。
「これから依頼について、いくつか質問をさせていただきます。答えたくない質問には答えなくても結構です。まず、簡単な自己紹介をお願いします」
「はい。名前は大得瑠美。年齢は23。職業は都内で事務をしています。今はクビになりましたが……。それで趣味は——」
「結構です。それでは、本日はどのようなご用件でこちらに」
久我さんは指を組んで問いかける。
「えっと、三か月前に私の友達の馬締幸子が誰かに殺されて、その犯人を見つけてほしいのです」
「警察には?」
「もちろん相談しました。ですが、未だに何の情報も無くて……」
「この街の警察は揃いもそろって無能ですからね。当然です」
久我さんは冷たく笑う。
「第一発見者は瑠美さんですね」
「はっはい」
そんな事、一言も言っていないのにどうしてわかったのだろう。その疑問を口にする前に久我さんは言う。
「深く刻まれた目元の隈。そうとう長い間眠れていなかったのでしょう。夜な夜な幸子さんの最後の姿を夢に見て、眠れない夜を過ごしてらっしゃる。そういう顔です」
「……!」
図星だった。外見からそこまでわかるなんて。やっぱりこの人は信用できる。……というか、深く刻まれた、とか言われるぐらいの隈を付けたまま出歩いていたのか。急に恥ずかしくなってきた。帰りにメイク用品でも買おう。
「それで、幸子さんを発見した日の状況を出来るだけ詳しくお願いします」
「はい。その日はいつも通り仕事に……あっ、私と幸子は同じ会社で、同じ家に住んでいるんです。高校時代からとても仲が良くて、同じ大学に入ったことを機に所謂シェアハウスみたいな事を始めました。駅から30分もかからなくて、それに加えコンビニとかも沢山あって結構便利なんです。……話がそれましたね。すみません。続けます。その日も幸子と一緒に会社に向かいました。会社はいつも通り、普通に仕事をしました。特にミスも無くて平常運転でした。仕事が終わった後、大学時代のサークルの友達と飲み会をしたんです。駅前の焼き鳥が有名なあそこの店で。20時から、22時ぐらいまで。人数は私を含めて五人でしたかね。大学を卒業してからもたまに酒を飲む仲で、月一ぐらいで会っていました。事件が起こってからは一度も会えていませんが……。それで、飲み会の途中で病院から電話がかかってきて、母が危篤だと。事件の半年ほど前から病気で入院していて、とうとう峠だと。母は事件の二日後に亡くなりました。……それで、21時ぐらいに飲み会を出て、隣町の病院に駆けつけたんです。お医者さんから母の病状について説明を受け、その日は家に帰る事にしたんです。ひとまず今夜は大丈夫そうということで。そして、日付が変わった頃、ようやく家に帰れて、ドアを開けると、幸子死んでいたんです」
「なるほど。ありがとうございます。お辛いでしょうが、幸子さんと家の中の状況もお願いします」
「家の中は荒された形跡はなく何か盗まれたわけでもありませんでした。リビングの近くで幸子は亡くなっていたのですが、その辺りの家具が倒れていたりしたぐらいで。それで、幸子はどうやら何か紐のようなもので首を絞められたみたいで、警察の方もそう言っていました。……服にも特に乱暴された様子は無くて、ただ首を絞められた跡だけが真っ赤に染まって目立っていました」
「わかりました」
久我さんは素早くペンを動かし、メモを取っていた。話すのに夢中で気がつかなかった。結構早口で喋ってしまったが、大丈夫だろうか。
「あの……メモ大丈夫ですか? その……早口で喋っていたもので……」
「いえいえ、お構いなく。仕事柄こういうのには馴れているので。それでは、次の質問です。幸子さんの人物像を分かる範囲でいいのでお願いします」
「はい。幸子は私と同い年で、同じ大学。先ほども言った通り、職業は事務の仕事をしていました。真面目な性格で、どちらかというとおとなしい性格でしたが、人当たりは良くて誰からも好かれるって感じでした。といっても私と同じで、どちらかというと人見知りなほうで友達はそれほど多い訳では無く、サークルの仲間とほか数人だけが友達といえる関係でした。それに、結婚とか彼氏とかそういうことはほとんど聞いたことが無くて、大学時代に一度だけ聞いたぐらいでした。ストーカーとか変質者に狙われるとかそういう事も聞いたことも無くて、本当にどうして殺されたのかわかりません」
「なるほど。それでは次が最後の質問です。質問の返答によっては依頼をお断りするかもしれません」
「はい……」
思わず唾を飲み込む。ここで断られたら他に誰を頼ればいいのか全く分からない。慎重に答えなければ。
久我さんは組んでいた指を解くと、角砂糖を三個ばかし入れて言う。
