十九
十九
毒の溢れた紫色の顔をして、黄色い歯を剥き出し、唇を震わせながら三人を見送った忠雄は、蛇が鎌首を擡げるように背中をうねらせながら突っ立ったが、
「馬鹿者めら」
杖をからりと落とすと、忠雄はぐるりと帯を解いた。羽織ごと脱いで枝に引っかけると、ほとんど真っ裸になって岩肌をすべりながら、すぐ前の細い流れに入っていった。
ばちゃばちゃ、ばちゃばちゃと、寺の鐘が幽かに次の時の音を響かせるまで、いったいなにをしていたのか。
「はてな、なんじゃい」
この近くにある絵葉書屋の小店から、亭主が提灯をつけて、寝ぼけ眼をこすりながら見回りに出て来た。
ばちゃばちゃ、ばちゃばちゃ……。
「えらく水が騒がしい」
すると、黄色い獺かと驚く間もなく、越中ふんどし一つでばちゃばちゃばちゃばちゃと、水のなかを這いまわる姿が見える。
「これはなんや」
と忠雄は言うと、死者が燈明をねだるように手を差し出した。その手のひらに乗せたものに、提灯をかざした亭主は、
「花びらやないかい」
あらためて、じっと見つめると、
「わあっ」
と叫び声を上げた。……
(了)