「何のためにうちに依頼をしに来たのですか? 犯人を見つけて復讐をする為ですか? 罪を償わせたいのですか? それとも犯人を知って、幸子さんの元に行くつもりですか?」
「私は……」
私は何のためにここに来たのだろうか。もちろん、犯人は見つけたい。あの日何が起きたか真実を知りたい。だけど、それだけなら警察に任せていればよかった。この人に相談しに来たのは卯月さんに紹介されたからだ。だけどそれだけは無い。
「幸子を救ってあげたいから……です」
卯月さんはきっと、私の中の幸子を救いたいという気持ちを見透かしてここを紹介したんだ。久我さんなら幸子を救えると信じて、私を紹介したんだ。既に幸子は死んでいる。だけど、そんな変わりようのない事実が立ちはだかっても、私は幸子を助けたい。あの日の真実を知ることが、幸子の救いになると信じて。
久我さんは私の返答を聞くと、コーヒーを一口、二口と飲んだ。どうだろう、私の返答は間違っていなかっただろうか。やがてコーヒーを置いて言った。
「わかりました。今回の依頼を受けましょう。必ずや、幸子さんを救って差し上げましょう」
「えっ‼ いいんですか! ありがとうございます!」
「それと、犯人の目星がついてきました。私の推理によると、犯人は飲み会の参加者です」
久我さんはメモ帳をばたんと閉じる。
「どうして」
「具体的な犯人像まではわかりませんが、今わかるのはそれだけです。あとは詳しい調査をしなければわかりません。まず、ストーカーや強盗目的の犯行の線ですがこちらはほぼ無いと考えていいでしょう。この街で不審者の情報があれば、私や卯月に情報が入ってくるはずですし、仮にそういう連中がいたとしても、部屋の状況から考えるに、幸子さんが犯人をリビングの中まで案内したということは、犯人が顔見知りであることは間違いないでしょう。時間帯から見ても、よく見知った人物でしょう。となると、犯人は幸子さんをある程度知っている人物となります。幸子さんと親しければ瑠美さんと同居していることもすぐにわかるはずです。となると、瑠美さんがいない間に事件が起こった理由がある程度わかります。犯人は幸子さんが死んでプラスに、瑠美さんが死ぬ、瑠美さんに犯行の現場を見られることが自分にとってマイナスとなる人物です。それに、どれほど屈強な人物でも一度に二人も殺すなんて不可能です。素人ではね。だいたい片方を殺している間に片方が逃げますからね。二人も殺す気があればもっと残虐で、確実性の高い殺害方法を取ることが多いです。まあとにかく犯人の動機は恐らく人間関係でしょう。そう考えると必然的に犯人が幸子さんと親しい人物。また、事件当日、瑠美さんが家に帰らないと知っていた人物であることもわかります。それを知っていたのは飲み会の参加者だけです」
「なる……ほど……」
こんな短時間でここまで推理するとは。だけど、先ほど見た『事件解決数0』とはどういう意味なのだろうか。これほどの推理が出来るのに解決数が0とは全く意味が分からない。
「容疑者に聞きこみをして、動機がはっきりすれば犯人が分かるのですが、先ほども申した通り、現在助手が事務所を開けていましてね。帰ってくるまで調査が出来ません。申し訳ありませんが、調査は来週からとなります」
そんな。ここまでわかったのに。あと一歩で幸子を殺した相手が分かるというのに。もどかしい。この週末、どう過ごせばいいのだろう。
諦めかけたその時、ある考えが頭に浮かんだ。
「そっそれなら、私が助手として働きます。探偵としての経験はありませんが、犯人が飲み会のメンバーであるというならば私が一緒に行くことでスムーズに進むはずです。全員の住所や連絡先、職場も知っているので!」
言い終えると、途端に恥ずかしさが襲い掛かって来た。短時間でここまで推理する久我さんの助手に私が務まるはずが無い。だけど撤回する気にはならなかった。ここで久我さんと行動しなければ、永遠に幸子は救えない。そんな気がした。
「そうですか。わかりました。本来ならばこんな事は絶対にお願いしないのですが、容疑者の情報を全員分持っているならば調査の手間が省けます。私からもお願いします」
「いいのですか!」
「ただし」
久我さんの目つきが変わる。
「これからはお前さんを依頼人ではなく、助手として扱う。探偵ごっこをしに行くのではない。それを頭に入れろ」
「はい」
「それでは調査は明日から始めます。この後、聞き込みでは得られない証拠を集めに行くので、本日はもうお帰りください。それと、飲み会の参加者に聞き込みに行くと連絡を取っておいてください」
みんなも探偵に憧れた事あるよね?
つづきは多分1時間後に上がります!(たぶん)
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